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森に囲まれた!  作者: ちかず
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『ゼゼレブ』と言う毒草…


ーブルーノ視点ー


我が故郷『トトラル』

掟により帰れない故郷の景色を思い出される風景が目前にある。


一面の『ゼゼレブ』の花々。。。


親方ですら、最近馬めっきり扱えなくなったとぼやいた『ゼゼレブ』。

だからこそ、その危うさを俺が一番知ってる。今では採取も薬に精製する過程すらも、俺しか出来ないシロモノだったんだから。


こんな街道にあるなんて、周りの人々は?

同じ事を考えていたのか、ピテレも慌ててる。

「なあ、こんな事あり得ねぇよ。これじゃここらの住民は…」そう言いかけて言葉を止める。それが起こって欲しくないから。だけど

嫌な予測というものは何故かいつも当たる。

ピテレが土の精に命じて近隣の村を偵察させていたが、肩を落とした様子から嫌な予測が当たったんだと気づく。


「このままじゃ、この周辺の村以外も犠牲になる。いや、トトラルにも」言いかけて振り向けばサイラスが真っ青な顔をしていた。


異変を感じたピテレに言われてサイラスと早駆けして来たのだった。

「今すぐ、王宮へ危険を知らせて欲しい。そして出来ればこの辺りの封鎖をして欲しいんだ。もちろん、皆んなも絶対に近づかないでくれよ」

真っ青の顔を横に振りながら、抵抗するサイラスへキツイ台詞を投げる。

「足手まといになりたくないだろ?薬師以外はここには必要ないから。それよりもこれ以上被害を広げない様に動いてくれよ。それが聖騎士のやる事なんじゃないか?」


結局、サイラスは早駆けで王宮へと向かった。それは来た時以上のスピードだった(たぶん、行きは俺に合わせたのだな)

ずっと後になって知ったのだが、自分の不調を押し殺して近隣の住民の避難を手助けしたサイラスはその後倒れたそうだ。

かなり不味い状態を雪菜の薬が救ったらしい…。こんなところに人見知りをして育った俺のスキル不足が出やがる。全く…。

親方が知ったら、絶対に拳骨だ。



サイラスを見送った俺は『ゼゼレブ』の採取を始める。どれだけ食い止められるか分からないがやるしか無い。それが薬師の仕事だ。親方ならきっと…。


「俺、行ってくる!!」

無心に作業している俺の横にいたピテレがそう叫ぶと土の中へと姿を消した。

「どこへ?」と言う問いかけは空中へと消える。話しかけた本人がいないのだ。でも、予測はつく…恐らく雪菜だ。


あ、もう来た。

アーノルドまで一緒?!


ゴホン…。

あの抱き方が流行ってる。いや、そうじゃない。嫉妬心の塊となった大人が我先にと…。

もう!!そんな状態じゃないと文句を言えば雪菜が驚きながらこちらへと近づいて来た。


「アーノルド。私のバックあったかな?無ければピテレに頼んで持ってきて。あ、そうだ。持ってくるのは課長にお願いして」


アーノルドは驚きと落胆の様子に俺も加勢する。「アーノルド、雪菜しか出来ない事があるんだ。周辺の住民の犠牲を無駄にしない為に!!」ギクリとした表情からアーノルドが無表情になる。流石、元王族。民草が犠牲になる意味を知っているのだな。我が国主も…。


「ブルーノ。もう、しっかりして!!とっくにアーノルドはピテレが連れて行ったから。それより貴方既に中毒起こしてるわ!!」


手足に鈍い痛みが走っていたのが、いつの間か鋭い痛みに変わっている。これが段々と心の臓へと近づくとかなり危険となる。

耐性がある俺でもコレだ。雪菜は…ん??


「ねえ、ブルーノ。何で花のところ以外を捨ててるの?」


雪菜は、俺が捨てた『ゼゼレブ』のゴミの山をしきりに調べていた。あれ?雪菜の薬師としての腕前ならば当然分かるはず…


「ブルーノさん。春川は恐らく気がついたのですよ。毒になる花の部分から下に何かあるのを…」


『ゼゼレブ』は毒になる花粉部分は上手く精製すれば、大変貴重な薬草になる。だが、その他には何も良いところがない。単なる草だ。


「ピテレ。移動方法はともかく本当に早いわね。課長、この草『当帰』に似てません?」


トウキ?

聞いた事がない、異世界の薬草なのか?

でも、親方も薬になる要素がないって言ってたけど。


「あの煎じ方ならば、出来ますよね?」


「無論、可能だが道具が足りないだろ?

どうするのだ?」

ピテレと戻ったカンドリの台詞だ。

いつもの二人の阿吽の呼吸の様子にホッとしたのか気が緩んだ。思わず膝をついた。


駆け寄った雪菜が俺を診察する。

無駄だよ…『ゼゼレブ』相手では解毒剤は無いのだから。

痛みで口には出来ない思いが心に溢れるが、声は出ない。


「雪菜ーー!!お願いだよ、ブルーノを助けて!!!」悲痛なピテレの叫びを聞きながら、俺の意識は闇の中へと落ちていった。。


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