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森に囲まれた!  作者: ちかず
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信じていいのか…


レサンタへ潜り込んだまでは、良かったが。親父の手のモノを躱すのは中々骨が折れる。

ゼーラン様から託された言葉を思い出す。


『リュカ様の行く末は、恐らくカザエルの精霊様が握っていると思う。雪菜様がご一緒だ。かの方に万が一の事もないと思うが…』


そうだろうか。

誰の目にも、リュカ様は限度を超えた様に見えるのに。

本当に…。


考え事はここまでの様だ。

何とかカザエル行きの馬車へ乗り込んだのだ。単なる盗賊になど邪魔させる訳にはいかない。絶対に、だ。



ーカラザ視点ー


これはもしかして悪夢の中なのではないか?

だってそうだろう。

チビ共を無事に大人にする。そんな希望がわいてくるじゃないか。


信じていいのか…。



***


「さあ売るわよ。沢山稼がなきゃ!!」


雪菜と街がとで売りっているのは、ダイハチグルマの上ある野菜とホットケーキ。

後ろの方には、護衛とかまでいる俺たちは最初遠ざけられていた。


ま、そうだろう。

浮浪児と美少女と聖騎士団だ。異色の取り合わせは人々に警戒感を与えるばかりで中々側にすらだれも来ない。


「うーん。これは客寄せするしかないわね。

んー。アレやるか」

「あれって?」

「まぁ、見てなさい!!めっちゃ沢山人を集めるわよーー!!」


何やら張り切った彼女が懐から一本の棒を取り出した。

棒で台でも叩くのか?


♪♪♪〜


その時の衝撃を俺は生涯忘れないだろう。


彼女が棒から出したのは、美しい音色で。

楽しげな音色は彼女らしさだが、人々は寄っては来ない。固まってる。


そりゃそうだ。

寄ってきたのは、別のものだから。


光って良くは見えない。

でも、さっき食堂で見た美しい妖精達の仲間に違いないのだろう。


音色が光となって見えているのかと思う様に雪菜の周りを光が飛び回る。楽しそうな光の乱舞に言葉を失う。


「枯れてた井戸から水が噴き出たぞーー!!」


「枯れてた樹々が一斉に花を咲かせたぞ!!」


「足の悪いじい様が突然立って歩き回ってるぞー!!」


沢山の叫び声が木霊する広場に駆け寄る人々。


「私にこの野菜頂戴!!」

一番前のおばさんの叫び声がキッカケだったと思う。それからの事はあまりに忙しくて覚えてないが数分で完売したダイハチグルマに未だ人々が押し寄せ「下がって!!もう売り切れですから!!」と叫び続けたせいで喉が枯れたのは確かだ。


「ね?サイラス。私の言った通りうまく売れたでしょ!!碧ちゃんだって作り過ぎたのは反省してるんだから。

ラザンガさんも引き取ってくれたし。めでたしめでたしね」


最後まで反対していた俺でも名前を知っている聖騎士サイラス様は渋々頷いた。

聖騎士サイラス様は、六人いる聖騎士様の中でも一際人気がある。誰にでも気さくて親切な彼の親しみやすさがその強さと相まって。伝説もいくつもある。


ある村を一人で魔獣から守ったとか。

重労働をしている人々に混じって十人力で働いて名乗らず消えたとか。

(その重労働は土手の修理で通常10日が1日で終わったらしい…)


「とにかく、いったん戻りましょう」

サイラス様は周りをキョロキョロした後、素早く宿屋へと戻った。


***


『顧客を得たのよ。碧ちゃんの野菜と私のホットケーキの専売特許を受け取って。そして、立派な振り売りさんになってね』


そんな言葉を信じて良いのだろうか。


手の中のお金を握りしめ路地裏へ急ぐ。

お土産に貰ったホットケーキをチビ共と食べる為に。


明日を楽しみに思うのはいつ以来だろう。

俺は帰り道を急いだ。。。



「おい、アイツらは関係なさそうだ。俺たちもあっちへ合流した方がいい」


「そうだな。やっぱり予言は本当だったな」


「お前たち、騎士団長ももうすぐ合流する。気を抜くなよ。我々カザエル騎士団の名を汚すな…」


そんな呟きを残して、影は消えた。



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