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森に囲まれた!  作者: ちかず
158/233

決闘の結末?!


ー雪菜視点ー


「サイラス。二人を止めたいの、力を貸して!!」


二人の決闘騒ぎに笑顔すら浮かべるサイラスへ駆け寄ると腕を引っ張って頼み事をした。

早くしなきゃ。

ものすごーく強いギャビンと悪知恵の発達した課長では、相打ちとかになるかも。

考え始めた思考はどうやら悪い方向ばかりに発展する。


冷や汗をかいて頼む私がサイラスの顔を見上げ…はい!!そのままストップです。

何その笑顔?!

この緊急事態に何故その笑顔?


「サイラス。

貴方は知らないかも知れないけど、課長は剣道を嗜んでいるのよ。しかも、オゼルの大刀の力も使える。ギャビンは刀がないでしょ?

このままじゃ…」


いや、貴方。私の肩をポンポンしてる場合じゃないって説明してるでしょ?

聞いてる??


「雪菜殿。貴方のお願いならばいつ如何なる時でも俺の全力を持って応えます。

しかし、これは取り越し苦労と言うもの。

ドルタ帝国史上、最高の皇帝と言われる彼は我々聖騎士団から見ても全ての実力を測りかねるそんな人物です。しかも、相手の神鳥殿はオゼルの大刀の申し子。言うなれば雪菜殿の眷属です。無茶など…」


えっ?まさかの失笑を買ったの??

サイラスならば、聞いてくれると思ったのに。


「じゃいいわ。マティさんに頼む…」「引き受けましょう。団長を煩わすまでもないです。何でもします!!」


解せぬ。失笑からの身代わりの早さ!!


。。。

は!!そうか。


団長が怖いと言うところね。

なるほど、誰でも怖い上司や苦手な人がいるしね。サイラスにも怖いモノがあったのね。

あー。こんな暢気な場合じゃないわ。

嫌味の応酬が終わったみたいで、ものすごい殺気が立ち込めてる。素人の私だって分かるわ。


ん?

何故二人とも私の方を見てるの?

もしかして止めようとしてるのに気づいてる?

さすが…達人ね。


「サイラス。二人の頭の上から大量の水を降らして欲しいの」


あら?サイラスの顔が俄かに曇ったわ。

無理かしら?

魔法があれば…


「雪菜殿。多少の水ならば出せますが大量の水を出すのは今は誰も出来ません。『雪星の雫』の話を覚えていますか?アレはこの世界の水を生み出すモノ。あるべき場所に無い今、水魔法も封じられている状況でして…、力になれずすみません。お詫びに今から二人を止めに…」「やめて〜。分かったわ。違う方法を探すから」


あ、危なかったわ。

決闘が修羅場になるわよ。

サイラス程の実力者まで加わったらもう、混沌よ。

でも、どうしよう。

水以外の方法なんて。


ん?

何??

バサッ??


「丸ちゃん?えっ?任せとけって??」


沢山の丸鳥の群れのお陰で、空に模様が出来ていた。鳴門のうず潮みたいな不思議な模様。



ん?

まさかの穴??


模様のうず潮のほぼ中央に黒い穴みたいに見える場所が見えた。


『避けて〜雪菜。いくよぉ〜!!』



ギャァーーーーー!!!!!


滝が降ってきました。

穴から大量の水の滝が…。

いや、アレは既に滝じゃないわ。


水柱。。。


間一髪でサイラスが私を抱き上げて跳んだから良かった。怖かった…。

もう!!

丸ちゃんてば、手加減が…は!!!


「ギャビン!!!課長!!!」


水柱よ。あの中にいたら間違いなく…。

涙がブワッと溢れて声すら出ない。

震える私をサイラスがそっと抱きしめる。

思わず胸に顔を埋めて嗚咽が漏れる。。



「サイラス。何を役得をしてるのだ?先程の仕返しなのか?」


幻の声まで聞こえる。


「そうですよ。我々があの程度避けられないはずはないですから」


課長の声まで幻に加わったわ。


グスッ。。。ん??


ガバッと顔を上げて覗き込まれていた顔が目の前過ぎて固まった。

ギャビンと課長が超至近距離で覗いて!!!


「ぎゃ!!」


私の思考回路はここで、ぷすんぷすんと音を立ててショートしました。


要するに気絶により逃亡成功?!という訳です!



ーサイラス視点ー


ギャビンと神鳥殿の睨み合いに、互角かと実力を測っていたら腕を突然引っ張られて驚いた。


何故なら雪菜殿だからだ。


奥ゆかしい雪菜殿はあまり我々に近寄らない。抱き上げた時など固まる様など可愛らしさを越して気の毒にすら思える。

純真さは雪菜殿の魅力の一つだ。


しかも、非常に珍しく『お願い』をしたいと言われ思わず顔が緩むのを必死に食い止める。


内容がまたもや雪菜殿らしい。

決闘を止めたいと。

二人の決闘など、危険があろうはずもない。お互いの実力などほぼ筒抜け。実力はこの世界でもトップクラスなのだ。

無駄な戦いをする訳でない。雪菜殿への想いを拗らせて…ま、私とて人に事は言えないが…。


何とか断ろうとしたらなんと、マティに頼むと言われて慌てた。

こんなに可愛らしく『お願い』をされたのだ。誰にも譲れるはずもない。二人には恨みはないが雪菜殿の作戦を実行しよう。

いや、するつもりだった。

内容が。。。


今の我々には出来ぬ内容に忸怩たる想いに駆られていたらいつの間か丸鳥の群れが現れた。この群れが現れた時には必ず何かある。用心していたら、やはり…。


大量の水が空から降り降りる。

恐ろしい量の水から雪菜殿を守るべく抱き上げて跳びのけば、何故か雪菜殿の目から涙が??


二人の安否を心配する彼女をそっと抱き込む。二人は無事ですよ。一言だ。

言えずにいる自分に罪悪感が込み上げる。


しかし…だ。

胸に顔をすり寄せ嗚咽を漏らす彼女を柔らかく抱きしめる今、それは無理だ。

例え、誤解によるいっときの夢だとしても手放せない。はぁ、オレはいつからこんなに卑怯て臆病になったのか…、


しかし、夢の時間は長くは続かなかった。


ギャビンと神鳥殿がこちらの状況に気付いたからだ。


その後、あまりの急展開についていけない雪菜殿が気を失ったのを見た神鳥に雪菜殿を奪われた。オゼルの大刀の指示と言われ皆が従う事になる。疲労困憊している彼女を休ませるために人里へと向かった。


空虚になった両腕には、まだ暖かさが残っていた。俺はそれをそっと確かめながら山を下った。



気づいてしまった気持ちに目を逸らしながら…。




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