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森に囲まれた!  作者: ちかず
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資材置き場?

「だから!

 コレも貰い物なのよ、皆んながくれるから建築資材にしょうと思って」


 作戦は上手くいったわ。

 石に絵を描くってアイデアは、バッチリだったみたい。

 村長さんからの感謝の声が届いた時には思わず叫んだの。


 でも…。

 その後がね。


 新しい住人は何故か皆んなと距離があるのよ。

 身分差とか本人は言ってるけど、何か違う気がする。


「雪菜殿。

 聞いておられるか?


 ケンチクシザイとは、意味が分からないがココにある大部分はこの世界の中大変希少なもの。

 出来れば大切に使って貰えまいか」


 ギャビンさんの丁寧な物言いはようやく慣れた。

 私に敬語を使うなと言う割に本人は丁寧なのよね。やめてって言ったら、苦笑いでまたもや誤魔化された。


 あー。私の今までの人生で出会った事のないイケオジだから。王様と言うより戦士って言うのがぴったりのガタイと野性味溢れる髭がまた似合って。弱いのよね…この手のイケメンに。


 嫌な上司しかいなかったから。



 うー。

 あれを石垣の足しにするつもりだったのに。

 最初翡翠に似てるって感激したのも束の間。


 ホーク達(慶鳥のあだ名…オタク心を込めました!)ったら次から次へとあの翡翠似の石を運ぶから山積みになってゆくし。


 だから名案だと思ったのに!


 ?


 サイラス??


 震えてる?


「雪菜殿!!

 この精霊石はこの世界にとり貴重なるものです。

 お願いです。私が倉庫に仕舞いますから石垣にだけはご勘弁下さい!!」


 え?

 もしかして土下座?!


「やめてーー!!

 しないから!絶対しません、お願いだからサイラスやめて!!

 じゃあ、サイラスにこの石はお任せします。

 ね!これならいいでしょ!」


 サイラスの手を取って必死に立ち上がらせながら、焦ってたら次なる爆弾が!!


「ねぇ。雪菜。

 これってまさか『ラーラの実』?」



 アーノルドが持ってるヤシの実のそっくりさんは『ラーラの実』って名前なのか。

 やたら、コレを持ってくる子がいるから溜まって。


 硬いし食べ難いのよね。


 ん?


 また、何かスイッチ押した?

 アーノルドが今度は震えだしたし。


「雪菜。

 お願いだよ。この『ラーラの実』はこの数十年前に絶滅したと思われてたんだ。

 あ!

 こっちには『パララの種』?こっちにも『ブブ』がある。

 何!!


 これってまさか…」


 叫び続けたアーノルドが持って固まったのは…。

 最初に懐いた可愛い小鳥が持って来てくれた葉っぱ。

 不思議と萎れないから栞にしようと待ってたのに。


 いい匂いがするのよ。


「ふう。

 ここまでくると、逆に落ち着くな。

 雪菜殿。この葉っぱの名前は『精霊樹の葉』と言います。

 精霊が生まれると言われる『精霊樹』のその葉です。


『精霊樹』は誰も見た事はありません。

 その葉すら、おとぎ話で。

 創世記から伝わるものなので、アーノルドがあの様になるのも無理はありません。


 彼の国『ルーベント精霊強国』のシンボルですから。この『精霊樹の葉』は」


 ええーー!!

 このいい匂いのクローバーみたいなの?


 でも、枯れないから意味はあるのだと思ってた。

 だから流石にこれだけは、食べるのはやめたのよ。

(頭の中に食用だとパッと浮かんだのだけど)


 サイラスもアーノルドも何か様子が変だから、私は改めてギャビンさんにある提案を伝えた。


 前から考えてたの。

 もしかしたら…とね!



「あのね。

 私、薬売りになりたいのよ。

 この世界は風邪でも命を落とす人が大勢いるもの。

 だけど。

 この『大森林』の精霊も困ってる気がしてココからは脱出するのは嫌なの。


 で。

 考えたのは二つ。

 一つはあのバーラド村を薬売りの総本店とする。

 もう一つは、宅配薬売り。


 まあ…代金とか本当は要らないんだけど。

 食べ物が欲しいから食材と交換にしたいのよ」



 くっははは。


 ん?


 大笑い??


 振り返ればリカルドがいつの間にか、後ろにいてお腹を抱えて大爆笑してる?


 何で?

 あんなに大人しい雰囲氣だったのに?


 まさかの巨大猫かぶり??


「あー、苦しい。

 こんなに笑ったのは久しぶりだ。


 これほどの品々を持ちながら、物々交換の薬売り屋希望とは。


 もう、やってられないよ!


 俺はこれまで生きてきて信じた人間はいない。

 だから、本当も何もない人間として『ゼロ』と名乗ってきたんだよ。


 だけど、あんたの前じゃ『ゼロ』でいられないよ。


 俺はね。

 サイラス殿の言われるようにレサンタ国の人間じゃない。それどころか、ここへはある人間に雇われて探りに来たんだ。


 まぁ。スパイというところか…な。」


 リカルドってば。自嘲的に笑いながら、突然脱ぎ去った巨大猫を捨てて可愛い顔に似合わない辛辣っぽい雰囲氣でスパイと名乗ったわ。


 素敵…。


 本物のスパイ。


 さわさわ。

 あ!


 いや。あのね。

 ちょっとスパイを触ってみたかっただけだから!!


 し、下心とかないからーー!!



「あんたな。スパイとか言われて言う事ややる事がソレなのか?


 。。。


 。。本当に変な奴だよ。


 雇い主とか探らないの?」


 まあ。彼はダメダメなスパイ決定!



 だって…。


「雇い主の事は死んでも言わないのがスパイよ。

 聞くだけヤボよ。

 あ!もちろん取り調べとがしないし。

 だってねぇ。

 守秘義務は、職業人なら当然だもの。

 誰でも、仕事は責任持ってやらなきゃ!」



 あら?

 睨んでたサイラス達が座り込んだわ。


 どうしたのかしら?



 リカルドもお手上げポーズで苦笑いしてるし。


 ギャビンさんの方を振り向けば。



「大丈夫ですよ。

 ここは雪菜殿の家。我々は勝手に迷い込んだ者達です。


 ですがリカルド殿。

 覚えておいて貰いたい。


 雪菜殿に万が一にも危害を加える素ぶりが見えたら、私も彼らも黙ってはいない。と」


 ギャビンさん!!


 カッコいい。これぞ王様って感じ!!


 威圧感を感じのか眉間に皺を寄せてリカルド殿は頷いた。


「分かってるさ。俺だって命は惜しいよ」


 小声でそう呟いて。


 それから、とにかく資材置き場の整理整頓が先だと言う話になり倉庫に皆んなの手を借りて片付けた。



 もちろん、私は料理作り。

 最近凝っているパン料理。

 ジャムの種類も増えたからシチューを添えて。


 最近、寒くなって来たから恐らくもうすぐ冬。

 フローラの知識から間もなく冬支度が必要だと分かってる。


 さあ。

 薬売り屋はまだ難しいと思うからまずは、バーラド村の村長さんに頼まなきゃ。

 最近、相互理解出来るようになったしね!



 倉庫に一人片付けに残ったサイラスは呟く。



「ギャビン殿の威圧に耐えるなんて只者ではない。気配もそうだ。


 彼は純粋な人間なのだろうか。

 それとも…。


 とにかく、連絡を取らねば。

『ゼロ』が現れたと」







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