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森に囲まれた!  作者: ちかず
172/233

上司使いが荒いのは…?!

薬に関する言葉が出てきますが、創作によるモノだとご理解下さい。宜しくお願いします。


いつもお読み下さる皆様にとても励まされております。ブックマークもポイントも大変嬉しく感激しております。ありがとうございます。


ー雪菜視点ー


薬草畑と間違えそうな程の一面に咲き誇る花を必死に刈り取るブルーノの姿に久しぶりにフローラの記憶が蘇る。


コレは確かトトラルにしか咲かない毒草『ゼゼレブ』

それは強い毒性を持つが、一方でかなり貴重な薬となる。


でも、オカシイわ。だって確かトトラルの人知れぬ森の奥にみ生息する、しかもその森に入れる者は国主様から特別認められている者に限られているとか…。


何で?ココに咲いてるの?

花粉に含まれる毒は風に靡いて人の口に。。


ハッとした私は慌てて自分の身体を点検するけど、全く問題ない。

うーん、たぶんだけどこの世界の人間じゃないからかしら?だとすれば…!!!

アーノルドが危険だわ。いえ、違う。

この辺り一帯全てが…。


慌てた私はピテレにアーノルドを帰して課長を呼んでくれる様に頼んだ。

ちょっと心当たりがあるのよ、この薬草は。たぶん…。


漢方薬として有名な『当帰』

葉や茎の部分が恐らく薬になる。捨ててあるその部分から薬が出来る。

精製となれば、今一番頼りになるのは課長。

とにかく、この世界の人間では毒に当たるから絶対ダメ。


早!!ピテレはあっという間に課長を連れ帰ってくれた。


「春川。精製方法は恐らく何とかなるが、問題はコイツの解毒薬だ。しかも早急に、だ」


その台詞が現実となる。

先程まで、必死に『ゼゼレブ』を刈り取っていたブルーノが倒れ込んだのだ。

「ブルーノ!!」「雪菜ーー!!お願いだよ!!彼を助けて!!」

彼を抱えて動揺する私とピテレの叫びが重なる。


「春川、まずは配合だ。彼は俺に任せてくれ」


動揺する私に落ち着いた声が響く。

課長…いつもそう。気が動転したり、落ち込んで前に進めない時、声をかけてくれる。

その声で、いつも意識が初心に戻るのよ。


『薬師たる者、危機にこそ冷静な観察眼が必要なのだ』と。


改めて私は、己の心を一気に集中させる。


どう配合すれば…。 


鞄から薬草を取り出す。一つ一つ違う効能を持つ薬草を合わせる事で違う力を発揮する。

それが配合。


恐らく『六神薬』に近いモノがいいはず。そう思いついた私は慎重に配合を進める。少しの誤差が全く違う薬を生むから。


「出来た…」


必死に作った薬は、手のひらの中にある。

数種類の薬草から出来たこの世に一つだけのブルーノの為の薬。


振り返れば、課長が彼の呼吸・体温の確保をしてくてる。


「課長!!コレを。彼に飲ませて!!」


無言のまま頷いた課長が胸の上に置いた薬に力を灌ぐ。今は眷属となった課長にしか出来ない技。直接、薬を身体の中に入れ込む。ま、要するに『浸透』かな?


ゴ、ゴホ…ゴホゴホ!!!


良かった。

意識が戻り始めた。


でも、このままじゃダメ。

私はピテレを振り返ると尋ねた。


「トトラルの森に行きたいの。そうよ、この『ゼゼレブ』の生息地にね。毒草はね、そのそばにこそ解毒薬を必ず生やしているの」


自然の答えを探さなきゃ。

必ず、あるはずの解毒薬を。


驚くピテレの顔を決意を込めて頷く。

他国民を一切受け入れてないトトラルに行く意味も承知だとの気持ちを込めてピテレを見つめる。

ブルーノを、いえ薬師としてやるべき事をする為に。 


『そう…。じゃあ、直接その森には行けないけど近くなら。たぶん』

不安そうなピテレに私は今一度振り返ると一面の『ゼゼレブ』を眺めた。


もう一つのやるべき事を胸に胸元をぐっと掴むと呟く。


「お願い『オゼルの大刀』の力を貸して」


このままにしておけない。

この花粉の飛散を止めなければならないけど、時間がない。

ブルーノを、人々を守りたいのよ。


じんわり暖かく感じる胸元だけど、反応が小さい。どうしよう。やっぱり人間のお願い事なんて無謀だったのかな?


『名を呼べ…』


ん?小さくて聞こえない。

な?菜??


あ、名前!!


『カンプフ。お願い、この場所を封じて!!』


胸が、胸が光ってる?!

心の叫びと同時に私の胸元から光が出て、それはどんどん広がって…目が、目が開けられない!!!


どうなったかは、知らないの。

だって、気がついたら洞窟だったから。


ただ…


「さすが春川だな。上司使いが荒いのは変わらないな…」


と、課長が呟いたのは、解せないけど。


そんな事した覚え…ない?!わよ!!

たぶん…。



独り言を呟いていた私は、課長がチラリとこちらを見て微笑んでいたのには、気づかなかった。

その微笑みが見た事ないほど温かなモノだった事も…。



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