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森に囲まれた!  作者: ちかず
148/233

ペペスのカケラ…の危機!!


ーリカルド視点ー


ひ、開く…。

どれほど待ちわびただろう。


もうすぐだよ?

懐の中の感触を確かめる癖が付いたのはいつからか。

その感触が…感触がない?!



!!!!!


震える手で懐に手をやれば、カケラとなった羽が既にほとんど消滅していた。


ここに来れば。

『幻影園』に来ればペペスに再び会える。

そのはずが、消滅なんて…。



広がる草原に歓喜している雪菜達には、気づかれない様に出口を探す。

もしかして、ここを出れば羽は元に戻るのでは。そんな僅かな希望も打ち砕く声がする。


『ここは、特別な場所。

カケラには、超えられぬ狭間があるのだ。

諦めよ…それは最早単なる…』


祝卵から生まれた碧が出す声は直接脳へ届く。恐らく誰にも聞こえない特別な声。


の、はずが…



「えーーー!!!!

ペペスの羽に何かあったの??

そんなのダメ。

リカルドは…ペペスの事を一身に思い続けてここまできたのよ。

諦めるなんて、ダメ!!」

『そうは言うが、もう消滅したの…』

「そんな事ない!!

ほら、これ見て!!!」



手のひらに僅かに残った羽のカケラがいつの間か雪菜の手の中に。


一息で消滅しそうなカケラが、そのままの姿で留まっている?!

雪菜の…やっぱり雪菜の力か?


「何言ってるのよ、リカルド!!!

貴方に決まってるじゃない。どんだけペペスと共に居たの?ペペスも貴方と居たいから羽になっても頑張ってるのよ」


!!

羽が、羽が少し動いた様な気がするが…


『ほう。

ペペスとやらが応えている。

恐らく、何かがこの状態を守っているのだろうが、全く分からん』


雪菜が恐々返してくれた羽をそっと包み込む。


「まずは、挨拶をした方が良い。

私も一緒に行くから、サイラス肩を貸してくれ」


!!!


驚いた…まさか意識を取り戻すとは。

あれほどの満身創痍の状態で…


「マティさん!!

良かったわ。元気になったのね?

サイラスにヒメダキして貰えば良いのよ。

ね?

サイラスなら出来るわね?」


ヒメダキ?

聴き慣れない言葉に戸惑っているのは、サイラス以外の全員で。


あぁ、なるほど。

雪菜殿を抱き上げたやり方とは。

やけに頬を赤らめているのは、何故か雪菜のみでマティ殿は真顔で文句を言っている。


タフだ。

アレは本当に人間なのか?


「サイラス。雪菜殿に乗せられるな。

普通に肩を貸せば良いのだ。全く、お前は真面目が過ぎるのだ」


「やっぱりマティさんだって、コレのハードル高いのね…でも。私より密着度が低い様な…気のせいかしら?」


ぶつぶつと呟く雪菜の声は小さく聞こえない。

それより何処へ向かってるのか気になる。

サイラスは知ってるいるのか?


「マティ。

元気になったのは良いが、方向を示せ。

だいたいの方角しか分からん」


「ふふふ。

さすがだな、サイラス。

気の塊を感じるのか?


方角は合っている。但し、妖精族の場所は俺も知らん。

近づけば、俺に流れている血が教えてくれるだろう」


呆れ顔のサイラスがヒメダキ中のマティを眺める。


「カスカスの体力の癖に、相変わらずだな。

出たとこ勝負は、やめた方がいい。どれほど危険だったか。

お前…分かっているだろう?」


2人の話し合いが続く中でも、手の中にある羽のカケラが縮んでいる気がして背筋がゾワリとする。


歩きながらも、悪い考えを振り払う様に首を振る。

無駄だと知っていても、次々と襲う最悪の結末がどうしても頭から離れない。

そのせいで、危険の予測が出来ずいつの間にか警戒感が弱まっていたのだ。




だから、気付けなかった。




1人だけいない状態に。



それが一番厄介な人間だと、理解した時の焦りは全員同じで。


ただ…1人を除いて。


「まずは、マティだ。

そしてリカルドとペペス殿。

ここは幻影園。雪菜殿ならば必ず意味のある行動をされる。

信じて進もう。

時がない…」


マジか。

サイラスの口から出た言葉とは、思えない。

盲目的な信者じゃなかったのか?

雪菜殿、雪菜殿と。


力なく笑うマティ殿を振り返りサイラスの言わんとする事を理解した。


時がない…その意味を。




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