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森に囲まれた!  作者: ちかず
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再びゼロとなる日…


ーリカルド視点ー


ペペスと再び会えた。


正直言って、諦めていた。特に羽が崩れ出してからはペペスの存在すら感応出来なくて。

でも、奇跡は起こった。


雪菜…。


誰も信じられない。

ペペス以外の人間など、滅びてしまえ。。。とまで思っていた俺が誰かに感謝する日が来るとは。


そんな雪菜が倒れたので、街へと向かう途中で我々は信じられない光景に出会う。

それは、村人が神兵に引きづられていくその現場だった。

働き手を引きづる神兵に、家族が引き留めようと縋り付けば蹴倒すならまだしも、刀を抜いたではないか?!


止めようとした俺は一歩出遅れた。

そこには、皇帝としての威厳と刀を抜いてしっかりと対峙するギャビンの姿があった。

ここで彼が刀を抜く意味、分からない訳ではないだろう。

それでも、その眼には一つの決意が見て取れた。庶民を見捨てない。


「お主…まさかドルタ皇帝なのか…」掠れた声で刀を鍔迫り合い(つばぜりあう)男の額からは汗が噴き出していた。


「其の方ら我がドルタ国皇帝と知って尚、無体を働くか?それともここは引き下がるのか?」


低いけれど響く声は、村中を駆け巡る。

威厳に満ちた声に「者共、引けぇーー」と震えた声が響くと蜘蛛の子を散らす様に神兵は消え去った。


助けられた村人は、何故か恐れて近寄らない。この後の報復が恐ろしいのだろう。


すると、マティ殿が「我ら聖騎士団がこの村を守りましょう」と呼ばわるとようやくホッと息を吐く事が聞こえる。

緊迫していた状況を一変させたのは、やはり雪菜。


ブルーノが「怪我した人はいませんか?薬ならありますよ?[森の薬屋]の薬ですよ〜」

と、言った時だった。


「わぁ、凄いよお母さん。大好きな[森の薬屋]さんが来たよー」先程まで父親を引きづられ止めようと縋り付く母親の後ろで泣いていた女の子の笑顔の一言。


「本当に[森の薬屋]さんですか?滅多にこちらには行商に来ないのに…」

不信感のある母親の質問にブルーノが答えた。


「そうだよ。だって薬作ってる本人がいるもの。ほら、あの子雪菜だよ」


サイラスに抱かれたまま、意識を取り戻さない雪菜はピテレによると疲労のみで怪我など一切ないと。だが、意識のない雪菜をサイラスが殊の外、離さず大切に運んでいた。

時折、ギャビンの視線がそちらにいくのがわかり、苦笑いとなる。

ようやく自覚が出来たのか、と。

朴念仁だらけの団体に嘆息がでる。


そんな考え事の隙に、村人が近くに寄って来て雪菜を見てワサワサと騒いでいた。

何故だ?

雪菜の顔など知られていないだろう…あ!!!



お爺さんが手に持つ薬袋に書かれた[森の薬屋]の標記と共に似顔絵が…。フフサ殿。やるではないか。

いや、不味いのでは?


サイラスの顔を見れば、苦々しく笑っていた。やはり、この先の危険を考えると。


「我々には、国とか神殿なんかは遠い存在です。ですが、この[森の薬屋]だけは別だ。治癒魔法に手が届かない庶民にとりどれほど有難いものか…」そう言って雪菜の近くで涙ぐむ老人はこの村の長老だった。


休憩させてもらいながら、事情を知り一同嘆息が出る。

そんなにも緊急事態になっていたとは。

黙り込む我々に打開策がサイラスから示された。


「アーノルドから乳母のハンナ殿の話を聞いている。困った事があればそこを頼れと。雪菜殿もまだ意識が戻らぬ。そこへ向かってはどうだろうか?」と。


その台詞に一同異議なしとなるも、ギャビンのみ別行動にする。とにかく、ここで名乗ったのだ。ドルタへ使いを飛ばしてやる事が出来たと微笑むギャビンには目論みがありそうだ。




そして…。


雪菜が目覚め、ハンナ殿の家に神兵が乗り込んで来た。


そろそろ俺も役目を果たさねば、な。


「神兵様。お待ち下さい。

私、雪菜様の側仕えをしておりますフレアと申します。雪菜様の事でお耳に入れたい事がございます」


ボーッと俺に見惚れていた神兵も、雪菜の名前にピリッとした。


さて、ゼロとして始動しますか…

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