意外な一面?
うちの子達の芸を披露しようと思ったのに、サイラス達の大反対に合って中止に。
じゃあ…どうやって選ぶの?
そしたら、ギャビンさんから何故選ぶのがと質問が。
で、理由をお話ししましたよ。
「喧嘩になったのよ。皆んな自分こそ!って引かないから。
慶ちゃんが、役に立ったのを見て悔しかったみたい」
。。。
沈黙が痛いわ。
「慶ちゃん……」
あら?
小声で何か呟いてサイラスが絶句しちゃった。
困った私が振り向くとギャビンさんまで目をそらすし。
ふぅ。どうしよう。
「では。
僕が決めましょう。
伝令は、その用途毎に分けてはどうでしょう。
大型は、翼鳥。
小型は、丸鳥。
夜間は、宵鳥。
駆鳥と、慶鳥は別の任務をお願いしては?」
ええーー?
ア、アーノルド??
アーノルドが突然、的確な判断を披露したからびっくり。
王子様気質かと思ったのに。
意外…でも、ものすごく腑に落ちる内容だわ。
確かに宵鳥は、梟っぽい子で夜に強い。
翼鳥は、鷺に似てるのよ。
大きな羽は、沢山の荷物持ちにぴったり。
丸鳥は、小さな真っ白な可愛い子だけど、その数だけは群を抜いてるからチョコチョコ頼むのにはぴったりね。
うーん。
私は、アーノルドの表面しか見てなかったのかしら?
そう思うと、何か悔しい。
自分もそんな風に見られて嫌な思いをした事があるのに。
もっと、ちゃんとアーノルドを見ようと思う。
もちろん、ギャビンさんやサイラスも。
どう?と鳥達のリーダーの慶ちゃんを振り返る。
慶ちゃんは頷いたから大丈夫みたい。
ん?
サイラスが深刻そうに俯いてる?
何か気に障ったのかしら。
私は気になって、側に近づくと、突然ガバッとサイラスが頭を下げた。
何!!
びっくりしたぁー。
「雪菜殿。
折り入って、お願いがあるのです。
実は連絡をしたい人達がいるのです。出来たらその丸鳥さんをお借り出来ませんか?」
必死の表情のサイラスに、もちろん頷いたわ。
白ちゃん(丸鳥のあだ名)を数羽呼ぶ。
「あのー。出来たら遠くまでお願いしたいのです。」
遠慮がちなサイラスに私は、首を横に振る。
「あのね。
白ちゃんを舐めちゃ困るわね。
この子達は、物凄いのよ。
例え数百キロでも軽々飛べるわ。慶ちゃんがそう言ったもの。
ね?大丈夫よね?」
おー。白ちゃん達がバタバタ抗議してるわ。
怒ってるの?
「なんと。
普通の丸鳥なら数キロも不可能なのに。
雪菜殿の丸鳥は、特別なのですね…」
ギャビンさんの一言で納得。
そうなの。白ちゃんは凄い子なのね。
私がナデナデしてると、群がって我先に頭を突き出す。
ふふふ。
癒されるー。
こんな癒しは、おばあちゃんと住んでいた山で懐いた鹿達以来だわ。
それから、薬屋の支度を皆んなに手伝ってもらい始めた。
まずは、売り物の選定から。
一つ目は
薬箱(セット品)
次に単品は…
傷薬。
腹下しの薬。
風邪薬。
湿布薬。
虫刺されの薬。
基本的なものね。
それと
まだ、無理だけど将来的には。
ハーブティー。
薬草茶。
栄養剤。
なんかも出したいなぁ。
でも、やっぱりこの森から出ないで薬屋するのはちょっと難しい。そんな話もしたら、サイラスから名案があると言われた。
あの手紙かな?
白ちゃんに何度も頭を下げて頼んでたもの。
きっと大事な手紙よね。
返事が来た時、とっても喜んでたもの。
そう言えば、リカルドってば部屋に篭って食事の時しか出てこないのよね。
畏れ多いとか言ってるけど、あの目。
私の勘では、恐らく違う理由があると思う。
切羽詰まった顔に見えるのよ。
あ!
白ちゃん達がサイさんからの手紙持ってきたわ。
手紙を受け取ると、私は家へ向かった。
ゆっくり読もうと思って。
サイラスにも返事が来たみたいで後ろから追いかけて来た。
とにかく、ハーブティーでも入れて相談ね。
ーバーラド村ではーサイ視点
サイは最近忙しい。
もちろん、少し前に比べれば幸せな忙しさだろう。
あの一件以来『ルスタ』からは見捨てられた。
いや。
見捨てて貰えて良かった。
不安はあるけれど、森の魔女から薬屋を開くと連絡があって村は活気づいていた。
あの『風邪薬』ならば大評判間違いないと。
慶鳥のご加護か、国も盗賊も誰も手出しのない平和な毎日も後押しをしている。
今日もユキナ様から手紙が届いた。
魔女の名前は、『ユキナ』と言う聞きなれないものだった。
彼女の手紙は、いつもものすごく詳しい手紙だ。
その手紙から、真面目な人柄や積極的なものも見え隠れする。
いつか…お会いしたい。
?
今回は手紙の内容がいつもと違うようだ。
どうやら。
このバーラド村に客人が来ると言うのだ。
なんと!!
その人達が力添えしてくれると。
えーと。名前は…
えええーーー!!!!
まさかの。
ジェマ様とアレロア様とは…。
何がどうやったら、薬屋に聖騎士のお二人から力添えと、なるのかと考えた込んでいたら後ろから突然、声を掛けられた。
「緊張しないで大丈夫。
俺たちは別にとって食いやしないから!!
あ、はじめましてアレロアです。
こっちのお嬢さんはジェマさんだよ。痛!!」
振り返った私の目の前に、目の潰れそうな美しい男性と小柄な可愛らしい女性が。
だが、
問題はその可愛らしい女性が、アレロア様を蹴り飛ばしている事で。
「お嬢さんとか言うな!!」
ジェマ様…鋭い蹴りの数々。
でも。
こ、攻撃的過ぎる。
目が点な私や村人を置き去りに二人の戦いは続いていた。
それは、空から再びユキナ様のお手紙を携えた鳥が現れるまでだが。
アレ?
今回は、丸鳥じゃない…。
よ、よ、翼鳥??
あの幻の…。
固まる我々をよそに、お二人の戦い(戯れ合いだとアレロア様は主張していたが…)は、一瞬で終わり翼鳥へと目を向けていた。
そして、ジェマ様が地面を蹴り飛ばすと、その身体は空高く飛び上がり、翼鳥を掴んで降りてくる。
いったい、何が…。
あまりの出来事に村人誰も間抜けヅラとなる。
ジェマ様は、全く表情を変えることなく、抱き抱えた翼鳥から手紙を取り出して私に差し出した。
宛先は…『お手伝いの二人と、サイ村長さん』
私は、少しの間気が遠くなった。
(許されると思う。お手伝い…聖騎士のお二人にお手伝い呼び…ユキナ様…)
最近独り言の増えた私を、心配そうにバーナが見ていた。




