『精霊樹』への一本道?!
細い一本道を進むのは、私とサイラス。ギャビンさん、ブルーノ(もちろん、ピテレ付き)ゲルガーの五人になったわ。
リカルドは、図書館の虫で篭り切り。
アーノルドは、私の畑のお世話係。
そして。
ジェラルド。
あの後、いつの間にか消えてたのよ。
ブルーノ曰く「大事な場面では、出てくるよ!」って。
とにかく。
一本道でも、何でも精霊と対面しないとね。
小鳥も、いつの間にか消えてたしね。
真っ直ぐな道は、何処にも隙間ない森の壁に少し息苦しくなるくらいで。
こんなの、。
森には、かえって毒なんじゃ。
そんな風に考えていたら。
「おい、チビ助。
この先が、行き止まりになる。
ピテレがそう言ってるぞ。
どうするんだ?
帰り道は、もうないのに」
え?
ええーーー!!!!
帰り道…どこ行ったの??
何で、振り返っても。進んでも。
木なのーー!!
囲まれ過ぎでしょ。コレ!!
ため息混じりに、行き止まりの辺りに手を伸ばしたその途端。
夜。
いえ。言い間違いとかじゃ、ありませんから!!
本当の、本当に『夜』になりましたから!!
「面白えな。
なるほど、俺がココに呼ばれた訳が分かったわ。
この為か」
ん?何か変よね。
「ゲルガー。そんな風に言ってるけど闇の妖精の力を失ったんじゃないの?」と聞くと。
ガーン。
顔にかいてあるよ、ゲルガー。
(忘れてたのか…意外にのんきね)
「チビ助、闇の妖精は力を失っても特別な目を持ってるんだ。ゲルガーが見れば、この先に進む方法が分かるはず。夜は闇の妖精の世界なんだ。
他の妖精は、ほとんど力を出せない」
ブルーノは、物知りよね。
14歳とか聞いて、私がガーン!!となったわ。
この身体だけど、中身三十路だから…私。
ゲルガーが目を凝らして探している。
「恐らく、昼夜逆転したのは何か理由があるのでしょう。『大森林』の精霊ほどの古い精霊は賢い。恐らく、身の危険から身を守る為では?」
ギャビンさん。安定の賢者振りが本当に素晴らしいわ。
でも。おかげで色々分かった事もある。
『大森林』は、よほど誰にも気付かず私達を呼び出したかった事。
(その為にゲルガーまで連れて来て)
昼間だと、何者か侵入する恐れがある事。
ベラの家…無事かしら。
「見つけたよ。ココ…誰もが忘れてた 単純なものだ。ほら…」.
ゲルガー。
お願い、説明は分かり易くで。
ゲルガーの指差した方には、木の虚があった。
何かおかしいかしら?
「なるほど、理解しました。
ほら、ココの虚には間違いがあります。何が間違っているでしょう?」
え?
ここに来て、間違い探しとは。
えっと(正直、苦手なのよね…)
アレ?
もしかして、私でも分かる…簡単。
「影よね。
影の出来る方向が違うわ!」
全員が頷くって。
もしかして、私の答え待ち状態だったの?
ゲルガーがその影にそっと触れると。
寒…。
もう、目も頭も身体も付いていけません!!
何故に銀世界?
一面の雪景色とかあり得ないーー!!!
し・か・も!!!!!!
木とか何にも無いから!!
平原。
まさに、雪野原。
『精霊樹』は?
全員が、唖然となりながら周りを見渡す。
でも。
何も見つけられない。
「もしや、もう…」
サイラスの掠れた声が響く。
それほど、静まり返っていたの。
雪は音を吸収すると言うけれど、風の音すら無いなんて。
空を見上げると、雲の隙間から月が顔を出した。
こっちのお月さまも綺麗ね。
ただ…ちょっと大きいわね。
ん?
あれは…。
大きな木の月影が現れたわ。
但し、本体の木は存在しないけど。
「ねぇ、なんで影のみあるの?
月影って、この世界では特別なの?」
ギギギギ。。。
なんで、ロボット?
動きがぎこちないよ。
定番のびっくりがあるの?
全員が固まったまま、私の方を振り返った。
それは、ブルーノもゲルガーも同じで。
『お前の目だけは、欺かなかったか。
今や月影の中にのみ、我の本体はある。
サイラスよ。
嘆くでない、ジェラルドのせいでもない。
これも、定めか…』
小鳥…復活!!
いつの間にか、肩にちゃっかり居ましたよ。
しかも、ジェラルドまで。
かなり萎れてるけど。
でも。
定めとは、ちょっと。
「あのー。
私は、これは人災だと思うんです。
森は、妖精だけでなく人間の力も必要だから。
。。。
これは、具体的なやり方ですが。
土の再生が必要だと思うんです。
それに、木々の間に隙間も絶対必要ね。
土の再生は、まずゴミ取り。
雑草やいつの間にか溜まったゴミってあるんです。
あ!落ち葉は別。
これは、大切なのよ。
ここからは、人間の出番で『堆肥作り』。
落ち葉以外にも、野菜クズや暖炉の灰。石灰なんかも良いと。
広げた土に陽を当てて、ふかふかに空気を入れる。堆肥も入れたら、森は元気いっぱいになると」
しまった。
調子に乗ったわ。
おばあちゃんに言われた通りね。
これは、私の欠点。
ブルーノ以外は、青ざめたまま固まってる。
そうよね。
この世界の神さまに近い存在に、生意気なことを言っちゃたもの。
ブルーノなんて、ぷるぷる震えてるし。
そこまで、怒りが…。
どうしよう。謝った方がいいかなぁ。
悪いこと言ったつもりはないけど。
「凄いよ!!
なんて、斬新な意見なんだ!!!!
ピテレの力を使うだけじゃダメだと、何度も俺は考えたよ。
そうだよ。人間の力だって必要なはずなんだ。
チビ助は、すげーよ。
俺、お前を尊敬するよ」
捲したてると言うのはこういう事ね。
私と似てる…。
『良い、お前が異世界から招かれた理由はココにあるのだな。物怖じしないお前の為に一つ良いものをやろう。
ほれ!持って帰るがいい…』
最後の言葉と同時に、月明りがピカッと眩しく光ると私達はベラの家に逆戻りしていたの。
手のひらには、コレなに?
『小さなドア』と書いてあるわ。
聞こえはいいけど、単なる木の板?かな。
騒然してる皆んなより、私は気になる事が。
精霊が私だけにした最後の呟きが…。
『よいか。
靄鬼が出た。しかも、王都にだ。
細心の注意を払え…』
『靄鬼』…嫌な響きだわ…。




