レッツミニハリネズミーー!!
ー王となる覚悟を持つ者ー
父上を東の塔に軟禁して、階段を下ろうとした私の頭越しに呪いの言葉が次々と降りかかる。護衛騎士が魔術を展開するも無用と手を振ってこれからの事に考えを巡らせる(ふふ、私に呪いなど無意味な。この王家そのものが呪いなのだと言うのにまだ気づかぬとは…)
自室へ戻ると、戴冠への支度を整える。本来ならば、盛大に開かれるべきものは、宰相と私のみで粛々と行った。
ルーベント精霊強国第百十八代王となった瞬間だった。
「王様。ご指示を」
跪く宰相に最初にした命令は…
『神殿の国営化』
神官長の更迭、神殿の縮小など多岐に渡る。
顔を上げた宰相の満足そうな表情に微かに頷く。
護衛騎士の無表情を眺めてながら命令を下す。
「良いか、お前の護るべきものは…」
机に向かうと、紙を一枚取り出して手紙をしたためる。
筆を置いた私は、遠い場所へと思考を飛ばした。
アレは、自分を知らぬ。とにかくおかしな力の持ち主としてしか認識していないから困り物なのだ。本当のアレの持ち味は状況把握能力に特化している事にあるのだ。だからこそ、私の持てる全ての力で逃したのだ。
窓の外は、薄らと明るさを取り戻していた。
夜が明ける。怒涛の一日の始まりだ。
『アーノルド。約束通りお前の帰れる場所にするぞ』
遠い日の約束が頭に掠めるも、扉を激しく叩く音がして現実へと戻る。
握りしめた剣を片手に王座へと向かう。
迷いの無い目の王の後ろを無言のまま護衛騎士が歩いてゆく。
ー雪菜視点ー
リカルドが帰ってこない。ま、予測通りだけど。
置いていかれたペペスさんは平気な顔で「信じてますから」の一言。
でも、私の嫌な予感は消えない。
リュカが消えたのが、この国を変えた気がするのよ。でも、私は諦めが悪いから。
そして欲張りなの…。
ミニハリネズミ達はいつの間か沢山集まっていた。今回は、サイラス達には見えない。
先程聞いた話を思い出しながら懐から篠笛を取り出す。
『丘の上に兵隊がビッシリと集まっいるみたいだ。戦が起こるのか…』
食堂へ飲み物を取りに行こうとして裏口に来ていた業者らしき人達の話を。
あの神兵さんの姿にここに居ないギャビン。
リカルドの女装とサイラスが私の横を離れない事。
「春川。お前さんが望めば我が主人《オゼルの大刀》と我らが力を貸そう。戦を止めたいのだろ?我らならば、それが可能だ」
課長の背中には見た事の無い大刀がある。
黒い獣もいつもより二回りも大きな身体から殺気を発している。
「そんな笛に頼るのは、無理だ。春川に何かあったらこの世界はそれこそ絶望に…」
課長の言葉を止める為に口に手で蓋をした。
「課長らしく無いわ。私は無謀な作戦なんて無い。諦めが悪いいつもの薬科営業二課の春川がいるだけよ」
え?
赤い顔??
しまった…呼吸出来ないのね、
慌てて謝る私は、課長の耳まで赤いのには気付かないままで。
でも、やるわ。
諦めが悪い女の執念を見せるわよーー!!!
レッツミニハリネズミーー!!!




