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森に囲まれた!  作者: ちかず
178/233

弟子の役目?!


ーブルーノ視点ー


「親方…」


息を飲む俺の呟きは、かなりの距離があっても届いたらしい。


「ふん。不肖の弟子でもワシが分かるか。ま、いいだろう。この姿が意味するところは理解しておるな?

では、参ろうぞ。。」


雪景色は、ここにはない。

『ゼゼレブ』すら、無毒化している。


それでも、親方は最後の手段に出たのか…。


!!

エペに、離れるように言おうとしてる隙を突かれた。鋭い牙は俺の首元を確実に狙っていた。

この場が殺気に満ちる。


だが、雪菜の解毒剤で身体は(小さくても…)完全復調だったので大きく後ろに飛び退いて間一髪で躱した。


エペも背を屈めていたお陰で牙は寸前のところで回避する。


ガキッ!!


空振りでも激しい音に親方の本気を感じる。昔の様に鍛錬の手合わせでは無い、と。


ダメだ。。


思い出すと集中力が欠如する。


ほら!!


ズボンの一部が喰いちぎられた!!

防戦一方では、必ずヤラレル。俺は懐から取り出した短い剣を構えて次の一撃は刃で受け止める。


ふぅ。少し一息付けるか?


「おぉ、デラの毒を刃に塗ったか。この毒は厄介だ。何せ解毒剤がない。そうと知っての攻撃は、師匠としては嬉しいのぉ」


解毒中なのだろう。

何せ元は精霊なのだ。しかも、この火の山の精霊だ。

毒如きで倒せる相手ではない。


が。

チラッと見える螻蛄の背に乗るアレは、もしかして。。。


「さて、お遊びもこれまでよ。我が片割れも見ておるのだ。サッサと終わらせるかの」 


その言葉を聞きながら、重なるように小さい頃親方から聞いた言葉が聞こえてくる。


『護るべきものを誤るではない。大切なモノを見失うなよ…』と。


握りしめる剣を与えてくれた相手に向ける。

その意味を何度も反芻しながら、心に浮かんだ迷いは段々も消えてゆく。



ー雪菜視点ー


え?

何で??


確かブルーノは、『親方』って呼んだはず。昔、聞いたもの。

『親方』は育ての親であり、師匠なのだと。

悪口っぽく語るその顔には、親愛が溢れていてから。だからこそ帰れぬトトラルへの想いに私は胸が詰まった記憶にまだ新しいもの。


「雪菜。

我々がこのような姿になったのには、訳があるのだ。

遥か昔、トトラルは痩せた土地だった。

我ら精霊は豊かな大地からそのエネルギーを得るモノ。あまりの厳しい荒れ様に我は形すら保てなくなっていたその時。ある一族がこのトトラルへやって来てこの土地を耕し出したのだ。やがて彼らの粉骨砕身の努力で森も草原も次々と生まれ始めたのだ。全ては彼らの努力なくては語れぬ。ある時、我はその長に礼として力を貸そうと人形をとる」


トトラルは荒地だったのね。人と精霊が力を合わせるお話はとても素敵なのに何でこんな風に?


「時代を重ねるうちに、国主となった一族が太古の魔術を使って我を縛ったのだ。この地の実りは彼らの努力そのもの。しかし我の力だと思い出した彼らは疑心暗鬼になったのだ。

そして半身が言霊に縛られた我はカケラとなり地の底へと逃れた。縛られる精霊は歪むのだ。歪みはやがて彼らをも巻き込む。少しでも遅らせたいと願ったからこそ。。。

だが、その努力も虚しいらしいな。ほら、もうすぐあのモノは自分の意識が呑まれると知っているのだ。だから…」


そんな…ショックを受けている私の耳にブルーノの声が聞こえて来たような?!


「雪菜!!

これはトトラルの問題なんだ。だから、親方の為にもあの姿の間に倒さなきゃ。それは弟子の役目なんだよ」足元から聞こえる?!


ピテレの声だった。でもまるでブルーノの声の様で。シンクロしてるの?


説明を聞いている間にもにじり寄る二つの影が凄まじい殺気に満ちてゆき、私まで震えが走る。エペが庇うように前に立つけどそうじゃない。


違う。

これはダメだと、心が叫ぶけど私の力は全然届かない。


どうすれば…ん?アレは?


超増殖したミニハリネズミの軍団が1列に並んでる?


ウルウルした目で見上げるリーダーっぽいミニハリネズミがニヤッと笑った(…ように見えたのよ。本当よ?)


ズンズンズン。

ズンズンズンズンズンズンズンズンズン…。



真っ直ぐに二つの影を目指すミニハリネズミに悲鳴が上がる。


「え?やめて!!!無理よ、巻き込まれ…ええーーー!!!!」


必死叫びは、雄叫びに変わったわ。


あんなに増殖してたなんて。

まるでこの地を埋め尽くすようなミニハリネズミの軍団に、ブルーノも親方も私達もなす術もなく巻き込まれてゆく。


足下がグラグラと揺れてるけど、地面なのか、ミニハリネズミの上にいるからなのかも分からない。


なんとかエペの背中に乗った私が空高く飛び立ち見たものは…。




一面真っ白な世界だった。



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