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森に囲まれた!  作者: ちかず
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ギャビン視点①

 ー会議中ー


 雪菜殿は、早寝だ。

 中身はどうやら大人の女性であるらしいが、身体はまだ子供なのだから当然だろう。


 だから、私の提案は夜中の会議の招集とした。



 場所は居間。

 皆が集まったところを見計らって防音を含む結界を張る。

 私の結界を破るのは、例え『ゼロ』と言え無理だろうとサイラス殿の提案だ。



「こうやって集まるのは、初めてだな。

 あの『慶鳥』の事。そして精霊石。

 他にも雪菜殿の能力がフローラ殿とは違う事は間違いない。


 その上『ゼロ』だ。

 まずは情報を擦り合わせたい」

 私の言葉に頷いたサイラス殿がまずは発言した。



「雪菜殿は、異世界の方だ。

 感覚の違いも大きいが危機意識があまりにも脆弱なので、私が護衛をしようと思う。


 無論、聖騎士の立場もあるがこれだけは譲れない。例え聖騎士の地位を失おうとも…」


 覚悟の決まった顔のサイラスに対して、アーノルドは憂鬱な表情だ。


「俺は、正直…戸惑っている。

 ご存知の通り、俺の専門は植物だ。専門的知識は誰よりもあると自負している。

 あの種たち…。

 絶対、絶滅種を復活させたい!!


 更に言えば、あの『精霊樹の葉』を見た今。

 もし、『精霊樹』が発見されたら…望みは更なるものになっている。

 俺でもコレなのだ。

 もし…。

 我が国を始め、各国がコレを知れば、必ずや彼女を狙うだろう。だからサイラス殿が護衛につくのは賛成だ。

 俺も微力を尽くそう…」


 誤解されがちだが、アーノルド殿はああ見えて学者なのだ。特に植物学者としては、他国まで知名度を持つ。

 普段の雰囲気に騙されがちだが、本来の彼は観察者である。


「私として、雪菜殿の希望を叶える手伝いをしたい。この世界は、治癒魔法に頼ってきた。その為弱者には厳しい。

 雪菜殿は、どうやら薬草などに関して特別な能力を持っていると思う」


 私の発言に頷いていたサイラスから雪菜殿の能力について、驚くべき話しがあった。


「彼女は、恐らく植物の能力を見分ける力。そしてそれを見つけ育てる力を持っています。

 簡単にまとめましたが、それらは本来なら精霊の領域。その点が気になります」


 サイラスの話はまだ続いた。

 異世界で元々持っていた可能性が高い事。

 他にも、治癒に関する知識も豊富な事。

 そして…。


「とにかく、料理が美味いのですよ!!

 食べた事のない料理は、感激するばかりで」


 そこまで言うとアーノルドが乗り出してきた。

「賛成!!俺本当は、食べ物に拘りないけど雪菜殿のは違う!!」


 興奮するアーノルドの話の途中で、感知能力にパルスが入る。


 何かが結界を破ろうとしてる?

 まさか…『ゼロ』なのか。


『ふふふ。

 お前たちにしては、上出来な結界だったね。


 サイラス。久しぶりだね。

 雪菜の寝てる隙に悪巧みかな?」』


 現れた人物に、全員が慌てて跪く。



 その人物は…なんと精霊リュカ!



 我がドルタ帝国の西側にある連なる山々の精霊である。

 恐らく、この世界最高の力を持つ精霊だろう。



 まさか…こんな遠くまで。

 精霊は普段、自分の場所を離れない。

 力が強ければ、稀に離れるがかなり力を消耗するからだと聞いた事がある。


 ならば…なぜ?


 頭を下げたままで考え込んでいると、話は雪菜殿の話題へと。


『あの子はね。

 フローラじゃない。コレを忘れないでね。


 そして、この『大森林』の精霊は既に彼女に接触したから。ふふふ、分かるかなぁ。

 まぁ…ヒントはここまで、ね?


 この場所に何故君たちがいるのかを今一度考えてみる事だね。

 残念…もう時間かぁ。

 あー、雪菜に会いたいけどまだ今度の楽しみにするかな』


 我々にヒントを残して、精霊リュカは消えた。


 その後、『ゼロ』についての話に事が及ぶとサイラスから意外な提案があった。


「何とかして仲間に連絡を取るので『ゼロ』の事はそれまで待って欲しい。

 もう少し時間をくれ」


 サイラスの苦々しい顔に頷いた。


 その後、これから展開について細々と話し合いをして解散した。


 部屋へ戻った俺は、手のひらの中のものを見つめた。


 精霊リュカは、私にだけコレをくれた。

 誰にも気付かれずに。


『転移石』



 名前は聞いた事はあるが、滅多に手に入らないもの

 そして、特にここ数十年は全く見かけない希少石。


 去り際に私だけに聞こえるように彼はこう言った。



『これを何処でどう使うかは、君次第。

 だけど、覚えておいて。大切なところで使わないと後悔するよ?さぁ。君はどうするかな?」


 意味深な言葉を何度も推敲するうちに、私は()()別れ際のヤツの台詞を思い出していた。


 私が王位に就いた時からの側仕え「エドル」

 希少なる能力『転移』を持つ辛辣な青年。


 その彼の別れ際の言葉は、幼い頃から彼を知る私には本心とは思えない。


 だが…味方とも。


 自信がない。

 今更だが、自分の王としての意味を何度も思い返す。



 今は遠い故郷(ドルタ帝国)を想い出しながら。

 脇腹に付いた深い傷跡を触れた。

 まるで何かの戒めのように感じるその傷跡を…。


 そんな私の想いを溶かし込んで夜闇は深まってゆく。

 私は、その石を悩みながら首に下げた。

 迷いと共に。





 翌朝。

 雪菜殿の美味しいご飯の後、テーブルに座っている我々の前に雪菜殿が立つ。


 どうやら用事があるようだ。



「あのね。

 バーラド村の薬局作戦の事だけど。連絡係が必要だと思うの。


 だから、皆んなにどの子がいいか考えてもらいたいのよ」



 ?

 全員が何の事がさっぱり。


 とにかく、雪菜殿の後についてゆく。


「じゃあ皆んなを呼ぶから!

『ピィーー!』」


 バサ、バサバサバサーーー!!!!




 全員が今の事態に頭が追いつかない。

 何だ?

 これ…



「はーい。

 ご挨拶よ!!

 No.1から順に並んで!!

 最後のNo.5は集団だからきちんと乱れないで列を作ってー!」



 我々の前には、5種類の鳥が整列して並んでいる。


 No.1は、慶鳥

 No.2は、駆鳥(くちょう)

 No.3は、宵鳥(よいどり)

 No.4は、翼鳥(よくちょう)

 No.5は、丸鳥(まるどり)



 だと思うのだが。

 No.4までは、伝説の鳥を含め滅多に見かけない。


 いや。


 それ以上にこんなに鳥を従える雪菜殿は…。


 しかも最後のNo.5は、空を真っ黒に染めるほどの数。


「この子達に、伝言役や薬草取りを仕込むつもりなの。

 ね!皆んな、やる気いっぱいよね?」


 雪菜殿の問いかけに、全員(No.1〜No.5まで)が頷く。

 しかも、胸を張って役目を待っている風情でだ。


 あの様子だと、張り切っているのは間違いない。


 間違いないが…。

 我々が戸惑って固まっていると雪菜殿が更に驚くべき事を言い出した。



「仕方ない。

 じゃあ、一人づつ芸を見せてね。

 拍手が多かった子が、伝令係ね。

 一番は、No.5からね!」



 。。。


 それからの大混乱を私は忘れない。

 違う意味で…




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