森に出来た一本道!!
緊急事態発生!!
囲まれてた森に。
あのビッシリのはずの森に一本の細道が出来たから。
と、言うのもあの大食い少年ブルーノは、食べながら色々な話をしてくれたのよ。
(物凄く食べ物に釣られやすい体質ね…)
もぐもぐと動く口は一時たりと留まる事をしないで、そりゃあもう!
中身がバラバラ飛び出す勢いでの、話の内容は…。
精霊が、各地で弱りつつあると言うもので。
特に、この『大森林』の弱り方は尋常じゃないと。
だから、森が暴発しているのかもしれない。
あ、新しい意見!!
そうか。精霊を守ろうと森の木々が生い茂り、やがて森が広がっていったのか。
ん?
じゃあ、ジェラルドは?
確か、木の妖精だったような。
噂をすれば影なのかしら?
そんな話題の中で、ジェラルドがふらりと現れた。
いつもの剽軽な様子は無く、髪は乱れ痩せ細っていたわ。
いったい…。
「あー。
トトラルの少年を呼んだのか。
僕のしている事は、やっぱり間違っていたのかなぁ。精霊を守りたかっただけなのに…」
肩を落とすジェラルドの話は、良く分からない。
でも。
この森の異常とも言える木々の様子に、ジェラルドは加担していたのだと分かった。
フローラが苦労しているのに?
ジェラルド…。
「雪菜。
そう思うのも無理はないけど、この事はベラもフローラも知ってたよ。
精霊を失えば、今より状況は悪化する。だからどうしても、精霊を守りたかったんだ」
なるほど。
じゃあ、精霊は何故弱ったの?
「それが分からないから、大変なんじゃん!
チビ助は、やっぱりチビ助だな。
それにしても、ジェラルドだっけ。
木の妖精だよな?
それ、不味いだろ。そのままなら…」
ブルーノ…チビ助はソロソロやめようよ。
本当なら、ずっとお姉さんですから!!
それより話の最後に、ジェラルドの事で何か…
もしかして…と、問いかけようとした途端!
「さあ、とにかく雪菜の美味いご飯でも食べて元気出すかなぁ」
と、無理やり元気風を装うジェラルドに邪魔されたわ。それにしても、その元気は無理ありすぎ!
誤魔化したって、ブルーノに理由を聞くわよ。
「それはな」「やめろよ!!黙ってろ!!」
答えようとしたブルーノの声と、ジェラルドの声が重なる。
でもね。こうなるとどうしても理由を聞きたくなるわよね、大切な事の気がするし。
何より解決する為には全員の力を合わせなきゃ。
でしょ、ジェラルド。
「チビ助の割にはいい事言うな。
お前の言う通りだ。
木の妖精、お前そのままじゃ消えるぞ!
エナジーの殆どが身体に残ってないし、そのエナジーは普通の人間のご飯では、補えないし。
そりゃ、さ!この飯は美味いけどさ。
それでも、エナジーを集めた方がいい。特に、この森の為にも」
アレ?
なんでジェラルドが驚いてるの?
知らなかったの?自分の状態を?!
「ふふふ。
雪菜、そんな訳ないじゃん。
分かっていたさ、自分の事くらいは…ね。
でも、この少年が言う『エナジーを集める』というのは、初耳だから」
え?
そうなの?
じゃあ…この大食い少年は実は凄い人?
「ははは。
これだから、チビ助はさ。
こんな事は、トトラルでは常識なのさ。昔からの言い伝えを大切にしてきたからな。
それに木の妖精!
エナジーは、特定の場所に溜まるんだ。
例えば『精霊樹』」
!!!!
何?ジェラルドの動揺が大き過ぎない?
サイラスまで、びっくり顔だし。
『精霊樹』って、大切なの?
「雪菜殿。
『精霊樹』は、その名すら知る者もない秘匿中の秘匿。『大森林』の心臓部です。
私もギャビン殿やアーノルド殿だって、名前を聞いた事があるくらいで。
実際、見たものは、恐らく居ません。
それを、このトトラルの少年が何故…」
サイラスの顔には苦みが広がっていた。
トトラルの少年に知られたら不味いのかしら?
「へへへ。
そりゃ、俺は親方の弟子だからな、特別さ!
だから、心配ないよ。
トトラルでも、その事を知ってるのは親方くらいかもね。
なぁ。
木の妖精も『精霊樹』の位置を知らないんだろ?」
青白い顔のジェラルドが頷く。
アレ?
そう言えば、慶ちゃんが葉っぱを持って来てくれたような…。
気のせいかな?
あ、そうだわ。きっと別の『精霊樹』の事ね!
「あのね、雪菜。
別の『精霊樹』とか無いから!!
あったら、こんなに苦労してないからね。
その少年の言う通り、知らないよ。
それは、あのベラでも同じ事。
あ!!
まさか…まさか君が?
それって!!」
「違う、違う!!
そんな訳ないだろ?
でも、それ臭い人は君も知って…」
ん?
皆んなが一斉に扉の方を見た!!
何?
何かまた、来たの?!
ジェラルドは、扉をすり抜け外へと。
それを合図に皆んなは、扉を開けて追うと。
出来ました!!
まっすぐ伸びる一本道!!
唖然とする私の肩に小鳥がとまって。
『奥へ向かえ』
ひぃーーーーー!!!!
痺れる低音ボイス。
間違いない!!
『精霊』?!




