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森に囲まれた!  作者: ちかず
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国営図書館へ…。


ー国営図書館ー(ベルン視点)


砂漠の精霊様から聞いた内容が何度も頭の中を掠める。この国の精霊様の現状。

それがあまりに驚くべきモノだったからだ。



***


『精霊と呼ばれるモノ達全てが、このカザエルでは力を封じられる。原因は海の精霊だろう。更にあの古代魔法だ。』


古代魔法の事なら俺にも少し理解出来る。

しかし、海の精霊様の影響がこのままでとは思ってもいなかったのだ。


『古代魔法を解け。それが出来ぬうちはヴァイなど助けるなど夢のまた夢よ。』



***


我が国の誰もが利用出来る国営図書館は、世界一を誇る巨大なものだ。カザエル建国の歴史は古くそれ故に世界最古の書物がここにはある。


だが、今回の我々の目的は別だ。


『秘密のドア』


その存在は、公的には無いとされている。

しかし…。


「いや、あるよ。聖騎士の記録に残っているから。」とあっさりサイラス殿に言われた時のショックはラドルフ殿辺りが一番大きかったようだ。


「我が国の防御能力はかように杜撰なのか…」と呟いていたしな。


簡単に漏れた情報から杜撰さは窺い知れた。

だが、事はそう容易くは無い。

何せ、図書館には多くの警護員と管理者がいるのだ。表向きは、巨大すぎる図書館での迷子の防止となっているが、本当は閲覧禁止の本を守っているのだ。

(閲覧禁止地区はなんと、地下3階分にも及ぶ膨大なものなのだ。)


一番の難敵は、図書館の敷地に埋め込まれた魔法を遮断する魔石だ。当然、盗難防止だ。

更に入り口では一人づつ身分確認チェックも行われる。そこはゾスタの変装の出番だが、

この魔石のせいでそれも意味を為さない。

しかも、我々はある意味指名手配を受ける身で侵入するには裏の手しかない。


その名も『狂魔石』。


違法なその石は、本来魔術師を尋問する際に使われる。もちろん、使用後その魔術師はその名の通り狂う…が。

コレを持っていると、魔術遮断の魔石すらも狂わせるのだ。要するに変装魔法が展開出来るのだ。


「良いか、コレは時間との戦いだ。図書館の内部には遮断魔石は無い。勝負は入り口までだ。」


全員が固唾を飲んだ。

『狂魔石』は魔術師の天敵だ。

シールドしてある状態でも、見ただけで発狂する者が出るほど恐れられている。


それがテーブルの上にあるのだ。

全員の視線を浴びながら、懐にしまうと、「私が持つ。全員固まって歩けよ。」と青ざめた表情の部下達に命令を下すと、図書館へと向かった。


雪菜殿達と分かれて数分後、巨大な図書館が見えてきた。全員に緊張感が漲る。


図書館の敷地ギリギリで、そっとシールドを外す。


ギィィィィーーン…。


途端に鳴り響く金属が擦れ合う不愉快な音が頭の中を揺らす。耳の奥が痛んで血が流れ出している感覚と共に足元がフラつき出す。それを防ぐたった一つの方がある。


それは…[セリブリ]


雪菜殿から渡された画期的なその薬草の名だ。彼女はそんな風に呼んでいたが、我々は単なる臭草(ソウヤ)と呼び、虫除けのみ使っていたのだ。まさか、精製する方法が違えば、そんな凄い薬草になるとは…。


『私もこっちの世界に来て、[セリブリ]が気付薬になるって気づいたのよ。しかもめっちゃ強力で使用を躊躇うような、ね?だから本当に使っても、大丈夫なの?』と。


成る程…。

口に入れた瞬間から、『狂魔石』の痛みや音など全く気にならないくらいの苦味に思わず涙腺まで緩む。


それでも、一歩を踏み出せたのは間違いなく臭草のお陰だろう。身体を駆け巡る魔力を無造作に弄られている感覚に目眩を起こしそうになる度に、臭草をまた一口噛み締める。


に、にがぁ…。


また、一歩進んだ。


(この後、一週間ほどの間、口がバカになり何の味も臭いもしなかった。臭草恐るべし…だな。。)


ドアにたどり着いた時には、全員が臭草でヘロヘロだった。



「お名前とお住まいをお願いします。」


優しげに警護員が尋ねた。


そう、今の俺の姿は美少女だ。ゾスタ母さんに連れられて、な。しかも、沢山のボーイフレンド(仲間の変装だ…)と一緒に。


「セビタナ家のクランスと申します。この子は長女のメリーで、彼らはその友人です。」


ゾスタが口を動かしているのに見て、心底感心した。あの臭草があってよく話せるなと。


と、そんな風に目線だけ向けている間にも、限界は迫っていた。身体中をダラダラと冷や汗が溢れ出て意識が混濁する。こんなんじゃバレる。そんな風に恐怖感がこみ上げてきたその時、不審そうにこちらを見る警護員が目に入った。不味い!!見つかったか?!

更に、もう一人の警護員まで近づいて来た。

絶対絶命か…と身構えれば。


「おい。検問所から増員の要請があったぞ!何でも逃亡者ラドルフ様が現れたんだとさ」


向こうからやって来た警護員のその言葉でこちらを見ていた警護員全員の気が逸れた。

ホッとするあまり、身体中の力が抜けそうになるのをグッと堪える。


やっと検査も終わり、気力を振り絞って集合場所である2階『草花』の閲覧コーナーに集まった。


ペッ!!!

ペッ!!!!!!



物陰に入った途端、全員が一斉に臭草を吐き出したのを見届けて、ようやく俺は『狂魔石』にシールドをかけた。(無論、その後臭草を吐き出したけどな。)


「全員、口は無事か?」

と、尋ねると。


「無事なんでしょうか?正直、舌があるのさえ忘れそうな程ですが喋るのは可能な様です。」とゾスタの相変わらずの一言余計な返事に胡乱に頷き、次なる作戦の為の薬草を一掴み取り出した。


無謀…俺もこの作戦を側から見たらきっとそう言っただろう。

でもあの雪菜殿の作る薬草だから。と不思議に前向きに思えるのだ。



さあ、行くしかない。

全員がソレを口に含んだ…





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