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森に囲まれた!  作者: ちかず
218/233

再会…そして。。。


ーランザク視点ー


胸が急に熱くなる。

何かに引っ張られる様な感覚に全身がゾワリとした同時に、目の前の精霊様が叫んだ。


『いたぁーーー!!雪菜を見つけたわよ。さあ、行くわよぉ!!』


少女の羽から碧色の光のカケラが辺り一面を覆い尽くした途端、目の前の風景が変わっていた。


砂漠ではなく、港町へ行く街道だろうか?

見覚えのある風景に誰かの慟哭が響いていた。


また、あの名前だ。


「雪菜ぁーー!!!」


その悲痛な叫びの横であの少女(精霊様)が大男を足蹴にしていた。乱暴な仕草に抱きかかえている怪我人も転がるかと思えば。


怪我人は、すっくと立ち上がっていた。


「あれ?碧ちゃん?!

あ、分かった。これって夢よね?」


見た事のない少女だったのに、何故か懐かしい感情が湧き上がる。

その言葉と同時に転がった大男からまた違った叫びが漏れた。


「雪菜殿ーー!!よくぞ、ご、ご無事で!!」


途中まで叫んだところで、またあの少女(精霊様)に今度は頭を蹴られて大男は転がった。


「ご無事の訳ないでしょ!!服を見てご覧。雪菜の血が付いてるじゃない。

雪菜、雪菜ってば。惚けるのは後にして懐にあるモノを見せなさい!!」


雪菜と呼ばれる少女は、怒鳴る碧と呼ばれる精霊様に抱きついていて離れない。それを後から来た少年(精霊様)がかなり乱暴に引き剥がした。


『雪菜よ。我々が縛られたせいで其方の側から離れて済まなかった。さあ、落ち着いて懐のモノを出せ。』と、言えば何故か雪菜と呼ばれた少女は頬っぺたを抓った。


「痛い。うーん、解せないわ。砂漠の精霊が謝るとか無いものー!!あ、夢でないとすれば幻影ね。サイラスの幻影もあったのに、あんなに簡単に転がったのだからアレは幻影じゃなく偽物かぁ…」


転がっていた大男は立ち直ってこちらを見ながら、感無量な顔で立ち尽くしていた。

この男…何処かで見たような。。あ!!まさか聖騎士のサイラス殿では?


『お主のワシに対する考え方は得と分かった。後にゆーっくり話をするかな。さて、いい加減この混沌は後にして懐のモノを出せ。

いいか、これは現実だ。お主の変装は解けたのだ。』


渋い声の少年(精霊様)が話す言葉には少し刺を感じるが雪菜と呼ばれた少女は違った様だ。


「え?まさか…」と言ったきり自分の身体をペタペタと何度も触っては確かめて、ジッと固まったかと思うと、やがて身体が震え出していた。


「本当に、本当なのね。私、再び雪菜に戻れたのね。サイラス。碧ちゃん、砂漠の精霊。助けに来てくれてありがとう。ずっと待ってた。時々、信じられなくなりそうだったけど、優しい人達が助けてくれたの。

そうだ、懐のモノってコレ?」


ギョッとした。

恐らく、トラヴィスとベルン殿も同じと思う。真っ赤に変色したいたが、アレは我がカザエルの秘宝。しかもかなり昔に失われたと言われていた我が王家の宝と呼ばれるモノ。



『なるほど。それが其方を助けたのだな。ま、雪菜の血が付いたのだ、本来の力を取り戻したのだろうな。』落ち着いた少年の声に反応してのは、大男…もといサイラス殿で。


「雪菜殿。ご無事で本当に嬉しく思います。しかし…何故俺を庇ったのです?我々聖騎士は貴方を護るモノ。俺は自分を許せません。」


握りしめた拳から血がポタリポタリと落ちる。悔しさが滲む告白だった。


「ごめんなさい。庇うとか考える前に飛び出していたの。サイラスのせいじゃないわ!!」

そう言うと、彼女は血の滲む拳を両手で包んで頭を下げた。


「や、やめてください!!謝るのは俺のほうです。偽物に騙されて、庇われて…」


俺も元は騎士だ。彼の気持ちはよくわかる。庇うべき存在に逆に庇われる。それは自分の存在意義を失いかける出来事だろう。


『諦めよ、サイラス。此奴はそんな人間だとお主こそが知っておろうが。

じゃが、雪菜よ。お主もその肝に刻め。其方の存在は沢山のモノに大切に思われているのだ。其方が沢山のモノたちを大切にする様に、だ。』


雪菜と呼ばれた少女は、じっと少年(精霊様)から視線を逸らす事なく聞いて暫くしてゆっくり頷いた。


「ごめんなさい。何をしたか、今、はっきり分かったわ。そうよね。薬草なら役に立つけど戦うのはサイラスの領分ね。私ってば傲慢だったかな。。」


サイラス殿に抱きついてそう言った彼女は、その後小声で彼に何かを伝えていた。

それは誰にも聞こえないが、彼の表情を見ればお互いが納得したのだと理解した。

暫く抱きしめ合っている二人を微笑ましく眺めていたら、急に雪菜殿がバタバタし始めてサイラス殿から離れたと思ったら。



「あーー!ランザクさん!!

良かったぁ無事だったー!!!」

と、叫んだのだ。


へっ?

俺を知ってる?!


全く違う姿、形だが、やっぱり…「サイか?」


何度も頷く彼女の顔に、一瞬…俺を再び立ち上がらせてくれた少年の面影が重なった。





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