ココは何処?
ー雪菜視点ー
は、ここは何処?
見慣れない天井は、何処か懐かしい感じがした。そうよ…ベルサイユ宮殿とかああ言う感じで…。
んん??
私どうしたんだっけ…。
確か幻影園の跡地で争う二人を止めようとして…はぁっ!!!!
ヤラカシタ。
完全にヤラカシタました。
サイラスに抱きついて泣きました。間違いありません!!私ってば、まさかの主人公的振る舞いをしたわ。あぁ、合わせる顔がないとはこの事ね。
思い返したくない過去の自分に誰もいないこのベルサイユ宮殿風の部屋で悶絶していたら、トントンと扉を叩く音がした。
え?悶絶中だから、ダメって言っても良い??
言いたい…けど言いわけないわねよ。
諦めの境地を探しながら
「はい、どうぞ」と返す声は震えていてビビまくっているのが丸わかり。
あーー。。。入って来るのがサイラスだったらどうしよう。
逃げようかな?
ダメよ。だって寝巻きっぽい格好だもの。
んん??
アレ?私、いつの間に着替えたの…、
うわぁーー!!!悶絶する内容増やしてどうすんのよ、私。
頭を抱えている私の上から声がした。
「あの。雪菜様。何やら葛藤中に失礼します。ご気分は如何ですか?」
その優しげな声に更なる恥の上塗りをしたと気づいた私は取り敢えず取り繕った笑顔で「大丈夫です」と反射的返事をした。
まぁ、日本人ならば無意識でもこの答えが出るわよね。
頭の中は混乱しててそれしか言葉が出ないのだもの、仕方ない。
とにかく、声をかけてくれた人を見ようと顔を上げたら…誰かしら?
見覚えのない、可愛らしいおばさんが笑顔満面でこちらを優しく見ていた(可愛らしいと言えば女の子と言いたいけどぶっちゃけおば様が限界なのよね…三十路もまあ仲間だけど…)
え?本当に誰??
混乱してる私は改めて可愛らしいおば様を見た。
暖かな笑顔は、そのふくよかな身体つきからも警戒心を解くのに充分で。
でも、それ以上に眼差しには私に対する深い慈愛の様なモノを感じる。
「雪菜殿様。息子がお世話になっております。
アーノルドの母でございます。」
えーー?
えっとぉ。大変申し訳ないのですけど似てない親子って感じで、お父様はめっちゃイケメンって事かなぁ?
「ふふふ。雪菜様は噂通り可愛らしいお人ですね。お顔に全部出てますよ?いいのです。お考えの通りアーノルドと私に血の繋がりはありません。むしろ身分さえずっと下になりますしね」
また、やったわ。私の顔っていったいどういうシステムなのよ。
更に大混乱している私を他所に、彼女は私の枕を直して寄り掛かれる様に整えてお茶をだしてくれた。お茶は、ほらベットの上で食べられるお盆みたいなモノに乗っているアレ。茶碗の中に広がる香りは恐らく鎮静効果のあるハーブ。
「飲みながら聞いてください。まずは自己紹介からでしたね。アーノルド様の乳母をしておりましたハンナと申します。乳母ですが実の息子同様に育てた経緯もありまして母と呼んで頂いております。最近の息子からの文には変化が。嬉しい変化ですよ。あんなに後ろ向きだった息子が夢を持って生きている。これほど嬉しい事はありません。改めてお礼申し上げます」
ハンナさんの目に滲む涙にはアーノルドへの深い愛慕の心情が見て取れた。その後深々としたお辞儀をされたのには慌てたわ。
私何もしてない!!それに年上の方からそんな…。
慌てふためる私を他所に、彼女は頑固に譲らない。
「いいえ。貴方様にお会いしてはっきり理解しました。どんなに息子にとり大切な方なのかと」
こ、困るわ。褒められ慣れていない私が目を彷徨わせていたらドアを叩く音がした。
「入るぞ、雪菜殿」
返事を待たずに入って来たのは皆んな。まさに勢揃いで。
アレ?ギャビンだけいない??
「ギャビン殿の行方が気になりますか?大丈夫です。無事ですし彼はここに居ないだけでドルタ帝国へ黙って帰ったりしてませんよ」
マティさんの引っかかる笑い方はともかく、元気そうで良かったわ。
「雪菜殿は三日間眠ったままで、心配しました。ブルーノが妖精から話しを聞いてくれるまでは…」珍しく口籠るサイラスに随分と心配をかけたとわかった。心の中でごめんなさいと謝る。彼は謝るのをいつも嫌がるから…。
それにしても、ギャビンは何故ココに居ないのかしら?ココは一体…
「雪菜殿。ココはルーベント精霊強国です。ギャビンとは確執のある国なので。隠れ家の方へと避難してもらいました。
まぁ、ココも避難場所ではありますが…」
マティの言葉にびっくりしてる暇はなかった。
「幻影園の消滅はこの国には大きな出来事で神殿と王室の対立から今にも内戦が起きるのではと大騒ぎなのです。アーノルドから困る事があればハンナさんを頼れと言われいたのでココへ」サイラスの言葉にキョトンとする。
それってもしかして…。
だって、幻影園は消滅したのってたぶん私達のせいで。だとすれば今の状況は私達のせい?じゃあ内戦って、私の責任なんじゃ。。。
バシッ!!!
い、痛ぁーー!!!
強い力で、肩を叩かれた。叩いたのは目を三角にして怒るハンナさんで。
何で??
「雪菜様!!このルーベント精霊強国の問題全てを貴方が負うのですか?長年の色々な出来事を全て背負うのは少し傲慢なのでは?
聞けば幻影園の消滅もそれまでのながらも貴方様あっての事。それはこの世界に住む者にとり感謝する事であって後悔されるべき事ではありません」
最後は静かに諭された私は俄かに恥ずかしくなる。確かに短慮だったわ。
ココに来てから色々な出来事があったから。
ルーベント精霊強国の勉強もしてないのに。
でも、アーノルド故郷である国で内戦はダメよ。絶対…
考え込む私を見つめるハンナさんの目に慈愛と感謝があったのを私は分からなかった。
何故なら…その時この家の玄関を激しく叩く音がしたからだ。
そして、その音はコレからルーベントでの様々な出来事に巻き込まれる開始のベルだったから…。




