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森に囲まれた!  作者: ちかず
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ブルーノ視点①

いつも通りに、森の奥深くに来ていた。

親方に頼まれた薬草は、俺にしか取れないから最近はしょっちゅう頼まれる。


ここ、トトラルでも更に山の奥となると妖精の加護付きしか入らない。入れないが正解か。

そう、この森は特別なのだ。


その名も『毒の森』。

その名の由来通り、恐ろしい毒が数多くある。

中には、触らなくても側を通り掛かるだけでも毒にやられるものすらあるのだ。


だが、親方曰く。


「いいか、ブルーノよ。

薬と云うのはなぁ、元々は毒なんだよ。

いや、紙一重と言うべきか。扱う者次第で天国にも地獄にも行くものになる。

それが『薬』だ。


トトラルの国主様には分からねぇだろうが、あの森は宝箱よ。ただ、それを宝箱に出来る人間が居なくなりつつあるだけでな。


ま、今となっちゃ俺とお前くらいか。

だからこそ、忘れるんじゃねえぞ。大切なのは、何かを」


耳に蓋があれば良かったのに。

繰り返し過ぎだ!

これだから、ジジイは困るんだよ。



そんないつも通りのやり取りをして、俺は森の奥深くにいたんだ。


『ねぇねぇ、ブルーノ。

早くしないと、大変な事になるよ。親方にもう一度話をしてみてよ!!』


ピテレの言葉も、いつも通りだ。

ただ、こっちは様相が違うんだ。


あれは、今から2ヶ月前。

突然、ピテレの奴が叫ぶから驚いて振り返ると辺り一面の土が穴だらけになってたんだ。


「おい。こんなにしちゃって。

いいのかよ。森に傷を付けるな!とかいつもガミガミ言うくせに」


呆れ顔の俺に珍しくピテレが興奮して言い立てる。


『あのね。そんな場合じゃないから。

大変な事が起きそうなんだよ!この辺りが全て火の海になるかもしれないんだから!!!』


穏やかじゃない話だな。

火の海とか。だがピテレに限って嘘はない。だとすればいったい何の事を言ってるやら。


『山が変なんだ。

何か下の方から熱いものが湧き出してるんだよ。

土の妖精だから分かる。アレがココに到達したらトトラルの国がなくなっちゃうよ!』


最初は、大袈裟なと半笑いだった。

だが、何度も何度も訴えるピテレの熱意に徐々に俺自身が危機感を感じてある日親方に話をした。


暫く、腕組みをして聞いていたが、

「ブルーノよ。

その話を他でしちゃいかん。山の異変はこの国の一大事だ。それは国主様に山の精霊が怒りを持っている事になるのだ。

分かるな。それが何を意味するか」


国主様は、賢い方だ。

だが、代々受け継がれるべき『遠見の力』をお持ちでない。

だから、いつも国の中に争いの種があるのだ。


そんな事は、単なる村人の俺でも知っている事。



あの日から、何度も考えて遂に国の外へ出る決意をした。

親方も「許可が下りればな」と反対はしなかった。なのに…。


許可は下りなかった。

子供はダメだと。

もう14歳なのに(トトラルでは、15歳が成人)


間に合わなくなったら…。

そんな不安に苛まれる日々だ。



だからなのか。


いつも通り、一番の毒草で最も希少種のゼゼレブを取ろうとピテレに声をかけようとしたその時だ。



土がなくなった。

改めて考えても、何の事か分からないが、足元が急に消え穴に落ちたのだ。


それが正しい。



落ちてる時間は永遠にも思えるほどで、そのうちに気を失ったと思う。


気がついた時は、見慣れないベットの上だった。


ピテレを探せば、キョロキョロしてるものの側にいた。

ホッとした。

生まれた時から一緒だった相棒なのだから。


『ここは、多分トトラルの外だよ。

もしかして…』


言いかけたその時、いい匂いが部屋いっぱいに広がったのだ。

こんな美味そうな匂いば初めてだ。


数日ほとんど食べてない俺は、匂いのする方へ進む。階段を上がり気配を消して近づけば…。


見慣れない奴等が飯を食べてた。

戦士らしい男二人と、ヒョロヒョロの男二人。

そして、チビ助だ。


そんな事より、飯だよ。飯!!

テーブルいっぱいの飯を見たのは初めてだ。


どれも見かけない料理だが、美味そうなのは間違いない。

そのまま、気配隠してサッと近づき料理を奪って部屋の隅へと行く。



警戒をいっぱいにして飯を口にいれて、びっくり。匂いの通りだ。

めっちゃうめー!!!

頬張る俺にピテレが何か話しかけたが、美味過ぎて聞いてなかった。


お?

チビ助が偉そうだぞ。



攫ったのもコイツかもしれないなぁ。

チビ助の身体から滲み出る魔力は普通じゃない!!

魔力とさえ言えないのか?


文句を言えば…いったぁーーーーーー!!!!!

痛いよ!


頭が壊れるよ、本当だよ。

乱暴な女(チビ助)だな、コイツ。


だが、口に出すのは危険だ。

また、あのグリグリを受けるのは絶対に嫌だ!!


おや、あのチビ助。

まさか、ピテレが見えるのか?

隠密の結界を張ってるのに、ピテレが見えるとは本当に人間かぁ?


驚く俺に、大男のおっさんが急にトトラルの人間だと見抜いてきやがった。

ほんとに、コイツら何なの?


もう一人の大男の殺気も、普通なら失神レベルだから。


それに。

『家の中に変な魔力を感じる。

しかも『大森林』の精霊様のお姿が妙なんだ』

とピテレがこっそり教えてくれた。


そうだよ。

ココ…もしも『大森林』なら。


それが本当ならどうやってこんな最も遠い地まで来たんだよ!

もしかして…

掟に従うしか無いのか?

じゃあ…トトラルへは?

もう、親方に会うことも?!


孤児の俺を育ててくれたから、これから楽して貰おうと思ったのに…。


最後に俺が言った台詞に全員が全員固まった?

まさか…知らなかったのか。

『大森林』の精霊が小鳥の姿だと…。



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