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森に囲まれた!  作者: ちかず
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穏やかな時間の後で…


ー雪菜視点ー


湯気から香る紅茶の香りに癒されながら、花々が咲き誇る庭園でとるティータイム。

ふふ。

素敵な午後のひととき…。



って、そりゃ私が国王様からティーを入れて貰わなければ楽しめたわよ?

微笑みの国なの、ここは…。


和かな国王様は、アーノルドとは雰囲気が違う。穏やかで落ち着きがあって…ま、言うならば普通の青年。久しぶりの普通の青年にホッと和むけどオーラは段違いなのよ。

やっぱり、高貴な生まれって滲み出るのね。


「お褒め頂いたと思って宜しいかな?緊張されたのが少しは取れたかな?」


あぁぁぁぁーー!!!

また、やったわ。

ダダ漏れスペシャル。側仕えの人の顔が引きつっているもの。


「申し訳ございません。こう言う場所には不慣れなのでお許し下さい」

謝って済むかは分からないけど、誠心誠意頭を90°下げ…れない。アーノルド。。


「雪菜。兄上は喜んでおいでなのです。本音で話す人間はこの魔宮にはおりませんから」


いや、朗らかに話すけど、内容とのギャップが。。魔宮とか言っちゃダメなヤツじゃ?

ほらほら、側近の人も苦笑い系だし。


「弟の言う通りです。まぁどの国も為政者などと言うものは腹芸の達者な人間ばかりですから、貴方の様な真っ白な人と出会う事は貴重な時間です」


微笑み兄弟は、とにかく置いておいて。

あのドタバタが嘘の様な、こんな日もいいなぁと空を見上げる。


綺麗な空の色に、やっぱりここは日本じゃないとの想いを深める。あんなに綺麗な空の色はない。異世界だと思ったら、何故か少し胸の奥が痛かった。

考えない様にしていた、『帰れない故郷』が蓋を破って暴れて出そうとて慌てる。


「雪菜殿。お招きした身で申し訳ない。急用が出来たので少し席を外します」

もの思いに耽っていた私は、王様の言葉に顔を上げて気づいた。


緊張感がある。

何か起こったのね…。


「どうぞお気になさらず。私はもう少しご馳走になりますね」


王様は「帰ります」と言われずホッとした表情で側近と共に王宮へと向かってゆく。


「雪菜。探ろうとか思ってないですよね?貴方は疲労で倒れたにも関わらず無理をして結局また、倒れたのですから。これ以上の無理は私達周りの者たちが許しませんよ?」


優しげな言い方の割に、ど直球にツッコミをいれるのはアーノルドらしいけど。

気になるわよね?


それに!!

私が倒れたのはもう二週間も前よ?


2日で治ったのに、「無理は禁物です」って言うハンナさんのお母さん力に負けて休みすぎて腰が痛いもの。


一応、頷く私に満足そうなアーノルドもチラッと王宮を見ている。やっぱり気になるわよね?


『雪菜。ブルーノが呼んでる。急用だから』


え?ピテレ?

ま、待って。それは強引過ぎるんじゃぁ。。



ぎゃぁーー!!



真下に大穴は勘弁して欲しい。

落ちるーーっ。と、プルプルしていた割に何かに包まれている感覚が…。


落ちたはずが、草原に到着!!

ダメよ、雪菜。日本の物理を思い出さないのよ。オカシイ事は忘れよう。


でも、足の裏に土の感触がない。

現実世界ではないの?


フワフワしてる気もする。


「ククク。あまりの可愛らしさにこのまま黙っておきたかったのですが、私の腕の中にいるから雪菜の足は土を感じないのです。確かに草原に出ました。恐らく転移に近いモノ。

ここは…国外れか?」


え?えーーーー!!!!

完全にダメなヤツだわ。姫抱きになれ過ぎて気づかないとか。こんなのに慣れたら不味いから。


「雪菜、雪菜ってば!!!!

アーノルドも笑ってないで雪菜を下ろして。事は急を要するんだから」


ブルーノの怒声に地表に降りた私はギクリとする。


「あ、やっぱり気づいたんだね。

そうだよ、コレ『ゼゼレブ』なんだ。トトラルにしかない希少な毒草だよ」


私の肌が泡立つのを感じる。

まさかの事態…なの?


顔色の悪いブルーノに、嫌な予感が当たったんだと思った。

アーノルドにも『ゼゼレブ』の意味は分かったみたい。そしてそれが意味するものも…。


それから、私は薬剤師として一番の窮地に立たされる事になるのだった…



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