その頃、聖騎士団では…
「これでは、金は払えんな」
ガタン!と立ち上がる音がするが、男は一向に気にも止めない。
苦労して手に入れたのに、金にならないとは…。
「では、どうせよと仰せか?」
感情を抑えて、一言聞くと。
「この様な状態を解く方法がこの世にはある。そしてそれについて書かれた本も存在するのだ。
ま、この『雪星の雫』についてもあの本がなければ知る事もなかったのだから」
あの本…やはりコイツが持っているのか。
欲しい…。
だが、今は信頼を得る方が先か。
「ヒントは頂けるのでしょうか?」
醜く太った男は、堪えきれないように嘲笑った。
「ふん。お前らの無能さはいかがなものかと思うわな。これが、裏の世界で恐れられてきた『最果ての一味』なのだとしたら、非常に残念だな。
だが、いいだろう。目的の為にヒントをくれたやろう。
『大森林』のベラだ。あやつが何処かに隠れ持つ書物の中にあるはず。
とにかく、『雪星の雫』がこの様な姿になった原因を探せ!」
軽く頭を下げてその場を出た。
欲しい情報は手に入れたのだから。
『大森林』のベラか。
いつも立ちはだかる壁だな。
しかし。
『雪星の雫』は、何故あの様になったのか。
盗み方に問題があったのだろうか…。
水晶に囲まれて、触れる事の出来ない『雪星の雫』の姿を思い出していた。
そして、そのまま闇の中へと消えていった。
ー聖騎士団本部ー
「アレロアから便りが届いた。
やはり、ルスタ国は靄鬼にやられた様だな。我々も出動すべきだが、幸いにして雪菜殿の助力が得られたと言う。
我々は、目下の課題『雪星の雫』の調査をせねばなるまい」
マティの言葉に一同は頷いた。
状況は日に日に悪化していた。
既に、水の枯れ始めた川や泉も多い。
このまま行けば、いずれ人的被害も出るだろう。
そうなる前になんとか手を打たねば。
「ひとつ提案があります。
我々もルスタ国の作戦に協力して、その後雪菜殿のお知恵を拝借するのは?
彼女ならこの状況を打破する知恵をお持ちかもしれません」
珍しくマトモな言葉遣いに、一同から驚きの声が上がる。
「とにかく、今のレジーの提案について意見はあるか?」
その後、様々な意見が出るもやはり雪菜殿への助力を願い出る事になった。
「俺とレジーは『雪星の雫』の捜索にあたる。イーサンはバーラド村へ行きアレロア達と協力して事に当たってくれ!」
レジーからは、雪菜の方へ行きたいとブーブー文句が出たがそのまま。影の中へ消えた。
聖騎士団の中でも、隠密部隊を率いるレジーは特殊な魔法を使う事でも有名なのだ。
一方バーラド村へ向かうイーサンに、マティからあるものが渡された。
「コレを使ってくれと、雪菜殿へ」
驚愕の表情のイーサンは、マティの真剣な表情見て何も言わずに頷いた。
『葉っぱ』にしか見えないこの一枚には、様々な自然界の力が滲んでいた。
秘宝『緑葉の光』と言われるモノ。
コレを使って、雪菜殿を『大森林』から解放するつもりなのだと理解した。
マティの決意の表れを旨にイーサンは一路バーラド村へ急いだ。




