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森に囲まれた!  作者: ちかず
216/233

ルーベントの恩人…現る?!


ーアーノルド視点ー


帰り着いた騎士団は、休む暇もなく働きづめだった。それは『ゼゼレブ』から一人でも多くの民を救いたいとの切なる願いからだ。

意外だったのは、ランザクだ。彼はこの隊の副隊長だったのだ。彼が騎士団にいたとは意外だった。私にとり彼は先帝の姉の一人息子である。それだけで。

滅多に会うことのない従姉妹だったからだ。

理由は簡単だ。教皇の動きがオカシイ事もあり、王家の血筋を護ると言う大義名分を持って隠されて育てられた(別の名を監禁とも言うが…)

だが、お陰で生き延びてくれて良かった。兄上と俺しか生き残れなかった我が王家の貴重なる生き残りなのだから。


汗だくになり次々と治癒魔法を施す彼の顔色は蒼白だった。無論、彼も王家らしく高い魔力を誇るのは分かってはいるが、無理が祟っているのは一目瞭然だった。


ドタン!!


音のする方を振り返れば、今回編成された騎士団の隊長が倒れていた。

これでもう残っているのは、ランザクだけだ。

止めたい…。しかし民の事を思うとそれも出来ない。力になれない自分が悔しいが解毒の魔法など使えない。苦しむ民の声が治療院に鈍く響く。



誰か!!



思わず俺はその時そう心の中で叫んだのだろう。

それをする意味するを知らなかったから。自分が半分は人間でなくなった意味をその時心底、知る事になるのだ。


フラッとしたランザクを支えた俺の耳に突然懐かしい声が飛び込んで来て驚いて見れば。

すぐに何故かと疑問が頭をグルグルと駆け巡った。何故なら彼は雪菜とレサンタへ向かったはずだったからだ。もしや、雪菜に?!焦る俺にいつもの甲高い声が響いた。


「もう!!自分が緊急信号を丸鳥に持たせたんじゃないか。雪菜が早く行ってやれって言うからピテレに頼んだら意外に早く着いたよ。」


え?

緊急信号?!そんなモノ送った覚えは…とそこまで考えてハッとした。なるほど、心の叫びが人間でないモノたちに響き渡ってしまったのか(ダダ漏れとも言うが…)

しかし、そんな風に怒るブルーノの手にある『解毒剤』をみて全ての考えが吹っ飛んだ。


ひたすら有難い。これで民が救われる。そう思ったおれの予想に反して何故かブルーノは騎士団から手当てを始めた。

何故??民ではないのか?

体力も忍耐力もずば抜けている騎士団は最後でいいのでは?

そんな疑問に答えたのは別の人物(?!)をみて固まることになる。


『ククク。さすがのアーノルドも自国になると判断が狂うね。この人達はギリギリまで『ゼゼレブ』に近づいたんだよ?毒にやられているよね?!

しかもしかも限界まで魔力を使ってる。この場合、緊急性の高さで治療の順番は決まる。』


えっ?本当に『ピテレ』なのか?!

以前は小さな身体の小動物だった気がするんだが、今では腰の高さまである身体は立派な神獣っぽい風体の上、眩しい覇気まで発していたのだ。

彼は単なる妖精のはずでは…。


『もう!!僕の事は後で。それよりアーノルドも早く治療の手伝いを』


そう、ピテレに叱られた俺はすぐさま手伝いをする。

『解毒剤』さえあれば俺にも出来る事はある。



それからの日々はひたすら忙殺されるも充足したモノだった。何せ『治療薬』があるのだから。

暫くして、再び目覚めたランザクも騎士団も寝る間を惜しんで働いてくれた甲斐もあり、多くの民が元通りの体調を取り戻していった。


「アーノルド、王子?」ようやく向き合う時間が出来て改めてランザクと向き合うと呼び名から困る具合で彼も照れが隠せない、


「普通のアーノルドだよ。俺こそランザクをランザク様って呼ばなきゃかな?」俺がそう返せば、笑顔満面で彼は答えた、


「そんな訳ないだろ?この国を救ったのは君の仲間なんだから。それより色々ありがとう。俺は今日初めて胸を張って君達の前に立てるよ。」と。


なるほど、そんな気持ちを持っていたとは。

まさか彼が兄上と私に対する罪悪感を持っていたとは思わなかった。そりゃ俺たちはこれまで何度も命を狙われて毒を盛られた事も多数で。実際、兄弟を失っているし父上や母上も恐らくは…。

