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森に囲まれた!  作者: ちかず
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また来訪者現る!

まずはお腹の虫を押さえて台所を物色していたら、外で大きな物音がした。

何?


「あり得ない。この空間に人間が入るなんて。」

ボソッと呟いてジェラルドが消えた。


おー。さすが妖精。

出入りも消えたりでOKな訳ね。


それからしばらくして扉を叩く音がした。


ドンドン。

「開けてよー。ほら、緊急事態なんだから。」


ドアの外からジェラルドの大声が聞こえる。

あれ?出入り自由はどしたの?

急いでドアを開けるとジェラルドが成人男性を担いで

ヨロヨロ浮かんでる。

浮かんでるのに意外に力持ちねぇ。

私が手を貸して取り敢えず床に寝かせる。

いや、ベットが見当たらないから。


えーと、確か応急手当習ったよね。


まずは意識の確認から。


「聞こえますか?お名前教えて下さい。

声が出せるようでないのから、少しでよいので手を動かして。」


全く動かないので、意識は完全に無しと。

と、なると次は呼吸の確認。

口に耳をあて呼気を感じるか試したら、あぁ良かった。自力呼吸は確保出来てる。

これなら今すぐ大事にはならないわ。


じゃあ、落ち着いて他の確認に入ろう。


身体を見渡し、変に曲がって骨の異常がないか診る。

万が一触ると折れてる場合は、状態を悪化させる事もあるから目視のみ。

それと傷や出血がないかも目視で確認して。よし大丈夫みたい。

となると一番の問題は、この痩せ方だわ。

まるで長い間飢えてたみたい。

最後に体温の確認。窶れた人は、低体温症を発症しやすいから。

でも、暖かいわ。


「ねぇ、体温の確保の為に毛布や掛布があれば教えて。あまり寒さは感じないけどかなりの窶れ具合から言って低体温症を発症しかねないわ。」


振り返ってジェラルドに頼むと、ジェラルドがヒューと口笛を吹く。

し、失礼な。こんな緊急時に。


「ごめん。ごめん。

慣れた手つきに驚いてさ。凄いよ。妖精に寿命なんて無いから、応急処置なんかちっとも分からないし。

低体温症??

まぁ、毛布の在り処は知ってるから案内するから着いてきて。」


にやけ顔だったけど、私の顔を見て自分のした事の意味が分かったみたい。

おや、あの本棚だらけの部屋に入るけどこんな所に毛布が仕舞ってあるのかしら。

「きゃ!」思わず声が出る。

だって突然、本棚の一つが動き出したから。

なんと、移動した本棚の床に階段を発見!!

地下への階段が現れた。

ここに来て初めてファンタジーを感じたわ。

すごいじゃない。

魔女の家みたいで最高!

私の盛り上がりにジェラルドが気づく事はなくそのまま二人で地下への階段を下りた。

長い廊下を進みながら、地下室の思いもかけない大きさにちょっとビビる。

薄暗い廊下の壁には、仄かな明かりが見える。

電気ではなく…なんだろう?

ジェラルドは、左右の扉のうちの一つを開けた。


「ここ。ここに布団とかあるはずだから。」


入ってみるとそこは綺麗な女性の部屋。

壁紙には色とりどりの花たちが咲き誇り、絨毯は緑。

お姫様ベットの代名詞。屋根とカーテン付きの大きなベットがある。

まさか、ここから剥がすの?

