何故かカザエル行きが決定?!
編集致しました。
毎回で申し訳ないのですが、読みやすいようにと内容は変えないように編集を入れさせて頂きました。
お読み下さる皆さんのアクセスに毎回とても励まされております。また、ブックマークや評価をつけて下さった皆様に前に進む力を頂き書き進めております。
本当にありがとうございます。
長くなりましたが、カザエル編はもう少しスピードを上げて進めて参ります。また、お読み下されば幸いです。ちかず
ー雪菜視点ー
『魔剣の作り手』
確かに文字はそう書いてあった。
二度見しても、変化はない。
本が別の本になるのは異世界仕様なのね…って呟いたらサイラスが変な顔してた。
中身も本物みたい。
だって、目の前のグレナガさんが興奮で真っ赤になってるんだもの。びっくり…。
そう…ここまでは良かったのに。
グレナガさんに言われて懐に入れっぱなしのあの拾った石みたいなモノが『リュウリン』を出したら周囲の様子が一変したの。
特に名前聞いたサイラスの顔がサッと曇った。
(見逃さないわよ〜滅多に笑顔を崩さないんだから…普段は。)
そのサイラスが小声でバレンに何か呟くとバレンは頷いて外へと出て行った。静かに行われているバスなのに緊張感がね。ただ事でない。
しかも、グレナガさんまでとうとう笑顔に!!!
しかも変なテンションで浮かれてるの。
でもね、何故だろう。
笑顔が似合わない…気がする。
(笑顔が一番って定説を覆したわ…グレナガさんある意味やるわねぇ…)
私がいる事をすっかり忘れたグレナガさんはそのまま本を読み出しては、本棚に走って次の本を広げるのを繰り返していた。
私が取り出した『リュウリン』には手も触れない。
「雪菜とやら言ったか。
いいか、ソレ誰にも渡すなよ。
まぁコレを持てる人間なんか限られているが。
あ、少し待ってくれ。コレはたぶん少し見通しがついた…ん?いや違うか。ほう、なるほど!!」
ダメだ。こりゃ完全に本に囚われたわ、グレナガさんってば。こう言う研究者見たことあるもの、日本でも。こうなるとたぶん完全に私を忘れてると思うの。
私は、残ったクッキーなんかを置いて静かに外へ出た。
サイラスが焦った顔で近づいて来た。
そう言えば外に出てたわね?
「雪菜殿。今、ベルサークから来客の連絡が入りました。少し面倒な事になっている様です。戻れますか?」
コクコク。
もちろんよ!!あのベルサークさんよ?
無敵な執事ベルサークさんに太刀打ち出来ない来客とか怖すぎでしょ。すぐ帰ります!!
私の言い方にサイラスが含み笑いをしながら、馬の上に引っ張り上げた。
え?行きは歩いて来たのに馬どこから??
納得です。
ベルサークさんの手配によるモノかぁ…、
すっごく急いでるのよね?!
だって猛スピードだもの。。
街中を早駆けで馬を操るサイラスの手際は恐らく名人級なのよね?
でもね。
乗り手が、落第級の私よ?!
高いし揺れるし。
何よりお尻がぁ、お尻がもげちゃうよ。
そりゃ人より蓄えたお肉が守ってるけど、痛いーー!!
だから到着した時は馬からサイラスが抱きかかえて飛び降りてくれた。
とってもありがとう!!
恥ずかしがる余裕も何もない私に、何度も詫びてくれたけど大丈夫です!!
近すぎるーー!!
そんなに顔が近くなくても大丈夫だから!!
え?顔が赤いから余計具合悪んじゃないかって?!
あーーもーーー!!!
誰かコイツに三十路の干物の取説をお渡し下さい!!
無理だから。
顔、顔がぁ、
「サイラス様。ご心配は分かりますがそれでは雪菜様もお困りのご様子。
このままでおりますと、何かあったかとお客様が駆けつけて来られます。
まずはお入り下さい」
と、ベルサークさん。
最高執事ベルサーク様!!!
ついてゆきます…素晴らしいヘルプをありがとうございます!!!
玄関近くの小さな部屋に通された私達は、その時やっと事態が急変してるって理解出来た。
深刻な様子のベルサークさんに口元に手を当てられてそのまま黙ったからだ。
ドアの外からはドカドカと足音がする。
「おい、この屋敷は客をいつまで待たせるんだ?だいたい、あの有名なホットケーキとやらを出して持て成すべきだろ!!」
短気丸出しの怒声に宿屋の人たちが詫びを言いながら、もう一度部屋へ戻って欲しいと訴えていた。
「いやだね。だいたいこの屋敷の中を見たいと言ってるだろ!今見せろよ!!」
むっ。
何様が来たのよ…ま、何様でも嫌な奴で決定してるけど。
出たい衝動が顔に出たらしくベルサークさんに首を横に振られた。
「これはザルバ殿ではないですか。お久しいですな」
お?誰か乱入?!
