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森に囲まれた!  作者: ちかず
199/233

カザエルへ出発の日は。。。


ーカザエルへの道のりでー


雪菜殿は小さな馬車に乗っている。

騎乗しているのは、三人に見える。

が、事実は違う。


朴是騎士団

光輝騎士団

燐煌騎士団

壁護騎士団


各騎士団から前後に護衛が隠れて付いている。


そこまでならば、影ならば誰もが気づく。


しかし、この護衛軍団は普通では無い。


ドルタ帝国から影と騎士団が数名

ルーベント精霊強国からも同じ状況だ。

もちろん、お互いに連携しながらのチームワークは手慣れたモノ。

恐らくトトラル辺りから警護についていたのだろう。


だが、最大の問題はその他の護衛だった。

騎士団のメンバーも各国の精鋭も誰も知らぬ護衛…。


沢山の精が集まっているのだ。

それも、精霊の影がない単なるその辺にいる精である。

普通なら意志も持たない。


何故…。

兄上ならば、正解を知っているだろうか。

我が国へ導けとの命に従い、ここまでは予想を超えて上手くいってる(かえって不気味なほど)


王家の血を引く俺ならば、影に溶け込めると兄上は俺を大切にしてくれる。

誰にも知られぬ様に匿ってくれるのだ。


馬車を見つめる俺の目に光が見える。

大丈夫だ。成功してるのだから。


何も気にする事はない。

胸の鼓動がおかしくても、

彼女の笑顔を見ると痛みを伴うのも気にする事はないのだ。


兄上。

兄上…兄上。


馬車の横に一頭の馬が駆け寄る。

騎乗の男の目線が俺を見つけた気がしてギクリとする。


要注意との警報が鳴る。

俺はそのまま影へと溶けた。



ーベルサーク視点ー


長らくこの仕事をしている。最善を常に探し最高の結末を齎す。


今回も、誰であろうと揺るぎなく束の間の忠誠を誓い最善を尽くす。つもりだった…。 


ご主人様を見送って台所へと向かう。

料理長は長年チームを組んでいる仲間だ。

冷静で優秀なハズの彼の調子は最近誤作動している。


「ご主人様は出かけられた。そちらはどうだ?」


久しぶりにみるむくれ顔がある。

どうやら見送りに行かせなかった事を恨まれているらしい。

お互いプロではなかったのか?

感情に左右されるなど、有り得ない奴なのに。


「フン。お前さんの考えている事は分かってるさ。とにかく報告をせねばな。その為にここに残ったのだから」


嫌味を混ぜながらも仕事は完璧だった。

慌ただしく出かける彼女が残したモノ。


大量の野菜(大半は庭の畑にある)

大量の果物(今は樹々に鈴なり状態)

大量のお菓子(様々な菓子がある)

大量の…。


彼女と祝卵様の畑は一晩で一年分くらいの収穫高を記録した。

その上、台所で大量の菓子を仕込んで料理や乾物を作った。

(乾物と言われるモノはこの世界にはない。それが意味するところは考えたくない…)


「当然、カラザに卸す在庫分もストック済みだ。安心しろ」


雪菜様のされた事は、実はソレだけじゃない。


塀をグルリと囲む植物は彼女曰く『食虫植物』だと笑った。


ショクチュウショクブツ。。


「これで防衛も大丈夫ね?」とサイラス殿に確認しているも彼も困っている様子だ。


後から発覚した事だが、この食虫植物は相手を選んで敵ならば襲い掛かる。

蔦を伸ばして塀に巻き付けられた影を何人確保した事か。夜回りなど不要になる。


「それより前の机の上の品物こそ、大丈夫か?」


それは大量の魔石だった。


「旅すると溜まるのよねぇ。重いから助かるわぁ」そう言った後、机の上にてんこ盛りで魔石が載ってる。。。


意図するところは明白だ。

反論をしようとして、またもや次を出された。


薬だ。

噂の救急箱が何箱も重なる。


「もし、拒否するとまだまだ出すわよぉ。

。。。

ね、ベルサークさん。

もしあのザルゼが来たらコイツで追っ払って。

魔石も薬箱もアイツを黙らせる力はあるハズ。だから隠して欲しいの、不在を。

アイツに知られたくないのよ」


逃げ道を塞がれた。

辞表も自費での弁済も許されない。ご主人様のきっぱりとした決意を前に、呆気なく降伏したのだ。


「この家を守ってね」

そう言われる事のなんと幸せな事だ。


「仰せのままに」と頭を下げるとご主人様の発作が始まる。


セバスチャンだか、執事最高ーと叫び出したのだ。


もう、慣れた。



その夜、一人部屋で寛いていたら、ふと今朝の出来事が蘇る。

そして、自分が知らぬ間にニヤけた顔になる。


「じゃあ、ベルサーク。行ってきますー!!」



行ってきますの言葉がいつまでも耳の奥に残る。


「お帰りなさい」

そうご主人様が、言える日まで最善を尽くす事にしよう。


いつもの通りに…。


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