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森に囲まれた!  作者: ちかず
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そして…私の選択は?

皆様、長らくお読み下さり本当にありがとうございます。このお話は本当に難産でした。

それでも最後まで書き続けられたのは、皆様のお陰です。本当に励まされました。



深い感謝を込めて。

ちかず




ー雪菜視点ー


日暮れが早くなったわ。

畑の野菜を収穫しているサイラスに声を掛ける。


「もう終わりにしましょう。今日はサイラスの好きな肉じゃがよ。」

振り返った笑顔には、額に泥が付いていてこちらが吹き出した。


「サイラスってば、ココに付いてるわ。ほら…」


伸ばした手がサイラスと触れ合ってびっくりした私が引っ込めたその時。


「肉じゃがとは私も大好物です。懸命に働いた褒美はやはりあるモノですね。」


後ろから聞こえる落ち着いた声に振り返るとギャビンがいた。


「また来たの?皇帝のお仕事は大丈夫なの?またベレットさんに怒られるわよ?!」


不敵な笑みでギャビンが近づいて私の持っていた野菜籠を持ってくれた。

もう!!ギャビンってば。。

さり気無いこう言うイケメンな所が苦手なのよ。ちょっと頬を染める干物に気づく事なくギャビンが朗らかに答えた。


「大丈夫ですよ。さすがにひと月ぶっ通しで働きましたから。」


食卓にはゲルガーが待っていた。お腹減ったのね。


あの後、何故か幼くなったゲルガーは今は小学生くらいだ。そして全ての精霊が復活したはずだったのに足りなかった一人。

そう、リュカは…。


『また来ちゃった。何せ名付け親だからね。』


この通り。

ガレナガさんに預けたモノから現れた光の精霊がリュカに変化したのだ。その理由と言うのがどうやら私が『名付け親』だったかららしくて。消えたはずのリュカの魂は、私の胸の中で眠っていたんだって。

ま、よく分からないけどまた、会えて嬉しい。


そう、そう言えば靄鬼は、あの『雪星の降る島』での出来事の後、跡形もなく消えたの。

でも、ルスタは大変だったみたいよ。

王様も首脳陣全員が靄鬼と共に消え去ったらしいから。サイラス曰く「完全に乗っ取られた人々は既に靄鬼そのものだったのです。」と。


完全に復活した精霊様と寄り添う事を思い出したこの世界の人々の前に、私のやるべき事は完全に終わった。


『早く最後のネギを刻め!』

は!!

台所で物思いに耽っていたら、手元の包丁から怒られたわ。。


そうなの。コレっば、まさかの『オゼルの大刀』で。精霊の復活のエネルギーとグレナガさんの技で復活したのに、何故?

『包丁の方がいい』って。必要がないとか言ってたけどサイラスの目が少し寂しそうだった。


バタン。


「神鳥、帰ったら声をかけてから扉を開けろとあれほど言ってるだろう!」ブルーノに怒られてる。


「そう言うお前こそ、地下トンネルを通っては、ここにタカリに来るな。それにココは俺の家だ。何の文句がある?」

「俺の家?部屋を一つ貰ったからって、殆ど旅の空じゃねえか。薬草集めのオタクが!!」

「その言葉、そっくり返そう。」


ふう。せっかく揃ったのにまた揉めてる。この二人、薬草の知識では意気投合してるのに、何で…。


「そう言えば、アーノルド殿からコレを預かった。」そう言って課長が持っていたのは、まさかの卵と牛乳?!


きゃあ!!!

コレでもしかして『プリン』が作れる?!


ウキウキしている私は、こちらを見つめる皆んなの瞳に全く気づかないままだった。


それは暖かな。そして熱い…。




***


あの日…。


この家へ戻った夜、再びベラが現れたの。


『雪菜よ。お前さんには掛ける言葉すらない程感謝しているよ。全く関係のない異世界人をこんな事に巻き込んで申し訳ない。心よりお詫びするよ。』


そう言うとベラが深々頭を下げた。

だから、急に現れた事にびっくりするのを忘れちゃったの。

大丈夫と言いかけたその時、ベラがびっくりする事を言い出して。


『もしお前さんが望むなら、元の世界の元の時間に返そう。』


その言葉に、私の全てが止まった。

それは、忘れようとしても忘れられない。いつも胸の中にある私の希求するモノ。


「も、もちろん…」

そこまで、言いかけた私の頭の中にこの世界に来てからの様々な出来事が次々と駆け巡る。色んな人達の顔も目の前に通り過ぎて。

は!!大切な事忘れた。


「あ、課長は?」

「あの男の魂は、オゼルのモノだからね。でもね、アンタが望めばそれも…」


課長も一緒に?


あの日、繭から復活した課長の身体はボロボロでブルーノと2人がかりでやっと助けたのだ。無理ばっかりするのは会社の頃と同じで…。 

課長も一緒なのね…でも。。


「さあ、チャンスは一度きりだ。時間もあまりない。どうする?」


答えは決まっていた。それは笑顔と共に。



***


「雪菜殿。もしかして念願のプリンですか?」


サイラスの声かけに、ぼーっとしていたと気付いて振り返った。

いつも、変わらない笑顔がそこにある。


「そうよ。作るからサイラスも食べてね。」


「それは楽しみです。手伝う事があれば…」「ふふふ。サイラスはいつもソレね。いつもありがとう。でも大丈夫よ!!」


テーブルではこちらを笑顔で見つめている皆んなの期待の視線が手元にあった。


プリン。


さあ、作るわよーー!!!



***


『ふふふ。日本に帰れば○○も一緒だったかもね。その本人は扉の影から聞いていたようだけど。さあ、出ておいて…』


雪菜が居なくなった図書館に人影が現れた。


『勘違いしてるね、お前さん。

その胸の誓いこそが、絆だと思っているのかい?

ふふふ、まだまだだね。

彼女の幸せを一番に願う。己の想いの行方よりも彼女が戻れる幸せを願うお前さんのその心こそ誓いを本物にしたのさ。だから一緒に行けるだが、彼女は違う選択をしたみたいだね。

さあ、今度こそ最後だ。彼女を頼んだよ。。』


魔女はそう言い残して姿を消した。



後に残ったのは一人の男だった。

胸に手を当てて独り言を呟いた。


「これまでも、これからもきっと…」


それは、古代魔法よりもっと古い誓いだったかもしれない。そのたった一人の誓いを聞いているものはいなかった…。


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