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森に囲まれた!  作者: ちかず
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執事は万能?!


ー雪菜視点ー


執事が万能って本当なのね。

まさかの大工の才能までもあったとは…。


大八車。


ベルサークさんにこんなモノ知らないと?と私の落書き見せたら…できました。

正に朝飯前でした。。。


「ところでこの様なモノをどうされるのです?まさかお嬢様が曳かれるおつもりですか?」


お、お、お嬢様?!

聞いたぁ?まさかのお嬢発言!!

あー、記念にスマホで取っておきたかった…。

地団駄踏む私にドン引きのベルサークさんを置き去りに暴れていた私に別の方向から声がかかった。


「それは私にもお教え願いたい」と。


興奮中の私の耳に、渋い声優さんバリの声がしてビックリして振り向けば。

イケオジです!!ラザンガさんです!!!

声まで渋いイケオジとは…やるわね。


「これは商売をする為です」


「ほう。それは大変興味深いお話ですな。何故、商売にコレが必要か伺っても?」


「えーと。子供でも扱えるし店舗を必要としなければ利幅が増えますから」


「おや、雪菜殿は商売にもお詳しい」

あら?

何となく、不味い雰囲気が漂って来た気がするんだけど。


「あのー。」行き詰まった私の背後に救いの神が降臨しました!!


「雪菜殿。朝食ですので食堂へどうぞ。おや、これはラザンガ様。お客様をご案内せずこんな場所へ迷われるなど…失礼しました。護衛の我が騎士団員はキツく叱っておきます」


アレ?救いの神じゃなかったの?

バレンってば、何となくラザンガさんをディスってる気が…。


「これは申し訳ない。扉の外には誰もおられなかったのでな。ま、」


ぐぅぅ。


あ、何とKYな我がお腹!!

こんな緊迫した雰囲気も察せられないとは、情けない。話の途中では…。


「いや、大切なのは雪菜殿のお腹ですからな。とにかく、食堂へ参りましょう」

完全に笑いのツボにハマったラザンガさんの笑い声の中、とにかく食堂へ向かった。


そうそう。

この万能な執事さんは、宮殿の物損を一晩ですっかり元どおりにしたから。

それを見かけて、大工さんだ!!と、感動した私のお願いを聞いてくれたのよ。

。。。

よく考えるとめっちゃ図々しい気が。いや気のせいじゃないわ。完璧にやらかした。。。


「雪菜様。お席はこちらに」


椅子を引いてくれたベルサークさんに小声で「色々ありがとうございます。」と呟けば

「それが執事の役割です」って。


おぉ、セバスチャンでないのが残念とか失礼な事を思った私を許して下さい!!

いや、この宿屋(心のでは常に宮殿一択です)は、まだまだ凄い人がおりましたよ。


「パンケーキ!!

昨日、ちょっとお話しただけなのに。凄すぎる!!」


テーブルをみて思わず叫んじゃったわ。

ハイスペックなコックさんは、ハムや卵焼きなどを添えて完璧な朝食を揃えてくれた。


「雪菜殿。昨日のお疲れは残ってませんか?」サイラスの質問に首を横に振る。

口は現在、大忙しだから!!


「良かったです。では朝食後に色々とご説明をお願いします」


アレ?

身体全部が優しさのみで出来てるサイラスが。もしかして怒ってる?!


顔は全然普通なのに、目だけ笑ってない。

怖っ。



「雪菜、野菜ちゃんと作ってきたから!!昨日のお詫びに沢山作ったよお」

碧ちゃん!!

貴方のタイミングは、いつも何故最悪なの。


ほら、サイラスだけじゃなくてラザンガさんまで凄い勢いでこっち見てるから。


「あ、あのね。これには色々考えがあって。

カラザ達が来てから詳しくは…」

「お客様がご到着されました」


また。このタイミング?!

この宿屋には変わった魔法がかかってるの?!


「雪菜。呼ばれたから来たぞ」

昨日、ゲルガーに言付けを頼んだら快諾だったから朝一に呼んだの。


「カラザ。よく来てくれたわね。良かった。ちょうど朝ごはんだからそこに座って」


私の右隣りを指させば、オズオズと腰掛ける。カラザの緊張感がこちらに伝わる。

懐かない猫の様なカラザが絶品パンケーキを食べようとした時、慌てて私は止めた。


「待って!!」

まさに口を開いた状態のカラザがガッカリした様子でフォークを下ろした。


ごめん、ごめん。

どうしても食べて欲しいモノがあるのよ。

私のポケット!!ここからが本番よぉ。

本来の機能が解放されるかどうかの瀬戸際なんだから!!



ーカラザ視点ー


聖騎士団から貰った伝言は。


「明日、朝一に宿屋へ来て欲しい」のみで。


桶は既に納品済みだ。貰った代金は彼女の言った通りだった。

だったけど…あれで良いのか?

桶にあんな値段はあり得ない。世間知らずのお嬢様のお恵みだろうか。



翌朝、悶々とした気持ちのまま宿屋へと向かう。敷地ごと貸し出す方式の宿屋はレサンタでも指折りの高級宿屋だ。

その為、滅多に貸し出しされない。あの日、偶然に金持ちが借りたと聞いてタイロを売りに寄ったのだ(僅かな望みに懸けて…)


コンコン。

緊張しながら、正門を叩く。


我々、路地裏に住む者たちは裏口しか使わない。もし、正門など訪ねたら今や命すら危ういだろう。間が辛い。

やっぱり揶揄われたのか。それとも…


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」執事が現れた。

(コイツ、普通の執事なんかじゃねぇよな。だって気の圧が半端ねぇもんな…)


「お、俺はゆ、雪菜によ、よ呼ばばれ…」

あー、壊滅的だぁ!!!

練習も虚しく噛んだ。


「カラザ様ですね。雪菜様がお待ちです。こちらへどうぞ」

何事もなかったように進む執事の後を必死に追いかける。

最後に開いた扉はいくつ目のモノだったか。あまりに多くて途中から数えるのをやめたのだ。


扉の向こうには想像もつかない様な大きなテーブルに食べきれない様な料理が沢山並んでる。あぁ、良い匂いだ。夢の中でもこれほどの料理見た事はない。


思わず緩む油断の中で雪菜は朝ごはんを進めてきた。ほ、ほんとうに?!口の中の涎が溢れないように口を結んで座る。

2日ぶりの飯だ。

もちろん、見たこともないモノだらけだけど。喉がゴクリとなる。


その時、雪菜が止めた。

やっぱりか。

やっぱりなのか。


揶揄いなのか、試験だったのに落第したのか。

ま、こんな料理を食べれると思った俺がマヌケなのだ。


「えーと。コレを食べて欲しいの。味見よ?」


皿の上には、甘い匂いを漂わせた別モノが。コイツが犯人か?にしちゃ、めっちゃ旨そうな犯人だがな。


「沢山あるから、遠慮しないでね」


当然、俺は夢中で貪った。

旨い!!甘い!!!フワフワのそれはまさしく雲の様で。あっという間に口から消える。するとすぐさま次を口に放り込むって方式だ。

ある程度食べてチラッと見れば、笑顔でこっちを見つめてる雪菜がいた。


あ、感想か…。


「もちろん、旨い…」


旨過ぎてうまく言えない。

とどのつまり、

あまりの衝撃に只管、只管食べ続けた。のみで。



だからだろう。

まさか…雪菜のポケットからこのテーブルいっぱいのホットケーキが繰り出されているとは知らずにいたのだった。。。






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