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森に囲まれた!  作者: ちかず
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この国は誰のモノ?!


ー国主ランゼルド視点ー


国主になるまで知らぬ事が多かった。

その最大があの賢者の事だろう。


無知が齎す恐ろしさに改めて己が身を戒めた。国主である自分こそ最も国を守る者だとの自負が崩れた瞬間だった。だから、変わろうとした。


だが…ブルーノは外へ。そしてトトラルに雪が降るとは。


窓から飛び出していった後ろ姿を噛み締めるように眺めていたら、臣下が口々に騒ぎ立てる声が聞こえた。


もう、いいだろう。

我が国の秘中の秘を告げても…。


色めき立つ臣下に一瞥を向け沈黙を促す。

真実は時に残語だ。顔色を失う臣下達は、遽に信じられずともあの殺気と威圧を受けたのだ。信じるしかあるまい。


やがて、沈黙が辺りを包んだ頃、伝令が駆け込む声で一斉に視線が向けられた。


「陛下!!!

国境が破られました。しかも逃亡者ブルーノが戻りました!!」

一斉に活気付く臣下に私は今、去った我が国の精霊へと思い致す。

このタイミングで…。


「すぐさま、軍を出し其奴を捕まえねば!!」興奮する臣下たち。


『国境が破られる』我が国最大の禁忌だ。

当然と言える意見だ。

が、しかしだ。相手はブルーノなのだ。

この雪の降りしきるこのトトラルに。

今この時である意味があるに違いないのだ。


「現状把握が第一。とにかく…」


私の顔色を読んだ宰相が無難な対処を言いかけたその時!!

地鳴り?!


ゴゴゴゴゴ…。



揺れないのに、響く不気味な地鳴りの音。

しかもどんどん大きくなり、遂には。


「「「「「耳が…!!!」」」」


異音に耳鳴りで何も聞こえぬ…。

居並ぶ臣下の呻き声すら、我が耳にも聞こえぬ。頭も耳も痛み、目が回るのだ。

思わず膝をついて、僅かに横を向けば既に殆どの者たちが倒れ伏していた。


あの地鳴り。

言い伝えが誠になったのだ。



確信した私はふらつく身体を外へと運ぶと馬に飛び乗る。臣下の呼びかけにも答えぬまま地鳴りの音のする方へと。



雪が溶けて草原が広がるかつてのトトラルの風景の中を駆け抜ける。




ー雪菜視点ー


ふぅ。

螻蛄ちゃんもミニハリネズミ達も喜んでるからつい、篠笛吹いて喜びを分かち合っていたら。


「雪菜!!

まだ、大きな問題が残ってるぞ!!!」


ブルーノの大きな声がしたわ。泣き虫は終わったのかしら?

あの事よね?!

やっぱり忘れてなかったのか…不味いわね…。


「あのね、背の事ならこれから努力するけど時間がかかるかも(成人するくらいまで…ま、本当は自力の方が早いかと…)」


解毒剤では、背の呪いまでは届かなかったから解決方法が、ねぇ。


「背はいいんだよ!!いや、良くはないけど。。とにかく、緊急事態は神鳥だよ!!

オカシナ事になってるんだってば!!」


え?

でも、課長はあの時普通にしていたし。

あの特別な薬だって渡したのに。


もしかして私、配合…失敗した?!


『言わずにおこうと思ったが、耳に入ったならば。恐らく『オルゼの大刀』本体であるご主人様にも異変があるかと。

形を保っているのも難しくなりつつあるのだ。』


エペの言葉にビクリッとする。

無茶振りをした自覚はあるけど、カンプフだから大丈夫だと。


「神鳥の事はたぶん、『ゼゼレブ』のせいだけじゃない気がするんだ。

とにかく、急ご…国主様。。。」


突然、強張った顔で振り向いたブルーノに私も振り向けば。


これぞ、イケオジがおられましたとさ。

何故なのーー!!!!


そりゃ異世界だけど、こうも様々なイケメン攻めとは三十路のOLにはキツすぎる。

見惚れるわよーー?!


いいのーー??


変なヤケッパチを起こしてる私を他所に、話しの内容は深刻そうで。


「我々国主一族の責務は大きいものです。我が身は如何様にもなって下さい。

ですが、ブルーノは別です。この国に生まれし者。この者だけ贔屓する訳には…」


『片腹痛いわ。お主などの生命なぞになんの興味もない。帰れ!!』


アレは小人さんの性格?親方さん??


平伏するイケオジさんは、何か頭を押さえられてるみたいに苦しそうな呻き声を漏らしてる。


『アレは威圧よ。精霊の全力の威圧に耐えるとは単なる人間ではないのか?』エペの独り言にブルーノが青ざめる。


「親方…いえ、精霊様。お願いです。俺のために我が国の国主を諫めるのはおやめ下さい。俺はこの国の法を侵しました。裁きは受けます」


そんなのダメ。なんで?この国を救おうとしてブルーノが?

そんな法律、馬鹿げてる!!!


と、言おうと思ったら飛び入り参戦?!


『愚かな。この国を救ったのは其方でも精霊様でもないんだぞ!!』


確かに。

ミニハリネズミ達の意見は最もね。

頷いていたら、ビックリ意見が…



『すまん。助けて頂きながらワシらが間違っておるな。ブルーノもワシらも何も言う資格は無い。

雪菜殿、貴方こそ救い主』


ええーー!!!


ま、まさかの私ーー?!


『そうだ、そうだ!!僕らも遥かルスタ国から大森林の土の精として雪菜を助けにやって来たんだから!!』


ええーー!!

そうなの?!知らなかった…。螻蛄ちゃん達ありがとう。

でも、私じゃないよ?


このミニハリネ…

『そうだぞーー!!雪菜だぞーー!!』


ミニハリネズミ君たち。

何してるのかな?


それは不良がよくやる囲みでは?

でも…一言だけ。


「助けたのが誰かではないのでは?全員、それぞれの場所でこの国を助けたいと頑張ってたんだと思います。

大切な事は、この国は誰のモノかと言う事。

精霊?精?国主様?民?


私はどれ一つでもないと思う」


「え?じゃあ誰のモノなの?」ブルーノが驚いた顔でこっちを見つめてる。


「言い方が悪かったかな?

この国は全員のモノなのじゃないの?この地に住むモノたちの。

皆んなが幸せになる方法を探して欲しいの。部外者が勝手を言ってごめんなさい」


其々が見つめ合っていた。


『ふふふ。

永い時を生きてきても、まだ教えられるか。

どうじゃ。ワシらの負けだの』


精霊とイケオジの見つめ合う姿は今回に限り、感動しかなかったわ。

トキメキとかは、ちょっと別の時に、ね。


やがて、仲直りが終わった私たちが(国主様までついて来るって…)向かった洞窟で見た課長の姿は…。


ショックで黙り込む私に国主様が意外な一言を言う。



「この様な姿は、見たことがあります」と。




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