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森に囲まれた!  作者: ちかず
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この買い物…失敗?成功??


ー雪菜視点ー


ワクワクする思いを封印しながら、沢山の薬草を手に取る。でも、どれも違う。


あの時は…。


ルスタでの経験を今一度思い出す。

確か…

紫蘇やドクダミ。殺虫剤によく似た薬を散布して、靄鬼を遠ざけたけど。あれは『大森林』の精霊の加護があればこそらしいし。


トトラルの精霊は、弱っていて。

そして、リュカは…。


だからこそ、ドルタ帝国へ靄鬼が進出し始めたのね。ルスタも『大森林』の精霊が弱ったところを狙われたんだと思うし。


あ、そう言えばこの国には精霊はいないのかしら?ルーベントにも居なかったから国ごとに精霊が存在してる訳じゃないのよね?

私の頭に、ドルタで迷子になった時に見た絵がフッと頭を過った。


「雪菜とか言ったか。お主何を探しておる?」


店主のお爺さんの言葉に、ハッと我にかえる。えっと大切な事を思い出した気がするけど、何だっけ…。


「おい、トリップするのも大概にするもんじゃ。ワシの声が聞こえておるか?」


「す、すみません。夢中になると人の問いかけが聞こえない時がありまして。私が探しているのは、紫蘇やドクダミと言った殺虫剤に使う薬草です。

もちろん、ここにも市場にもあります。でも…」


「ふん。精霊の加護なしでは意味なしか。」


え?

お、お爺さん?!


「長い長い間生きておると、色々物知りにはなる。だから、気にするな。

大切なのは、今必要な精霊の加護じゃな。カザエルには海の精霊がおる。

ま、最近では滅多にお目にかかれぬがな」


レサンタには…。

そんな疑問は顔に現れていたらしい。お爺さんはそのまま答えてくれた。


「本当は、精霊など珍しいモノではなかったのだ。珍しいモノにしたのは、誰なのじゃか…。

アレらは生まれては消え、消えては生まれる。そんな奴らよ」


ん?

物知りって、博学過ぎない?!

このお爺さんは、いったい…。


不安になってジッと見れば、お爺さんの目の奥が暗く光っている気がする。

あの目…何処かで。


「人間はな。届かない深淵があると知るべきじゃな。ワシの事よりも外が騒がしいぞ。

そうじゃ。コレをお前さんにやろう。何かの役には立つじゃろ」


手のひらには、いつの間か六角形の半透明の石っぽい何かがあった。手のひらに収まるくらいの大きさのソレは少し湿っている気がしたけど。


お爺さんに改めて聞こうと思った私は、ちょっと目眩がした。


え?ええー??


いえね。

場所が、おかしな事になってるのよ。


外にいます。

私ってば、いつ店を出たの?!

しかも、目の前の『薬草売り』の看板もやたらと綺麗で様子が違うし。


「雪菜殿。コレはいったい…」


サイラスの問いかけに振り向いても答えがないのよ。首を横に振るしかない。


「わからないの。でも、サイラスも店の外で何か気づかなかった?」


何故か汗の滲むサイラスが肩で息をしながら

「全く問題はありませんでしたが」


あ!!そう言えばゲラン達は?

バレンしかいないよね?


「カラザから、桶が見つかったと連絡があり手伝いに行かせました。こちらは我々で充分ですので」


え?

さすがね、カラザ。

あの量を入れる桶ともなればちょっと難しいと思ってたけど。


「それより、雪菜殿はいつ外へ?」


「そうなのよ。お爺さんと話してたらいつの間か」「「お爺さん?!」」


ん?

何故そこに疑問が?!


「店主は、女性でしたよね?いつ、御老人が?」


え、ええーーーー!!!!


私は、その問いかけに答えずに慌てて今一度店へと戻った。

あんなに魅力的だった店は、甘草も夏枯草も置いていない普通の薬草屋になっていた。(もちろん、他の薬草屋より沢山の品揃えがあるけど)


もちろん、店主も年配の優しそうな女性で。


「ぼんやりしておられましたので、お声掛けはしておりません」


あ、そうだ!!

サイラスってば、私が手の甲を叩かれた時に止めに入ったよね?!


何故キョトン顔?


「そんな事が?え?私がこの店をお勧めした?マティの勧めで、と…」


説明すればするほど、背筋に寒気が走るのは何故?しかも、サイラスの顔色まで悪化してくるし。


「コレを貰ったの。とっても物知りのお爺さんに…」


手に取ったサイラスは見た事ないと首を横に振る。


すると、とんでもないところから助け舟が!!


「コレはコレは。

さすがは、噂に違わぬお方だ。その品物は、私も知識のみで拝見するのは初めてです。

遠い昔カザエルの国宝にそんなモノがあったと聞いております。

さて、怒り顔の聖騎士様とも今一度お話し合いが必要なようですな」


また現れたわね。

イケオジ ラザンガさん。

ちょっと侮れない雰囲気いっぱいで、緊張するけど昨日とは少し様子が違うみたい。


「サイラス。とにかく一旦あの…えっと…。

や、宿屋に戻りましょう」


ふう。

単に宿屋と称するには、何故かめっちゃ抵抗感が拭えない。

庶民心からの訴えが…ね?


宿屋=宮殿に戻った私は、はたと気づいた。

せっかく買い物に来たのに、一つも買えないまま帰宅したわ…。




その晩ちょっとやけ食いをした。

(ま、コックさんが凄腕すぎたのよ。まさかのパテシエまで揃えてるとは。。。やるわね)



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