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森に囲まれた!  作者: ちかず
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『雪星の雫』が枯れた?!


ーカザエル王宮でー


「「「王様ーー!!!」」」


悲痛な叫びが王宮に木霊した。



ーアーノルド視点ー


地面が揺れた…と思ったがそれは錯覚で空が歪んだのだった。周りを見れば、全員が床に伏せている。



ーギャビン視点ー


靄鬼の集団が突如、動きを止めた。

我々も突然重さを持った空気により、身動きが取れない。


それでも目だけ動かせば、空を飛ぶ丸鳥が落下して行くのが見えた。




ーそれぞれの空の下でー


空が歪んだ…。

全ての音がやんだ…。




世界に起きた異変は、人間も鳥や動物も。いや精霊や靄鬼までもに及んだ。

今や、動ける人間は僅かだった。




ー雪菜視点ー


目の前で火花が散った。

何?と振り返れば、サイラス以外の人が全員倒れていた。


「雪菜殿。お身体は大丈夫ですか?」

問いかけるサイラスの苦しそうな息遣いにギョッとする。

え?何が皆んなに起きたの?

まさかの、あの島のせい?!


サイラスがにじり寄る気配に振り向けば、口から血が流れてる。慌てた私はそっと手を添えて脈拍を取ると「ふぅ、もう大丈夫です。」との声がして見上げればいつも通りのサイラスだ。


「雪菜殿が触れた瞬間に、身体中にかかっていた不可思議な圧力から解放されたました。ありがとうございます。」


お礼とか言われても何のことか分からないけど、目の前に倒れてる苦しそうな船頭さん達は気になる。もしかして私が触れて回ったら良くなるの?半信半疑な気持ちのまま、皆んなにそっと触れてみた。


床に伏せっていた人々が口々に礼を言いながら起き上がると


「ありがとうございます。楽になりました。」と一斉に言う皆の顔色はようやく人間らしいモノになった。

でも、いったい何が…。


その時、碧色の光がチカチカする。形をとってなくても分かる。

碧ちゃん?!

形すら取れないなんて、ショックを受けながらそっと光に手を伸ばすと碧色がぼんやりとした塊になった。


ポト。


手のひらに落ちてきた塊は、イヤリング。

たった一つのイヤリングは、天使の羽根を模した可愛いモノ。


碧ちゃん?と心の中で話しかける。

微かな声がする。でも内容が分からない。


「雪菜殿。それを付ければもしかして…」

後ろからのサイラスのアドバイスに、なるほどと左の耳につければ。


『コレで声が届くわね。さあ、出掛けるわよ。秘密のドアの向こうで助けを呼んでるから。』



そう言った碧ちゃんの言葉に頷いた途端、私の目の前の風景が変わった。まるで転移。

ここは何処??

まさかの秘密のドアの部屋かしら。

狭い部屋なのに、異常に高い本棚が所狭しと林立している様子に確信が強くなったその時。

向こうの方から、話し声が聞こえて来た。

その内容が…。




『どうしよう。間に合わなかった…。もうやる事がないよー。』

『海の精霊様を助けたくて『雪星の雫』にまで手を出したのに失敗しちゃうなんて…』

『僕ら程度の妖精や精じゃ、もう保たないよ…ほら、崩れてゆくよ…』

「どうすれば良いのですか?私達に手伝える事は無いのですか?」

『もう無理。多分海の精霊様が完全に崩れ始めたから。前から少しづつ崩れていたのを王様が命懸けで止めてたけど…』

「え?王が…では我が王はいったい…」

『海の精霊様と王様は一緒だから。』



深刻な内容にギョッとする。

高い本棚の隙間から見てた小さな光は崩れかけた妖精や精たちとベルンの話し声だったみたいだわ。

妖精達は岩だったり、草や花なんかもいるわ。その真ん中にあるのが多分『雪星の雫』だとしたらもう…。


「雪菜殿。俺の知る『雪星の雫』だとすれば完全に枯れていると思います。そして恐らく…」


後ろからする声に振り向けば。サイラス!!

良かったぁ、サイラスがいてくれれば心強い。(貴方がいてくれる意味…それをこの間痛感したばかりだから。)


「そう言って頂けると護衛冥利に尽きます。

しかしこの現状は…」


私、妖精に効く薬なんて知らないし。

ベルン程の魔法使いでも無理だとすれば、何をすれば良いのかしら。

必死に考えても、何のアイデアも浮かばない。どうしよう…段々と崩れてゆく妖精達が目に映る。焦りにジリジリと焦がされる様な心持ちになる。

でも、良いアイデアなんて何もない。


思わず頭を抱えて考えていた私の胸がチリッと熱くなった。思わず手を当てれば、胸から小さなカケラがポロッと出て来た。


え?ええ???

真っ赤な石。


えーー!!何処から??

まさかの私の中から産まれた?!

焦る私をよそに、その真っ赤な石から光が溢れてそのまま崩れかけた妖精へと向かってゆく。

光が当たると信じられない光景がそこにあった。


それはまるで再生。


妖精達の崩れていた輪郭がゆっくり形を描いて完全に元の姿になるまで赤い光は石から溢れて続けた。

そして。仕事を終えた石はそのまま私の手のひらに中に溶けていった。


そこまで数秒。


あっという間の出来事に呆然としてるのは、私だけじゃない!!

ベルンも、もちろん妖精達もキョトンとしてるのに。


何故、サイラスだけ微笑んでるの??


「雪菜殿ならば全く不思議ではありません。祝卵様からも信頼されているではありませんか。」


あ、ありがとう。

でも、一言いいですか!!


顔……近すぎます!!

(最近ずっとだけど…なんなら再会してから難易度がアップしてる?!)


改めて言う事じゃないけど、貴方は日本では滅多にお目にかかれない程のイケメンだから。



そして、私は 干・物・だ・か・ら!!


ふう、ふうふう。


私が心の葛藤をしている間にも、元気になった妖精とベルンの話し合いが続いてるけど、ちょっと立ち直りに時間がかかったわ。。


話しの内容は枯れた『雪星の雫』と海の精霊の事。

深刻な内容だけど…私に一つ名案があるのよ!


「もしかして上手くいくかもしれない案があるの。それをやれば多分、『雪星の雫』を復活するかも…」


全員の目が希望と共に私の方を向いた。


自信はない。

でも…古代地図で前に見たから。


そんな私を察してサイラスがそっと手を握ってくれた。暖かい手に励まされて、少し笑った。


『最善を尽くすんだ。』


迷う私に、課長が以前言った声が聞こえた気がしたわ。そうよ。薬師としての私の決意はもう決まってるのだからやるしかない。



その時、

耳元のイヤリングがチリンと音がした気がした。




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