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森に囲まれた!  作者: ちかず
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探せ、『秘密のドア』時間切れとなる前に…。


ーベルン視点ー


彼女の作る薬草の凄さは改めて言うにも及ばない。恐らくこの世界に於いて誰をも凌駕する力を持っているだろう。


だから、敢えて言いたい。


苦っっっ!!!


良薬口に苦しよ!って元気よく笑う彼女は魅力的だがそれでもこの味は堪える。

周りを見ればもんどり打っている仲間に涙目で「声を出すな。」と囁く。


***



素早く被ったお面の効果が現れるまで数刻かかる。彼女はそう言ったのだ。


薬草とお面。

両者は全く別物に聞こえるが、元は同じ。

霊樹から作られたモノだ。


霊樹に生える霊芝。要するにキノコを基にした薬草。

そして、その霊樹から作られたお面。

『大森林』に居を構える雪菜殿の畑に突如生えたのが、霊樹だそうだ。みるみる大木になったとか。


『アーノルドがお面にしてくれたの。ゲルガーがそうした方がいいって。』


ゲルガーと言う名を聞いて、我々は改めて雪菜殿を見つめた。『闇の精霊』我々の国ではその存在は太古の昔に消えたと言われていたのだ。


とにかく、彼女の周りには精霊が沢山現れる。これの意味する事が今回のヒントになるかもしれない。直感的にそう感じていた。


『このお面は、皆んなの存在を感じない様にするモノ。えーと、うまく言えないけど空気の様にそこにあっても記憶にも残らない。そんな風に周りは思うモノ。

ただ…さすが霊樹だけあってお面をつけると酔うんだよね…』


『ヨウとはどの様な症状なのでしょうか?』

部下が尋ねれば。


『えーと、こっちは酔っ払い居ないのかなぁ?お酒に酔って訳わかんなくなる人の事なんだけど。』


『『『。。。』』』


黙り込む部下達。

酔うなど魔術師に有るまじき。絶対大丈夫だと躊躇う雪菜殿を説得してお面をつけたら…。


突然、服を全部脱ぎ出した。まさかの真っ裸!!


『ぎゃあ!!!』


真っ赤になった雪菜殿がサイラス殿に抱き込まれながら『これってノーカンだよね…』と何度も呟く耳が真っ赤になっていた。お面を外して取り押さえた部下が正気に戻って服を着た時にはサイラス殿が雪菜殿を抱えて部屋から出た後だった。 


全員が、固く薬草を飲む事を誓ったのだった…。



***


身体中を熱がグルグル回る感覚が薄れてホッと息をつく頃、近づいて来る人間がいた。

こんな場所に何人もの人間がいるなど詮索されても致し方ない。


面をつけた時に魔法は解けている。

このタイムラグこそがこの作戦の成否を握る鍵だと分かっていた。


賭けに負けたのか…。

この図書館内で魔力を放てば何が起きるかは分からない。だが、遥かなる昔より伝わる話として『図書館に仇なす者は図書館により排除される』と聞いた事がある。


図書館司書らしき中年女性を体術で落とすかと、身構えた途端。


くるりと踵を返して女性が遠ざける。


「おかしいわねぇ。何かオカシナモノを見たからきたはずなのに何も無いわ。私ってば幻でも見たのかしら。」


独り言に、ホッと息をつく。

ギリギリで賭けに勝ったのか、と。


ぶつかると解ける面の効果に、用心深く人を避けて地下への道を探す。焦るが時間がやたらとかかる。走り回る子供達が最大のネックになって地下への階段に着いたときには我々の注意力は最低になっていたのだろう。


地下へのドアを掴んだ途端、向こう側からドアを押す力を感じて部下の1人が床に転がる。


め、面が!!

転がった拍子に外れたのだ。


ドアから出てきた人間と目と目が合う。


「何者だ。何故こんな場所にいる?!」


「すみません。子供達がいなくて。かくれんぼを始めたせいで、行方不明になっていて。今、探し回っているのです。」


予め決めておいた理由を話す部下は落ち着いた状態だ。我々は壁にピッタリと張り付いて二度目のミスを防ごうとしていると。


「困りますねぇ。この場所へ入った者は一応本部へお越し頂いているのですよ。お子さんは後で係の者が探しますから。」



相手も引かない。

どうする?第二手段を使うしかないのか?


そう、考えていた時遠くから悲鳴が、重なって聞こえてきた。


「なんだ?!どうしたのだ?!」


部下は、相手が手首にはめている魔道具で連絡を取っているのをじっと見つめて逃げるタイミングを測っているようだった。


「なに?!海に光柱があるだと?しかも緊急警報の第二弾が発令されただと?!何故こちらにすぐさま連絡しないのだ!!」怒る相手の注意が逸れた。


海の光の柱。

緊急警報第二弾。


それは恐らく雪菜殿とトラヴィス様達陽動作戦が予定通り進んでる証拠だ。


動く時だ。



俺が目配せをすると部下が再び面を被った。そのまま、全員でドアの向こうへと消える。


「あれ?ここにいたオヤジはどこ行った?

おい、お前子供を探すオヤジを見なかったか?」


「いえ。こっちに来た人など誰も居ないですよ。だって誰一人、隠れて我々の前を通り過ぎる事なんで出来ないのですから。」



ドアの向こうから聞こえてくる声が困惑してる様子に俺は歩を進める事にした。彼女が全てを終える前に『秘密のドア』を見つけなければ。



タイムアップまであと少し。

真っ暗な通路を進む我々の目には、くっきりと廊下の隅々が見えている。


特殊な魔道具は、俺の得意技なのだから。


『透視メガネ』


魔力を込めたその道具は、暗闇を感じない。

だから、知らなかったのだ。


我々を見つめる目があるのを…。





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