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森に囲まれた!  作者: ちかず
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リュウリン?!


ーグレナガ視点ー


「ゴ、ゴホン!!」


埃だらけの本棚をひっくり返して探すが目的のモノは見つからない。本棚の一番上にしまった筈だと思ったのだが。


チラリと振り返った俺の目に『ペーパーナイフ』の姿が目に入る。あの女が何か囁いてから威圧こそ無いが力を失ってる今でも息苦しさは変わらない。だが、鍛冶屋の勘が何度も叫ぶ。


急げ、と。

間に合わなくなる、と。


コレが本体じゃないのは承知の上で何度も思うが、コレ自体でもこの世界に二つとないモノだろうと。あの女は知らなかっただろうが、コレは完全なる分身だ。

要するに、全く別の刀に本体の魂のカケラが入ってるだけなのだ。

恐らく本体と対で作られた訳あり。

はぁ…自分がコレまで避けてきた間違いなく厄介事だと理解しながらも何故か受け取ってしまった。


自分の手に余るかもしれぬ、との予感は久しぶりの事だが舐めるなよ。俺は決して屈しない。諦めとやらに屈するバスもな…


ん?

扉を叩く音がするが、人の気配が無い?


「入れよ」返事を気軽にした。なにせ人外ならば身構え無くていい。俺にとって人こそが厄介モノなのだからな。


『普段は許さないが、今回に限りお前に預けたのだ。分かっているのか?!』

突然、そんな怒声を浴びせながら入って来たのは、黒い姿の男。

肌の色ではない。

身体全てから、真っ黒に見えて輪郭さえ分からないが、確かに男の姿でと分かる。

驚かない。

人外はこんなのが多いからだ。


『なんだ、俺の正体も分からないのか?コレならばバンブルの方がマシだったか…』


またもや飛び出した『バンブル』の名前と侮辱の連続。。


『バンブルはな。向かい合っても逃げなかった。完全体で出会ったのにだ。それをお前は…』

言われた内容の凄さも意味も鍛冶屋の俺だからこそ理解出来た。それだけに悔しさが募る。


しかし、目の前の人外の正体はいったい?!


『いいか、俺が来たことは彼女には言うな。そしてお前はこれから手を引け。お前ではダメだ』最後通牒にトドメを刺されたところで扉を叩く音が再び響いた。


「グレナガさん。お昼ご飯を持って来ました。入ってもいいですか?」


コロン…。 

その途端、先程の黒い男の姿が消えた。


「開いてる」

答えに扉が小さく開いてあの女が、入って来た。


「あのー。先日は無理言ってごめんなさい…しかも勝手に置いていって。どうしてもダメなら私…」「引き受ける」「へっ?」「だから、引き受けると言ってるのだ!!」


俺の大声は聞こえているバスの女の顔には驚愕の表情が浮かんでいた。


「あ、ありがとうございます。あのー、もし良ければコレ召し上がりませんか?」


テーブルの上に手に持つ籠の中身を広げようとした彼女の手が「あら?」と言ったまま止まった。


「すみません。私ってばガブゼまで置いていっちゃったんですね」


。。。

やはりか。

『オゼルの大刀』のガブゼだったのか、あの黒い姿の男は…。


テーブルに並べられたモノたちの旨そうな匂いに考え事が霧散する。

「あの。頼んだ癖に生意気ですが、お腹空いては考えも纏まらないと思うのですが…」


「ふん。お前もまだならそこに座って食え」


奇跡的に二つある椅子は以前にまだ注文などを受けていた時のモノだ。


「お好きだといいのですけど。サンドイッチと言います」


ん?聞こえてなかった。何故ならば、只管夢中で貪り食べてたからだ。

旨い…こんなに旨いモノは食った事がない。

無言で食べる俺の横でニコニコしながら食べてるこの女の名前はなんだったか。


「雪菜です。春川雪菜と言います」


口から出ていたらしい俺の疑問に彼女が、答えた。


「詳しく説明しても良いですか?」

依頼を受けるのは久しぶりだが、それにしても雪菜の説明は今まで聞いた中でも格別だった。

。。。

不味いな。

まさかそんな無茶振りを『オゼルの大刀』にしていたとは。

恐らく力の全てを注ぎ込んで踏ん張ったが故に本体を保てない程追いつけられたのか。


と、なるとあの本は必ず要る。

どうする…。


「あの本とは何のことですか?」


「『魔剣の作り手』という本だ」

考え事をしながら呟けば。


「これでは参考になりませんか?」


!!!

まさかの『古代地図』

古代に失ったと言われて久しいのに、まだ、現存していたのか?


「お願い。力を貸して」


マジか。本当に本当なのか…。


雪菜そう囁いた途端、『古代地図』は『魔剣の作り手』と言う名前に変わった。願った本人すらびっくりしていた。


でもこれで何とかなる。


。。。

「お前、何を持ってるんだ?」


堪らなくなり遂に俺が聞けば、本人はキョトン顔だ。


出して来たのは、まさかの


『リュウリン』


ついて来た騎士達も知っていたらしい。

海の精霊の身体にあると言う鱗。


唖然とする俺たちと真逆に雪菜は何の事かと後ろの騎士へと目線を送る。


だが、俺は一人ニヤリと笑っていた。

何故なら、今希望の光が見えてきたからだ。

ガブゼに言われた最後通牒をひっくり返す最後の手段が今、現れたのだから、な。


まだ、難問は山積みだが…。




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