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森に囲まれた!  作者: ちかず
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活躍?!青汁…

 気になっては、いたのよ。

 顔色は段々と悪くなるし、食欲も減っていたし。


 でも。

 どんなに良い薬も。

 どんなに美味しい食べ物も。


 信頼関係がなければ、効果を発揮出来ない。

 だから、待つつもりだった。


 結果的にその判断は間違っていたけど。



 目の前に横になっているのは。


 リカルド。


 今朝、ベラの部屋の前で倒れているのをサイラスが見つけた。

 どんなに揺すっても、ピクリとも反応しないのを見てこれは一大事だと朝ご飯を作ってた私を呼びにきた訳。


 不味いわね。

 かなり衰弱してるし、目が覚めない理由がどうも身体の不調じゃないみたい。


「さすが雪菜だ!

 そうだよ。まー、呪いのようなものかな?」


 声のする方をバッと振り向けば、ジェラルド?!

 最近、ちっとも見かけないから心配してたのに。



「そっか。心配したんだー」


 ニヤニヤしてる?

 もう!!


「ごめんごめん。何か嬉しかったからさ。

 ま、いいや。

 それより、コイツ。

 コイツはベラの部屋へ侵入しようと何度も試みたからだよ。


 あのドアの仕掛けが何故か歪んで、呪いみたいになったのかな」


 ええーー!!

 ドアにそんな危ない仕掛け?


「だから。

 ドア自体は、眠り粉を使った簡単な魔法なんだよ。

 だけど、コイツの何かと反応してドアの仕掛けが暴走したんだ。


 たぶん、悪夢の中にいるよ」


 ジェラルドのその言葉に、アーノルドが反応した。


「悪夢の中…。

 そんな記述の本を読んだ事があるよ。

 もし、その魔法にかかればその中から出られないって言われてると」


 そ、そんな。

 ゆっくり仲良くなろうと思ってたのに。


 ベットに寝ているリカルドは、起きている時より幼く見える。


「ペペス。いま、助けるから!」


 ん?

 微かな声はリカルドの寝言かしら。


「『夢を救うハーブ』があれば…」

 アーノルドの呟きにハッとする。


「アーノルド!!

 それは何?どこにあるの?」


 食いつく私にアーノルドは苦り顔だ。


「御伽噺の世界だよ。

 世界一苦くて栄養のある葉なんて。

 そんな苦くて食べられる薬草はこの世界にはありゃしないよ…」


 苦くて。

 栄養がある?


 !


 もしかして…。


 私はそのまま自分の薬草園に走り込んだ。

 沢山増えた薬草は、鳥達が運んでくれた種も多いの。

 今ではその量はかなりのもの。


 この世界に来て理解した事がある。


 私にはどうやらチートがあるらしいのよ。


『植物辞典!』


 頭の中に、この世界の全ての植物の入ってるって分かった時の興奮!!


 あーー。

 こんなラッキーないじゃない!!


 そんな訳で薬草も、食材も増加中。



 は!

 そんな場合じゃなかった。

 実は、薬草園に生えた雑草に珍しいモノが混じってたから気になってたの。


 たぶん…コレ。


 青汁…(名前ついてないのよ…人間にはお初?)よね?


 コレの苦味は、日本の青汁の数十倍らしいから。

 だから、私でさえ味見はしてない。


 私は青汁を摘むと台所へ走り込み、ソレを鍋に入れて煮込み始めた。

 あの様子だと、リカルドの体力はかなり消耗してるから持たないかもしれない…急がなきゃ!


「雪菜殿。まさかソレを?」


 臭いかな?


 鼻をつまんで喋るギャビン。

 ドアから覗いているアーノルドなんて、部屋に入って来やしない!


 そんな臭いかしら?

 コレ…。


「もちろん。コレは身体に良いのよ。

 悪夢に効かなくても飲ませる価値はあるから!」



 煮込む事数時間。

 かなり濃厚な汁を濾して、コップに入れる。


 アレ?

 周りに誰もいない??


 臭いにダウンして、アーノルドは倒れたって。

 ジェラルドだけ平気そうに近づいてそう教えてくれた。


 リカルドの部屋に入る。

 ベラの家は、ちゃんとリカルドの部屋も作ってくれた。だから、きっと…。


 青汁を飲ませる為に、そっと、布に湿らせて口元へ。

 だけど、つぅーと緑色の汁は口から流れ落ちる。


 ダメだわ。

 やっぱり意識のない人間に飲ませるのは難しいもの。


 どうすれば…。


 !


 は!

 もしかして…コレ…まさかの口移し!!!!


 あーー。

 ダメよ。


 完全干物状態の、三十路のオタクにそんなスキルなんてないもの!!


 あー。どうすれば…。

 久々に、マジに困ったわ。



 うーん。


 ん?

 振り返ると…ジェラルドと目が合う。

 私がニコリと笑うと、ジェラルドへと近づく。



「え?

 まさか俺の事見てる?


 口移しとか人間のやる事でしょ!!

 妖精に何させようと…あーー!

 コップ持って、近づいて来ないでよーー!!



 あー!!

 分かった。分かりましたよ。


 じゃあ…魔法使います!!」


 ジェラルドの身体からキラキラとしたものがリカルドへと降り注ぎ、気づけばコップの中身は空に?!



「うぅー!!!!

 苦ーーーーー!!!!!!!!!!!!」


 結果…

 リカルドは、叫びながら飛び起きました。



 やっぱり…苦いみたい。

 もしかしてコレって。

『夢を救うハーブ』じゃなくて、苦味で叩き起こすハーブじゃ…ま、結果オーライね。


「感謝してよね!

 俺が魔法使わなかったら、口移しの刑だったんだよ!

 これに懲りてベラの部屋へは入ろうとしたい事だね」


 やや怒り気味のジェラルドは、リカルドに迫った。

 でも、弱々しいリカルドは首を横に振る。


「私は諦めない。

 それしか。もう道は残ってないのだから」

 掠れた声が呟く。


 もしかして…ソレって。


「ペペスの事?」


「!!!!!」

 声にならないほど驚いたらしく、俯いていたリカルドがバッと顔を上げた。


 真っ白な顔が、真っ青に。

 そのリカルドに、何故かフラフラになっているサイラスが尋ねた。


 いつの間に…部屋に?


 ドアの入り口には、ギャビンさんの姿も!

(アーノルドだけは、倒れたままらしい)


「理由をキチンと話して欲しい。

 我々は、この家に拾われた仲間なのだから」


 再び俯いたリカルドは、暫くそのまま動かなかった。


 あ!!


 私は、素早くリカルドに近寄り首元からソレを摘み上げた。



 ミミズ?!


「雪菜ーー!!

 それ、それは闇の虫だよ!!

 悪夢を食べにリカルドにくっ付いてたのか。


 は、早く捨ててーー!!」

 ジェラルドの叫び声が響いた。


 へー。


 コレが…闇の虫ねぇ。


 じゃあ…プチっとな。


 ん?

 まさかのドン引き??


 嫌ねぇ。毒虫はプチっとするのが当然でしょ。



 何でよ!リカルドまでドン引きとか。



 そりゃ…

 私は、可愛い女の子と違うわよ。

(今は可愛いフローラの姿だけど、ね)



 田舎育ちを舐めるなよ!!

(コレで日本では、干物状態が加速しました…黒歴史…)



 あ!

 笑った。


 始めて年相応に、柔らかく笑うリカルドを見た。


 自虐ネタもたまには良いわね…。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪夢に青汁はふつう思いつきません! 笑いました。 毒虫はぷちっとするのが当たり前、って男前です。
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