表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森に囲まれた!  作者: ちかず
29/233

決意の朝。

昨日の夜から、煮込んでいたトマト主体のスープには畑の野菜たちが浮かんでいる。


豆(色々な種類…)

じゃが芋っぽい紫芋

人参の姿の甘い芋(さつま芋に似てるかな?)

とにかく、煮れそうな野菜を沢山入れる。

トマトを入れて、味を整える。

野菜の甘みと塩だけで味付け。



そして…

パンにも挑戦した!!

窯が増えた台所でパンを焼いている間にレタスとトマトなどの用意する。

塩漬けの肉も薄切りにして。

さあ!焼けたパンに挟むと『サンドイッチ!!』の出来上がり。


ソースは、前に作った照り焼きソース。

(あー。思わずマヨネーズ!!と叫んだわ。今一番欲しいのは、卵!!)


そして。


紅茶(コンユー)


熱々のお湯でカップを温めて、香り高くなるように高い位置から注ぐ。


いい香りが居間いっぱいに溢れ出す。



居間に揃った今日の朝食は、私の決意の表れ。



日本で、平和の中にあった私には争いなんて所詮物語の中の事で…実感なんてなかったの。


だから。


森の中の家で。

皆んなが戦っている時に何回も思った。

ただ、待つだけの私には、祈る事しかなかったから。


無事でいて欲しい。と…。


会ったことのないサイ村長。

村人たち。

マティさん。


変わりたい…。


無力な自分ではなく、出来る事をする私でいたい!


そう思ったのだ。


だから。


悩む時。

落ち込んだ時。


そんな自分を励ます儀式が。

『手の込んだ朝ご飯』



「どうしたの、コレ。

朝から凄いご馳走だね?何かあったの…」

地下室からアーノルドがやって来てテーブルに並ぶご馳走に驚きながら尋ねた。


答えよとする間もなく、後ろからサイラスもやってきた。


「雪菜殿。

昨日の夜も遅くまで料理をされていたようですが…」


次は、サイラスの声に被るようにギャビンさんが尋ねる。


「眠ってないのでは?」


ふう。そんな風に言うギャビンさんこそ。

寝てないわね。


無言のまま、リカルドも入ってきた。

少し、元気になったかな?


私は、自分の決意を述べた。


「今まで、どこか他人事だったの。

フローラに呼ばれて、まるで夢の中ようで…。


変わりたいと思ったのよ。

出来る事を探したい。

この森の事。

この世界の事をもっと知りたいと。


この朝食はそんな私の決意の表れかな。


さあ。

美味しいと思うのよ。

皆んな召し上がって!」


言いながら、どこか気恥ずかしくなって最後は濁しちゃった。

サイラスとギャビンさんは、顔を見合わせて私を見た。


「雪菜殿。

我々もこの森から、出れないと改めて実感しました。サイラス殿など戦いに参加したかったが、どうやっても森からは出られなかった。


マティ殿もあの後は、この森に入れない様子を知り『大森林』の深刻さに今一度話し合いました。


どうでしょう。

リカルドの『羽のカケラ』を利用してみるのは?」


なるほど。

この森に、入れたのは『羽のカケラ』のお陰だとリカルドから聞いたから。


でも。

リカルドの顔を伺うと意外にも怒ってる様子はない。


「あらぬ容疑をかけられてると知ったから。

『雪星の雫』が盗まれたのは、一大事だ。

ペペスを失った俺には、よく分かる。


その為に『羽のカケラ』を利用するならペペスも喜ぶと思うから」



その言葉を聞いて、皆んなで問題点をまとめた。


1、『大森林』の精霊の事を調べる。

2、『雪星の雫』の行方探し(時間がないらしいから…)

3、ルスタ国を探る(これ位で諦める人々じゃないんだって…)


他にも、ギャビンさんのクーデターとか。

ペペスの復活とか。


「森に囲まれた我々は仲間として、問題を解決しゆこう」


ギャビンさんの一言に皆で頷く。


美味しい朝ご飯を食べた私は、まずは図書館に!!


超苦手な勉強が絶対必要だから。

や、やるしかない!!


アーノルドは、畑の管理。

(生えた雑草の中に、新種が沢山あるらしいの。

そこから、『大森林』の問題を探すって)


サイラスは、身体を鍛え直している。

仲間と連絡を取りながら『雪星の雫』の行く先を探している。


ギャビンさんは、何やら魔力を使って『大森林』の調査している。

それが終わったら、脱出を試みるらしい。


リカルドは、私と図書館へ。

ブルーレルからのヒントを得てずっと本を調べている。どうも、妖精に詳しいみたい。


慶ちゃんや鳥達もあの後は、姿を見せない。

マティさんの魔力の放出が大きくて彼らに影響が出たのでは…とギャビンさんが説明してくれた。


丸鳥だけが沢山来てる。




ールスタ国、王の部屋ー


ふう。

酷い目にあったわ。


宰相の言う事など、聞くべきじゃなかった。

『火の精霊石』さえあれば、無敵だなどと。


しかし、聖騎士は邪魔だな。

あやつらが、滅びてしまえば良いのに。


いや。

それより『大森林』よ。


精霊こそ、滅びてしまえば良い!

緑など、邪魔なだけよ。


家や工場を増やすのが、より豊かになる方法だと言うのに。

馬鹿ばかりだな。



特に、サイラスよ!

公爵家に生まれた癖に、この国を飛び出して聖騎士などになりよって。


精霊も聖騎士も、全て滅びよ!!


はぁはぁ…。



何だ?

壁が変だな…。


壁の色は、あんな色だったか?



『ククク。

お前は、なんと芳しい匂いがするのだ。


お前の望み、我が叶えよう。

精霊など滅びよと願うとは、殊勝な考えだ。

コレを使うが良い。


コレは、お前の望みを叶えよう』



黒い靄だと思ったものは、壁から現れた一人の影。



ただ、人間ではない。

黒い靄を纏った、異形の姿。


靄鬼(あいき)は、1つの石を置いて去った。



残された『真っ黒な石』


ルスタ国ダーゲルント王は、その石を拾った。

と、身体の底から湧いてくる力!!


多少目が飛び出て、爪や髪が変形しようと湧き出る力に喜びは、隠せない。



コレならば。


あの憎っくき『大森林』の精霊を倒せる!!



彼の高笑いが、その夜城の中にずっと響いていた…、





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