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森に囲まれた!  作者: ちかず
169/233

待っている…


ーギャビン視点ー


馬を駆けらせながら、離れた距離に胸の奥が苦しくなる。こんな痛みは知らない。どうすれば良いかは分かっても手に入れる方法は分からない。


「陛下。やはり雪菜殿の元へ行かれてはいかがですか?この先の困難を考えれば陛下が力添えされる方が良いのでは?」

隣を早駆けするクライスからの台詞。早駆けで会話をする事自体彼の操馬技術の高さを感じるが…上には上がいる。


「そうですよ。我慢は身体に良くありません。今なら、一日で戻れます。あ、一人で戻れますか?」

馬上で干し芋を齧りながら気楽に聞いてくるバズール。

普段になると、口調もこんな風になる。

堅苦しいのは苦手らしいが…。


「二人とも誤解している。私が雪菜殿から離れたのは実力不足だからだ。そして、何より我が国の統治をする事が責務と心得るからだ」


脳裏に彼女の言葉が蘇る。

『私は、一人だけ国のトップを知ってるの。その人は苦しくても逃げずにいつも諦めずに向かい合ってる…』


自惚れて良いだろうか。私の事だと…、

首から下は地面の下で全く動けない情けない私へ向けられた真摯な目線。


「しかし、参りましたなぁ。彼女にかかればジェマ殿や我々の作戦など邪道なのでしょうな」どこか納得していないバズールの台詞はクスッと笑いが溢れる。


苦々しい顔をしているクライスも同じか。


「我々も武力を振るうつもりなどなかったのです。威嚇。いや、争いを止めようと。ふふ、これもまた彼女に言わせれば危ないのか…」

クライスは宿屋に戻った彼女に論破されている。





『ごめんなさい。誰も怪我とかして欲しくなくて。私の力じゃないのよ?この世界の精たちが貸してくれた力だから』


焦る表情の彼女にクライスが一言。


『いえ、謝る必要などございません。

お陰様で無傷のまま帰国出来ると兵達も喜んでおります』

頭を下げて礼を言う彼に更に慌てる彼女を結局私が宥めた。


『この笑顔溢れる街中が全てだよ。国は民だ。我々はそれを守るモノに過ぎないのだから。それを言えば兵達もまた『民』だ。だからやはり礼を言いたいのだ。犠牲者が無い…指揮官はそれが最も嬉しい事なのだから』


私の言葉にベットに座る彼女が手を伸ばす。


『ギャビン。いつも本当にありがとう。貴方の言葉にいつも励まされるわ』


暖かな手の感触がいつまでもいつまでも私から離れなかった。



「おい、いつまで埋められた事を恨んでるんだ?だからお堅い騎士はなぁ」バズールにやじられクライスが小声で呟く。

「お前だって何度もぶつぶつ言ってた癖に」と。


「とにかく、ベレットから矢の様な催促だ。それに何やら気になる文面もある。どうやら

靄鬼が国境に出たというのだ」


二人の表情が一変する。

ま、そうだろう。靄鬼とくれば急ぎ帰国する意味も理解してくれた様だ。

一段と早駆けのスピードを上げる様子でも分かる。


前を向いてひたすら駆けながらも、彼女の別れの言葉が胸に響く。


『きっと『雪星の雫』を探してギャビンのところに戻るから。待っていてね』


それは無くし物を届ける善意からのモノだと理解してる。


しているが。。。 



[待っている]




そう何度も心の中に言葉が溢れた…。


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