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森に囲まれた!  作者: ちかず
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新たな決意!!


ー雪菜視点ー


蜘蛛を思い出していた。

真っ白な糸ではなく、透明な糸でグルグル巻きにされた獲物。


絶句する私が見た課長の姿はまさにソレだった。あの薬の何処に蜘蛛的要素が?!


「雪菜には、分かってると思うけど、神鳥は生きている。但し、その状態は仮死と言っても良いと思う。俺の背もそうだし、今回の『ゼゼレブ』には何かあると思う」


ちっさいブルーノは、相変わらず冴えているわ。今回の『ゼゼレブ』は跡形もなく消えていた。それが最も問題なのよ。

毒の解析が進まなければ、対処法もない。しかも、課長は触れられない状態。手詰まり感が重くのし掛かる。


「この様な姿は見た事があります。」


それは遠慮がちな声。イケオジから出たとは思えぬ声色ね?


「プッ。雪菜殿はなかなか愉快な方ですな」


ツッコンだのは、親方の姿に落ち着いたヴォルガノ。『雪菜は、ワシをヴォルと呼んでくれ』と言われたけど年上に、ね? 



『国主ランゼルドよ。時間が無いのだ。さっさと続きを話せ』エペの言葉に課長へ視線を戻す。


変わりないような…?


「いえ、以前何処かの書物で見かけただけでハッキリと覚えている訳では無いのです」


そう答えて項垂れたイケオジは、国主様に見えない。


『そうか…雪菜よ。もしやお主が持っている『古代地図』が知っておるやも知れぬ。とは言え時間切れのようだ。

姿を得るのも悪いものでは無いな。これも雪菜のお陰か…ではな、さらば、だ』


エペ?


声がする方を見たのに、いないのよ。

黒い獣はいつも私の側に寄り添ってくれていたのよ?

その姿を見ると安心する様になってたのに。

どこ?


「雪菜や。涙はまだ早いのではないか?お主ほど『諦めの悪い人間』はワシも見た事ないのだ。どうだ?ここで諦めるか?』


転がったガブゼ。

もう、寄り添ってくれた温かさは感じない。

でも、両手で握りしめて課長を見つめる。 


いつも、助けてくれたカンプフも本性に戻ってるのだろうと思う。エペがそう言っていたから。

ほっぺたが濡れている気がするけど、私は拭いもせずに前を向いた。


無理難題を言った私に出来る事は一つ。


『古代地図』を取り出すとトトラルの場所らしきページを開く。


『ふむ。こりゃ懐かしい地図だな』

頭の上から、ヴォルさんの声がする。

懐かしいって…。


精霊ってば、長生きもちょっと桁外れね。


「お願い。力を失った『オゼルの大刀』を元に戻すにはどうすれば良いの?」


《それに対する答えは持たない。そもそも、刀がその様な力を得るには長い長い年月が必要になる》


古代地図の浮かび上がる言葉にドキリとする。真実って、時には痛い。

その力を使い尽くさせたのね、私は…。

己の不用意な思い付きに胸がザワリとする。

救いたかった沢山の命…のはずで。


《でも、答えはある。但しその答えを持つものはココにはいない》


「それはどこ!!!」


《現在のレサンタ国を通り抜けカザエルへ向かうべし。そこに恐らくは『雪星の雫』もやって来るだろう》


レサンタ?カザエル??

何で『雪雫の雫』まで出てくるの??


でも、希望のカケラが見えた。

間に合えば…だけど。


「お主は、頼らぬな。我は精霊。ここは我の山の中だ。この者らはこのまま封じよう。

お主が戻るその日まで」


!!!!


「泣き虫になったなぁ、雪菜。俺よりチビみたいだ」

ブルーノの優しいツッコミが入る。


「馬鹿もの。お前も一緒に行くのだ。大丈夫だ。トトラルは変わる。

この国を出ても、もういつでも戻れる。そうだろう?国主どの?」


ヴォルさん。

ブルーノ。


そして頷く国主ランゼルドさん。



私は、深く深くお辞儀をして暫く動かなかった。



一人じゃない。


『人間は沢山の人の力で生かされてる』


私はガブゼを握りしめながらその言葉を噛みしめた。強い決意を胸に…。



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