だが、彼こそ閉じ込められて…とそこまで言いかけたところで彼に止められた。そして彼が話すと内容に、俺は彼が全く違う見解を持っていたと知ることになったのだ。


「いや、あれは閉じ込められたんじゃない。隠れてたと言うのだよ。我が身惜しさに隠れて…。だからこそ今日は胸を張って言える。さあ、ここは任せて彼女(恩人)の元へ。」


今の自信に満ちた彼とは違い、久しぶりに会った時はオドオドした雰囲気だった気がする。改めて思う。


人は変われるのだ。と…。


何度もなく言われてるその言葉を今日ほど実感する日もない。


「ふふふ。灯台下暗しだな。お前こそその代名詞だよ。ほら、お仲間がお待ちかねだ。

我が国の恩人は今頃恐らくカザエルの騒動に巻き込まれているはずだ。我々の分まで恩人を頼んだぞ、アーノルド。」


気づけば、いつの間にか治癒院に来ていた兄上にそう言われて頷けば、ブルーノがつっこむ。

「雪菜に恩返しするなら俺をお忘れなく!!」と口を尖らせて膨れっ面だ。

ブルーノの言いかたはいつも通りどこか巫山戯た雰囲気だが、目をみて違うと気づいた。

真剣な瞳に、恐らくトトラルで、何かあったのだなと。背丈は縮んでも大人びた雰囲気の彼からそんな風に感じていると。


「ブルーノ殿、ピテレ様。お世話になりました。お二人のお陰で我が国の民は救われました。心よりお礼申し上げます。」

改めて王としての兄上が畏まった顔をして礼を述べ頭を下げた。慌てて俺もブルーノに頭を下げると。


「これは『オゼルの大刀』と雪菜の力がすべてです。かの魔剣はその全てを掛けてこの国を護りました。雪菜と再び訪れる日まで彼をお願いします。」

ブルーノの硬い表現に彼への強いリスペクトが伺えた。



しかしその願い馬当然の事だ。

彼もまた、我々の恩人なのだから。

兄上も力強く頷いていた。


出立の時刻が迫っていた。。


ピィーーー。


呼んでいる。

二人の台詞が終わるや否や甲高い鳥の声に窓から聞こえそう思って窓の外を見れば、慶鳥が群れをなしているではないか。


ピンと来たのは、ブルーノも同じらしい。


「雪菜に何かあったのかもしれない。すぐさま飛び立とう。」

そう言って躊躇いもなくすぐさま窓から飛び出した俺たちは慶鳥に掴まれて、空高く飛び立つ。

ふと下を見れば、我々に向かって地上では沢山の民が手を振っていた。

沢山のありがとうを込めて。


元気になって良かった。

我が国の王子に生まれて一番幸せなひとときだったかもしれない。


慶鳥に運ばれること数時間でもうカザエルの上空とは…さすがは慶鳥だ。

雪菜達はやはり既にカザエル入りしたのか?そんな事を考えていたら…少し古びた小屋の上で突然慶鳥が我々を手放したのだ。


え?

ええーー!!!


当然、落下あるのみ。

かなりの上空からの落下では生命も危ういと慌てて風魔法で抵抗して落下速度を落とす。


ブルーノとピテレにも同じく風魔法を使おうとしたら既に着地していた。

屋根を貫通したようだ。ブルーノはどうやら身体一つで突き破ったらしい。


なるほど、中々の体術の使い手なのだと感心するわけにはいかない。何故なら無事着地した俺たちが小屋に入ってみた人物は雪菜ではなかったのだ。

しかも。

誰、このおっさん?!

更に他にはベットに寝ていて恐らく病人二人のみで。



どこに来たんだ?!と、混乱する我々の右手の扉が開いて一人の男が入ってきてホッとする。それは良く知る顔だったからだ。


「アレロア?!」


「来てくれて凄く助かったよ。ブルーノ、早速この二人を診てやってくれ!!」

俺の叫びに一顧だにせず、ブルーノへ頼むアレロアの大声にベットに寝ている二人の状況は、差し迫っているのだなと理解した。


しかし、ここは雪菜のところではなかったのか…。

少し気落ちする俺はこの集団がこれからの雪菜の命運の鍵を握るとは知らなかったのだ。



ブルーノの顔をチラッと見れば患者二人は大丈夫そうだ。暫く一緒に治療をしていたから表情も読めるようになった。


「もう、大丈夫だ。でも、ギリギリだったかもな。」

そんなブルーノの呟きに答えたのはおっさんで。


「そりゃ良かったよ。俺のせいでどこの宿屋も薬屋も断れていて困っていたんだ。」


え?

このおっさん…まさかの犯罪者なのか?!


しかし、ブルーノから大丈夫だと聞いて、髭面をボリボリと掻いてホッとする表情のおっさんは悪人には見えなかったが…



ホント誰なのだ…?!





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