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森に囲まれた!  作者: ちかず
232/233

カザエルの王宮で謀反?!


ーランベル視点(元ドルタ帝国宰相)ー


やっとだ。チャンスは一度きり。


強張った身体を解すと味方のムーケン殿を促す。この人物はガランドと一緒で操りやすいのだ。


「今こそ、この国の正しい姿を取り戻す時です。海の精霊様の御威光を盾に重臣の献身に全く興味のない王など民を害するだけの存在なのですから!!

ムーケン殿こそが救国の光となるのです。

ご賛同下さる貴族院の皆様も私兵を挙兵した筈ですから。」


「分かっております。私欲を捨てる事こそ近衛隊の取るべき道です。それをあのラドルフが…」


またか…どれだけ劣等感の塊なのだ。ふぅ。


「誠に。ムーケン様のご苦労を思うと私など胸が痛みます。」


赤ら顔のムーケン殿はあと一息だ。と、丁度タイミングよくドアをノックする音がした。


「正しい光を。」「本来の姿に。」


合言葉など馬鹿馬鹿しいが、この辺りは仕方ない。王に国を預けて呆けていた貴族などこの程度の浅知恵なのだ。

武装した貴族の鎧の煌びやかさに目を細めて、そのまま王座へ向かう様に促した。


何せ時間がないのだ。ドルタ帝国で読んだ文献によれば、海の精霊が滅びる時王も倒れる。その時の敵方の乱れを利用するしか勝つ方法はない。

あの小僧(ギャビン)に一泡吹かせるまでは、決して諦めない。


一団が、王座へと向かうのを見て少し遅れてついて行く事にしていた。表向きは他国の者だからとの遠慮。本当は荒事がだいたい片付いてからの方が安全だからだ。

ムーケンなどはこの刀に塗った毒でイチコロだ。もちろん後始末など配下の者にやらせる予定だ。


「ククク。そんなに上手くいくかね。」

薄ら笑いを浮かべたのは、ガランド元皇帝陛下だ。ドルタを出てから露悪的になって困る。あの時、火をつけるとは思ってなかった。あれから何かが変わった様に人が変わったのだ。


「まあ、お前はそこで呑気に待ってるがいい。もう一度お前を皇帝にしてやろう。」


そのまま部屋を出た俺には彼の独り言は聞こえなかった。


「誰も皇帝になりたいとは言ってないのだが、な…」


ーダンゼル視点ー


倒れ込む我が君を抱き止め最悪の覚悟していたら、突然息もできない圧力にかがみ込む。せめて我が君だけはと、覆い被さり守るも誰もかれも動けない様子だった。圧力が取れたと同時に慌てて脈を取る。(医術の心得はとうの昔に取得済みだ)


..良かった。

今まで赤みのない頬に血色が戻りつつある。奇跡が起きたのだ。何と有り難い…。

海の精霊様と共に弱りゆく主人に打つべき手段もないままだったのに…。


危機が去ったのだ。その時の私は呑気にそんな風に思っていた。気を失ったままの我が君を部下の侍従に預けて寝室へとお連れしようとしたその時だ。


バタン!!!


荒々しく開いた扉から飛び込んできたのは武装した貴族院と近衛隊。まさか、この時を狙うとは。剣を抜いて身構えながら手薄である現状に唇を噛む。


「ハハハ。我が君はお眠りか。そのままずっと寝ていてもらって構わないのだ。この国はあるべき姿に戻るべきだ。私は救世主として涙を呑んでココに新国家を打ち立てよう!!」


剣を振り上げた馬鹿(ムーケン)は放っておいて仲間を呼ぶ。城内の者は殆ど我が君に忠誠を誓っているのだ。料理人も庭師もそして…。


「お主にこの国を預けたらすぐさま滅亡するわな。」宰相のエッケン殿とその私兵が雪崩れ込んできた。


膨れ上がった敵に、ムーケンが怒り狂って闇雲に攻撃をし始めた。


「邪魔をするなーー!!俺は俺はやっと認められる機会を得たのだーー!!」


それが合図だった様にあちこちで剣戟が繰り広げられていた。部下に預けた我が君を背に剣を奮う。これでもラドルフ殿に直々に教えを乞うていたのだ。


不利とみた敵が数をどんどん増やす。必死に防ぐも後ろにいる我が君を守る体制が仇となり傷が増えてゆく。失われる血が原因なのか奮う剣の力が落ちたのを感じ魔力を更に剣に乗せる。

更に体力が失われるのであと僅かしか持たない。が、騎士団が来るまでだ。

トラヴィス殿以下騎士団は精鋭揃いだ。

あと少し…あ!!

相手の剣が肩を貫く。利き手をやられ剣がポトンと落ちる。

もう、ここまでか。せめて我が君の盾に。


仁王立ちになった俺の耳に信じられない声がした。


「ふう。こんな事になるとはな。すまんな私の誤算だ。」


その声と共に広間は静まり返っていた。

見れば、全員が倒れていた。


ボワッ。

肩に熱を感じて視線を上げれば、我が君が肩に手を当てていた。まさかの治癒魔法??

何か変だ。我が君が違うような…。


若返っている?!更には髪と目の色まで違うではないか!!

覚めるよな蒼色が今は金色の髪と緑色の目になっている。これは…。


「生まれ変わったと言うのが近いか。元々はこれが本当の姿だ。我が君との絆が途切れたので力か戻ったのだ。」


そうか、だから威圧一つで全員が倒れたのか。でも味方まで。


「すまんな。目覚めたばかりで血だらけのお前を見たら理性が少し吹っ飛んだのだ。ま、全員無事だから心配するな。」


我が君が味方に治癒魔法を施して事態を収集して一人だけ犠牲者が出たと気づいた。


ドルタ帝国からの客人ランベル殿だ。憎い謀反人だが何故?


「犯人は俺です。裁くなら俺一人でお願いします。」軽い口調でそう答えたのはガランド殿で。まさかの仲間割れ?


「そうか。自由を得る為に牢獄に繋がれるか。」「ふふふ、まあそうですね。」


謀反人全員が駆けつけた騎士団に捕縛され連行された。


やっと片付いたと思った瞬間、窓から大きな羽音がした。


慶鳥に乗った妖精だった。


「こんにちは、王様。お願いがあって来ました。」



ーゲラン視点ー


一瞬だった。

威圧で全員が床に伏せてから、水の精霊様の様子がオカシかった。でもそれ以上に動ける様になってからはまるで。


「そうだよ、別のモノに近いよ。ま、これで悪党は一網打尽にしたから後は君たちで頼んだよ。僕は別の場所に用事があるから。」


倒れ伏せた教団や悪党たちは全員が水の生き物になってピチピチ跳ねていた。


「急がなきゃダメかな?」気の抜けたバレンの言葉にメゼルが一言。


「転移!!」


どうやら全員が、無事川へ帰れた様だ。


「さて、この子を本来の場所に連れてかなきゃね。」


我々はまだ倒れている髪の色の変わった元雪菜殿を連れて王宮へと向かったのだった。


ー雪菜視点ー


「分かったわ。海の精霊様。じゃあとにかく王宮へ行かなきゃだわね。」


『うん。もう僕は陸へは行かないから宜しくね。僕のリュウリンを握って海に向かって呼べば君の前にだけ現れるから。』


頷いた私は、慶ちゃん達が心配そうに来てくれてだのに笑顔で手を振る。


さあ、行くわよー!!




『じゃあね。さよならカザエル…。』

その呟きは海の風の中に消えていった。


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