路地裏の宝物?!
今日は、二話投稿しております。
このお話が二話目です。
宜しくお願いします。ちかず
ー雪菜視点ー
よく晴れた朝は、気持ちいい。
でも、目覚めた場所に心当たりがないとなるとちょっと事情は違う。
宮殿のような場所に来て、カーテン付きのベットに寝かされて。
え?
天蓋と言う名前だよ。ってツッコミを既に各方面から頂いております。
そんな事よりソファで寝ちゃった記憶が…。
疲れてたみたいで寝落ちです。
まさか…。
その時、扉を叩く音がしてビクッとする。
「サイラスです。起きておられますか?」
慌てた、身を起こす。
やらかした感満載の赤い顔を必死に元に戻しながら。
「どうぞ」と(ちょっと声が引きつっていても勘弁してね)答えた。
「雪菜殿。寝心地はいかがでしたか?」
朝から爽やかを貫くサイラスの笑顔に、寝ぼけた頭ながらも、よだれの確認をこっそりしてる場合じゃないわ!!と気づく。
今日、買い物に行くんだった!!
あ、もちろん目的はプリンの材料じゃないわよ。世界中の薬草が集まる問屋があるって聞いたから。それに…。
私は昨日のラザンガさん…。
***
「そうです。息子とは関係のないお願いでして。私は商人です。
商売になりそうな事ならば、どんな事でも手を出します」
姿を消したオースティンの様子を知りたいのかと思いきや、違った。
勘当した息子など気にならないのかしら?
「ククク。噂通り可愛らしいお方ですな。予想とは違いますよ。オースティンは勘当された思っておるようですが我が家に勘当などと言う熱い言葉を言う者などおりませんから」
はぁ?
勘当が熱い言葉なの??
いまいち言う事がいちいち理解の外にあるけど、用件はちょっと意外なモノだった。
「雪菜殿は、靄鬼に対抗できる薬草を作られたとか。そこで靄鬼を遠ざける薬草を作れないかとのお願いです」
え?
靄鬼は、ルスタでなりを潜めたと聞いたけど違うの?
「おや、ご存知ない?既にドルタ帝国に手を伸ばしたようで。かの国は優秀な皇帝陛下がおられるのでまだ庶民には被害は出ておりませんが。我々商人は、如何なる場所にも赴き商品を届けねばなりません」
***
「雪菜殿。スープが溢れております」
静かな声がして手元を見れば、せっかくの劇旨のスープを溢していたし。
しまった!!!
「ごめんなさい。せっかくコックさんが朝早起きして作ってくれたのに」
考え事は、時と場合を選ばなきゃ。
その後は、改めて美味しく楽しく朝ごはんを頂いてコックさんにお礼を言う。
部屋に帰ると、バレンが服を用意してくれていた。
身構えていたら、ゴウジャスな服は出てこなかったわ。ほっとしてたら。。。
「貴方の可愛らしさを少しは消したつもりでしたが、まだ滲み出ていて難しい」とか、サイラスがしみじみと私を眺めながらそんな事を言い出して。
「サイラス様。雪菜殿の可愛らしさを完全に消す事など不可能かと。
如何なる時も我々がお護りしますのでご勘弁下さい」
バ、バレンってば何言っちゃってるの?!
「いや、俺が無理を言ったな。バレンの言う通りだ。我々がしっかりせねばな」
頷き合うサイラス達にツッコミ言葉すら失った私は、この際聞かなかった術(日本人の得意技よね?!)を発揮してとにかく、市場へと急いだ。
賑やかな市場は沢山の人がいた。
それ以上に、売り子の声があちこちから響いて活気がある。
昨日、レサンタへ来た時も思ったけどこの国本当に凄いわ。
これまでの国とは全然違う。
まさに、『どんなものでもあるレサンタ』ね。
同じ香辛料でも、名の知らないモノが沢山ある。フローラの記憶でも全く見かけないモノも多い。あー、ワクワクが止まらない!!
