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森に囲まれた!  作者: ちかず
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反乱のその後で…。

最終奥義を持って鉄槌を下す。


決意を秘めても、脇腹から流れる血は力を弱める。腹の底から今一度、力を出そうと思い出していた。


デルタライト王の傷だらけの姿を。

彼を毒で弱らせてから、襲う卑怯極まりない輩を。


扉の向こうは、既に片付けた。

生まれつきの溢れる魔力も、こう言う時には役立つ。



貧民街に生まれ、怪物と罵られ親からも見放された俺がもし。

もしも、彼と出会わなければ。


あの時の彼は、まだ自分がデルタライト家の血を引く者だと知らなかったのだ。

だから。

貧しい養父母の為に、幼い頃から働いていたのだ。


まだ、幼い自分が力の加減も分からず自分を虐める者達に魔力を使おうとする寸前に、彼は現れた。そして、己の魔力をぶつけてソレを受け止めたのだ。


ショックだった。

たったひとつのヨスガが消えた瞬間だったからだ。

仲間もなく、身体も小さく力もない自分の唯一の力。魔力…。


だが、彼は笑ったのだ。

「危ないところだったな。お前、人殺しになるところだったんだぞ!」と。



それからだ。


彼は色々な事を教えてくれた。


加減の分からない俺が初めて知る力の本質。

膨大な魔力の使い方。

そして。

人は仲間が必要だと言う事。


一人は寂しいと言う事…。


あれは、彼が15歳になる年だった。

彼の養父母が、彼の前に跪いて言ったのだ。


「貴方様は、王になるべきお方。

デルタライト家の唯一の生き残りなのです」


それからは、あっという間だったと後から聞いた。

彼の反抗などものともせずに、城の人々は彼を連れ去った。


数ヶ月後、彼を見たのは…


『王の就任パレード』だった。


久しぶりのデルタライト家の王に民衆は興奮していたが、俺は生まれて初めて号泣した。

片割れを失ったのだ。永遠に…な。



だが。

彼は、努力していた。

自分の友人を王宮に招く為に。


そして、数年後彼が賢王と呼ばれる頃に俺の前に一台の馬車が止まった。


それから。

ずっと戦友だった。


彼を失いたくなくて、何度もぶつかった。

厳罰を望んで。


精霊の加護の力を、人殺しに使った『ザワゥト家のガランド殿』の厳罰を…。


彼は、唯一次代の王を名乗れる血筋だったからだ。母方の『グース家』は所謂公爵家。

何代も遡れば、様々な事血筋を持つ。


彼の色恋沙汰からの人殺し。

減刑を望む声に、彼は屈したのだ。


いや。

今思えば、恐らく脅しがあっただろう。

それでも、それから俺との仲は崩れていった。


少しづつ遠ざけられる日々。



事件は、そんな時に起こったのだ。


犯人は俺だと?!

彼は、毒を盛られ倒れたのだ。


俺を逮捕に来た第一騎士団(貴族のボンクラ集団)に抵抗していたら、彼が大人しく応じるように言ったのだ。


これには、さすがの俺も堪えた。

だから、うっかり彼の真意を読み間違えたのだ。


巻き込まない為の…。

そしてその隙を、敵は突いた。


血だらけで戦う彼の事を、妖精から聞いた俺は焦って駆けつけて更に驚いた。

第一騎士団に続き、第三騎士団も敵に回っていたのだ。

状況は、最悪だった。


囲まれた彼を転移した瞬間の顔。

最後のセリフを(最高の演技を)信じてくれただろうか。


辿り着くまでに、脇腹をやられた俺がした覚悟が伝わらないように祈る。


敵に囲まれたその時。


思いがけない味方の登場だ。

二人組の仮面の男たち。

仮面の男達は敵を退けると、あっという間に俺を城外まで連れ出たのだ。

逃げ切れるとは…信じられない。



「ベレット殿。

貴殿は、唯一の王の友。


この先、この国は乱れます。

獅子身中の虫の退治はお任せ下さい。

全てを平定した後、我々で王をお迎えに参ります。

それまで、どうぞ王を頼みます。

どうぞご無事で」


そう言い残し走り去る二人組。


二人の強さ。

名乗られなくても、分かる。


第二騎士団の団長クライス。

警護団の団長のバズール。

(警護団は、庶民による軍隊だ。

実質は、ココがこの国の要の軍隊になる…王宮に住む魔物たちだけが、そう思ってないが…)


彼らでなくば、あれだけの敵を相手にして俺を逃すなんて芸当は出来まい。


脇腹をやらている俺は、そのまま貧民街へ向かう。

傷を治す力は残ってない。


せっかく助けてくれた二人には、申し訳ないが恐らくここまで。

そう思って、ドアに寄りかかっていると。



「血生臭い匂いをさせたまま、ウロウロするなよ。

商売の邪魔だ。

そら、入んな。」


髭面をだった。

だが。

そこまでで、気を失ったのだ。


そのドアに寄りかからねば。

二人が助けてくれなければ。

この身に、妖精の加護がなければ。


恐らくココにはいまい。



『大森林』

その入り口の村『バーラド村』


やっとだ。

やっと、我が君の元へ…。



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