躊躇っていたら箪笥らしき扉をジェラルドが叩いた。


「ここだよ。この中。」


中には沢山の布団を発見。けっこうな大きさの箪笥ね。

良さそうなものと、枕。タオル類も見つけて。

両手に抱えて戻る。


男性は気を失ったままだ。

持ってきた毛布をかけ、枕を頭の下に入れる。

本当は布団をひいて寝かせてあげたいけど、成人男性を抱える力はないし。


そうだ。目が覚めた時に食べられるスープを作ろう。


「ねえ。食糧の場所知ってるわね。

何かスープ類を作るから教えて。」とジェラルドに尋ねたらまた地下室の別の場所へ案内される。


「ここだよ。食材は、触れば頭の中で記憶が蘇るから。」ジェラルドの指差した扉を開けると。

溢れんばかりの野菜や果物を始め見た事もない食糧がいっぱいだった。


取り敢えず、頭の知識を頼りに野菜や果物。それに干し肉などを持って戻る。

私のお腹も空いたし、よーし、腕を振るうぞ。


1時間後。

干し肉の野菜スープ完成。

ついでにパンっぽい何かも少し焼いて添える。

うーん。いい匂い。


頭の中の知識は、地球での私のそれではない。

まるっきり見た事のない野菜を頭が知ってるなんて。

まさか。

フローラは、まだこの身体にいるの?


焦る私にジェラルドが教えてくれた。


「違うよ。脳にある記憶だよ。

君の魂が転移した時、この世界の様々記憶は一旦沈んで眠ったんだ。でも、それはフローラじゃない。単なる知識。」

やっぱ、フローラの仲良しさんだな。

ジェラルドの顔が寂しそうだから。


「うーん。」


あっ!男性が動き出した!!

良かった。目が覚めたみたい。


「大丈夫ですか?痛いところはありませんか?」


私の問いかけに最初はぼんやりしてたけど、だんだんと意識がはっきりしてきたみたい。

しっかりと目があって途端、男性は叫び出した!


「ヒッ!緑の目の化け物。」


えっ?私の目は緑なの?

凄い、凄い。鏡見たいなぁ。とか言ってる場合じゃなわね。

私から飛び退ったのだから。

なんで??


しかし気を失った人には、見えない動きだったわ。

しかも助けた人に化け物はないでしよ。


「追い出しちゃえよ。

やっぱ人間は、ダメだね。

森が珍しく中に入れたから、連れてきたけど追い出してくる!」


ジェラルドはかなりご立腹みたいよ。

ジェラルドが男の襟を掴んで引きずろうとしてるから。無理よ。

身体の大きさが全然違うからね。

あー、首が締まるわよ。

。。

大丈夫かしら。

でも嫌われてるみたいだし助けてられないわよ。


「ま、待って下さい。お、お詫びを申し上げます。幼い頃からの教育とは言え、大変失礼な事を申し上げました。

お嬢さん。申し訳ない。

助けて下さった方に暴言を吐くなど騎士にあるまじき行為。重ね重ね申しわけない。」


騎士?

それよりもこの土下座のお兄さんをまだ引きずっているジェラルドを止めなきゃ。


「ジェラルド。私は大丈夫よ。フローラじゃないから。春川雪菜はこのくらいヘッチャラ。」


ジェラルドが少しピクリッとして止まった。

男の人は、土下座したままピクリとも動かない。


「さあ、貴方も土下座なんてやめてまずは食べましょう。人間お腹が空いては良い考えが出ないから。ジェラルド。貴方も食べれる?」

祖母の口癖を真似て二人にスープをよそう。


いい匂いが部屋中に溢れた。

ジェラルドは、不機嫌な顔を少し緩まして「食べる」と一言。


静まり返った食卓になったけど、美味しく出来たし幸せ。

にっこり笑いながら食べてると不思議そうに2人は私を見た。


「「そんな風に笑うなんて。」」

なんで?

フローラは笑わない人?

私は笑い上戸なんだから慣れて貰わなきゃね。


「ごめん。フローラじゃないと分かってるはずなのに。

雪菜。どうぞこれからよろしく。」


ジェラルドから初めての挨拶。


私も立ち上がって、お辞儀をし挨拶を返した。


「初めまして。春川雪菜と申します。

こんな小さな女の子風ですが今年で31才になりました。

突然の事だらけだけど、親切にして貰ってありがとう。改めてお礼申し上げます。」


正直パニックにならなかった一番の理由はジェラルド。

一人じゃないって、凄い事だもの。


しかし、ジェラルドは妖精で私はフローラの身体の中。解決しなきゃいけない事は沢山あるわね。


まずは色々と聞いてから。と。


一部お粗末な知識で応急手当の文書を入れました。さらっと読んで貰えると有り難いです。

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