表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森に囲まれた!  作者: ちかず
176/233

雪菜の反撃が始まる?!


ー雪の降る王宮にてー


『国主よ。ワシを自由にして貰えますかの』


国主にだけ許された自由への道。

雪景色だけが、恐らく可能にする自由への道じゃわい。

さて、弟子よ。


次に会う時はお主はどうする?


『我が名に於いて命ずる。その姿を解いて自由にならん事を。ヴォルガノ』意を決した表情で国主が唱える。


その声と共にワシの身体の線が緩んでゆく。永きに渡って作っていた人間の輪郭が完全になくなる。


『ふふふ、心配するな。この国への軛は無くなろうと我が弟子がおるのだ。さあ、行くかの』


「どこへ?」威圧からか震える声で国主が尋ねる。


その問いは無視をした。我が身はもう、自由なのだ。


窓に前脚をかけて、空高く飛び立つ。

地上から聞こえる悲鳴とも叫びとも聞こえる声を無視して雪の中へ。



ー雪菜視点ー


地面がハゲた。

え?言葉がオカシイって?


いえ、あってますよ。

確かに地面が、まるハゲになってます。

私の周りには、樹々や草花が沢山あったしもちろん『ゼゼレブ』だって。


でも、あのデッカイ樹々も草花も一瞬で消え失せました。原因は私の薬らしいの。

と、言うのもピテレが突然元気いっぱいになったから。


『雪菜!!土が復活してる。何の薬を撒いたの?どんな配合?!』

グイグイと鬼気迫る勢いで尋ねるピテレに「いや、零しただけで分かりません」って言える!!

言えないよね。

期待を込めた目からは星でも飛び出しそうなんだよ?


『さすがは雪菜だ。身体がすっかり軽くなったぞ!』エペまで…。


あら?ホカホカと暖かくなってきた気がする。何故?


その時!!


『ありがとう。とっても助かったよ。雪菜だね?』


土の中から現れたのは、螻蛄に乗った小人だった。


ええーー!!!

コロボックルって、螻蛄に乗ってたっけ?


『精霊様。よくぞご無事で…』


ピテレが小人の前に飛び出して抱きしめていた。


うぐっ、とか。

うほっ、とか聞こえるけど締め技になってない??


『あ、すみません!!』


正気にかえったピテレに、精霊様は怒ってない様子で良かった。


『まだ、こんな姿なんだから無理はやめよ。それよりもブルーノはどうした?』


小人の割に大人びた態度の精霊様に、ピテレが現状を説明した。

頷きながら聞いていた精霊様がトトラルに雪が降ったと聞いて途端に顔を顰めた。


やっぱり不味い事態なのね。

どうすれば…。


『雪菜。お主は『ゼゼレブ』をどう見る?』

可愛い小人を私も抱きしめたいなぁと見てたら突然、こちらを向いて話しかけてきた。

下心が、バレたかしら?

あー。可愛いものに弱いのよねぇ…私。


視線を感じてコホンと咳払いをして話し出した。これは最初から感じてた事。


「『ゼゼレブ』は植物としての範疇を超えてます。これは異常です。

そこから一つの仮説を立てました。恐らく『ゼゼレブ』は何かを守ろうとしてるのだろうと。異常発生には必ず原因がありますから。雪とも関係してるのでしょう」


精霊様は、満面の笑みで肯定してくれた。

やっぱり…。


『私がこんな姿になったのが、雪の原因だ。リュカの消滅とも関係しておる。火山でないリュカの山の異常は、私の責任でもある。

そうだ、名乗りがまだだったな。私はこのトトラルの火の山の精霊ヴォルガノのカケラだ。この国に本体がおる』


カケラ?本体??


『本体が人間に入れ込んだので、こんな有り様だ。だが、それは雪とは関係ないのだ。雪は恐らく土の護りが消えたのが原因だ。ピテレ、お前なら理解出来るな?』


土の妖精のピテレ。ミニハリネズミはその手下みたいなモノのはず…あれ?

ルスタでは、土の精は螻蛄だった。今精霊様が乗ってるのも螻蛄。でも。ここはトトラルで…


んん??


『ピテレ、その本性を顕せ!!』


小人の身体から出たとは思えない大きな声が響いたと思ったら、ピテレが。


リュカと同じに見えるんだけど…消えかけてる??


『ごめん、雪菜。リュカ様と同じだよ。この森の毒が強くなり過ぎて土の妖精の僕は…』


『毒』最後はこの言葉ね。

でも、私は『毒』が悪者にされるのが嫌いなの。毒と薬は紙一重。そう教えてくれたお婆ちゃんが『毒』も与えられた宝の一つと。

使い方はその人次第だと。


は!!

もしかして…


私はもう一度『ゼゼレブ』を掴んで花を摘むと、ジッと見つめてエイ!!!と口に入れた。


『『『雪菜!!!』』』


皆んなの叫び声が、聞こえる。

そりゃそうよね。

毒なのだ。効かないとは言えこれはダメだと理解してるもの。私だって他の人がやったら吐かせるから!!



でも、もしかして…。

飲み込まないように気をつけながら、苦味を食べて理解した。鞄から薬を、取り出して何種類か舐める。苦味が、消える瞬間を全身で感じようとしてるから何も聞こえない。皆んな、叫んでるみたいだけど。


「これだわ。間違いない!!」



私は、確信を持って数種類の薬草を配合して『ゼゼレブ』にかけた。

ジッと見てると、薄ピンクの美しい花弁があっという間に真っ白に変化した。

よし!!

私は、それをピテレにかけた。


たぶん、合ってる。

合ってますように…、


祈る気持ちで。リュカの時の痛みが胸を突き刺すけど、希望は絶対捨てない。


あ、

ピテレが丸まった。トゲが伸びて尖りだしたわ。

トゲが痛そうで触れないし。 

これって…。


『雪菜。ピテレは繭になったと思えば良い。大丈夫だ。お前の手当ては合っているだろう。まぁ、方法は問題が多いがな…』


精霊様の言葉を信じたい。



大丈夫。



私は何度かそう心の中で繰り返して、精霊様を振り向いて「私に協力して下さい!!」と頭を下げた。

これからが、本番だから。


『了解した』快諾だぁーー!!


やったぁ!!!さあ、これから反撃の始まりよ!!!


私は、今一度気合を入れる為に自分の顔に張り手をした。


(やり過ぎはダメね。

ほっぺに手形付きの私は、後からすっごい気まづい思いをする事になるのだったもの。。。)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