。。。
ただ今、問題が発生しました。
何故?恋人繋ぎ?!
胸がドキドキして、品物が見えにくいし!!
サイラスってば、父性愛が炸裂してるのかしら。
手を繋いで歩くには道幅が狭い気がするんだけど。
ほら!!
向かい側から歩いてくる人の邪魔になってるので。
「ね?ここでは手を離そうよ。迷子にならないから」と頼んだら…。
「確かにここは道幅が狭いですね。少し我慢して下さい」
いや!!違うから!!
頼んだのは、『手を離そう』であって『片腕に乗せよう』じゃないから!!
めっちゃ目立ってるじゃない!!
ただでさえ、ガタイの良いゲラン達は目立つのに(当然、イケメンですよ…女性達の目が熱い!!)これじゃちゃんと見れない!!
私の抗議が効いたのかサイラス達が突然走り出した。
え?
まさかの敵襲?!(聖騎士ファンクラブとも呼ぶ)
細い路地をグルグルと曲がりまくり、私達は路地裏に着いた。
『薬草売り』
やっとサイラスに下ろしてもらった私の目に飛び込んできたのは、掠れた文字でそう書かれている看板。
「ここが目的の場所なの?」
そう聞いたらサイラスが輝く笑顔で頷いて「マティから聞いておりましたお勧めの薬草屋です。さ、どうぞ」
ドアが開いて私が足を踏み込んで思わず固まった。
むせ返るような薬草の匂いがしてきたからだ。それは様々な薬草からのモノで私にとっては懐かしいモノ。
昔、お婆ちゃんの薬草小屋からいつもしていた香り。
少し涙目になりながら、眺めれば甘草や夏枯草など見覚えのあるものまで…。思わず手に取ろうとして誰かにピシッと手の甲を叩かれた。
ん?!
小柄なお爺さんだ。
「お前さん。無闇に触るんじゃない。この中には猛毒のモノもあるんじゃ!」
サイラスが文句を言おうと前に出ようとしてのを遮った。
「ごめんなさい。おっしゃる通りです。お詫びします。私は薬師をしております雪菜と申します。ここにあるのは、甘草と夏枯草では?」
今度は、お爺さんの驚く番だったみたい。
「ほお。コレの正体が分かるとは。
昔、そんな風な名前でコレを読んだ者がいたな。薬師ならば手に取っても良いが、あの一角はダメだ。良いな?」
頷く私に、お爺さんは奥へと消えていった。
「雪菜殿。この店は狭いようです。我々は外でお待ちしております」とゲラン達。
頷いて目を薬草へと戻す。
私は、靄鬼の事を思い出しながら蚊除けの菊花やハーブの事を考えていた。
もしかして…と。
何かヒントはないか…と。
次々と薬草を手に取っては匂いを嗅ぐ。
そうしながらも、頭には一人の顔が浮かぶ。
ギャビン…。
力になりたい。
恐らく死にものぐるいで戦っているだろうドルタ帝国のみんなを思いながら目は一瞬も薬草から離れない。
願いを込めて、一つ一つ手に取る薬草へと目を向けながら必死な私は気がつかなった。
外がどうなってるかなんて…。
ーゲラン視点ー
尾行は二組だと目星をつけていた。
自然な形で雪菜殿抱き上げたサイラス様の全速力を妨げないようにメゼルが目眩しの魔法を使う。
1組は恐らくラザンガ殿の手のものかと。
もう1組は、カザエルの騎士団だろう。
「違う…全く気配が辿れないがもう1組いる」殆ど聞こえないくらいの声でバレンの台詞にギクリとする。
追手をまきながら、サイラス様から命が下る。
「ゲランは、昨日の手筈の通り動け。どうもキナ臭い」
昨日の手筈。
無言のまま、俺はその場を離れた。
昨日、後をつけたカラザの元へと向かった。
恐らく、ここは戦闘になるだろう。
だが、サイラス様だ。
万が一にも負けはない。。。と。