「ラザンガ!!!お前のその鼻は犬並みだな。うまい餌さえありゃどこでも首を突っ込む。でもな、このレサンタで魚の流通は俺が一手に引き受けているんだ。
お前が手を出すならば、容赦はしないぞ!」
ラザンガさんがもう一人の来客なの?
嫌な奴決定戦、優勝者はザルバとか言うおっさんでいいわね。
いちいち、めっちゃムカつく言い方ね。
『お前たち、ここで騒ぐなら帰れ』
え?ここでまさかの乱入したの、砂漠の精霊が?!
「な、な、なんだお前は。
そんな威圧しても無理だぞ!!俺はザルバ…」『名前など聞いてない。ここは俺の領分だ。帰らないならばこうなる…」
。。。
何?
何したの??
まさか、ザルバさんを砂に変えちゃった?!
暴走二号にしても、それは不味い。
私はドアのノブに手をかけた。
これ以上黙ってられない!!!
「ひゃあーー!!!、
こ、今回は帰るが次は覚えておけよ。
それから主人に俺の言ってた事を伝えろ!!!」
ドタバタと凄い足音が遠ざかる。
ふぅ。
ガチャ。
へ?
押そうと思ってたドアが思いもかけず開いたので、当然私はそのまま…。
ん?
お腹に腕が生えた?!
「失礼。
雪菜殿。サイラス様。
もう、私しかおりませんので別の部屋でお話しいたしましょう」
目が全く笑ってない笑顔のラザンガさんがいた。
バレてたらしい。
ここで隠れてる事。
ん?
ラザンガさんの後ろにいるのは、ボディガード?!凄いムキムキだけど。
『コイツは大丈夫なんだな?じゃ俺は行く』
ムキムキがそう言うと空気が抜けた様に萎んで美少年が現れた。見覚えある美少年は砂漠の精霊みたい。
え?あのムキムキはまさかの変身したの?
疑問を完全無視して砂漠の精霊の姿は消えたみたい…うーん。やっぱり自由人ね。。
その後、何故か私を抱えたままのサイラスにそのまま客室まで運ばれたました…なんで?!
「無理をさせましたので償いです」
。。。いや、償いってこれも罰ゲーム臭いゆですけど。
ふぅ。
丸テーブルにお茶が出て落ち着いた時には、ラザンガさんが厳しい顔でこちらを見ていた。
「どうやら、雪菜殿は思ったより幅広く活躍される予定だったのですね。しかし、魚へ手を出される前には是非ご相談頂きたかった」
魚って食べる前に言う必要があるの??
と、不思議に思う私にラザンガさんが説明した事はレサンタならではの事情だった。
まず…
カザエルの魚は先程のザルバさん以外取引出来ない(理由は何代も前の祖先がカザエルの王族の一人だったらしい…)
新商品の発売には許可がいる。
そして、極め付けはあの魚売りがモグリだったって事。
魚売りは、私の蒲鉾を出店で売った為に街中が大変な事になったらしいとか。
日本では有り得ない商売の実態に、ひたすら驚いた。自由経済の恩恵の中にあったからか実感が出来なかった。
「恐らくザルバは法外な違約金を請求するでしょう。あの蒲鉾の作り手が雪菜殿だと言いながら街中で売り出しておりましたので」
えーー。
あの鋭い目の売り子め。
なんとはた迷惑な。
「雪菜様。これは私どもの手落ちです。料理長は辞表を提出しました。私も同じ考えでおります。申し訳ございませんでした」
え?
深く頭を下げるベルサークさんに戸惑いサイラスを見れば苦虫を噛み潰したような顔でいるし。
まさか、最高執事に責任を押し付ける訳じゃ…。
「わかったわ。
私も決意しました。カザエルへ行って王様に販売許可を貰ってきます。
その間、二人の辞表とかは受け取りませんから。この宿屋の留守番をお願いします!!」
肩を竦めたサイラスは最初から私のする事が分かっていた様子だった。
ベルサークさんは目を伏せがちにして「承りました」とまた頭を下げた。渋々の様子でも納得してくれて良かった。
私の性格、お見通しかな?
張り切ってカザエル行きを決めた私は、色々サイラスに相談する。
そんな私達の横でラザンガさんが微かに笑ったのに気づく者は無かった…。




