開かれた扉!!
ー雪菜視点ー
マティさんの容態が落ち着いてきて、ホッとしてのか腰が抜けた。
は、恥ずかしい…。
その場に座りこんだ私が動けないのに、最初に気づいたのはやっぱりサイラスで。
「雪菜殿。
申し訳ないが、失礼します」
きたーーー!!!
この世界のお約束なの?!
『姫抱き』
そりゃ…ラノベで読んだ時は夢想したわよ。
でもね、空想だから良いのよ!!
腕の中で、どんな顔すれば良いのか…。
空想と違ってサイラスの体温がじんわりと温かいのが余計に私の顔を暑くする。
うーん。。
干物の三十路にはドギマギが続いていたから、サイラスの足が止まった事も。
皆んなの緊張感も全然気づかなかったわ。
え?
何??
立ち止ったサイラスの身体から出る異様な緊張感でやっと前を見た私は、囲まれてる現状にまたもや慌てる。
サイラスの腕の中から、もがくように地面に降りると震える足で前に。
私が行かなきゃダメ。
私達を囲んでいるのは、ガーハレと慶ちゃんの群れ。
しかも、両方とも翅を広げて威嚇のポーズっぽいし。
怒ってる?
なんで?
「慶ちゃん。
どうしたの?マティさんは、もう大丈夫だし解決したよ?」
ピィーーーーーーーー!!!
私の言葉聞いた途端、慶ちゃん達が一斉に空に向かって鳴き声を上げた。
物凄く大きな鳴き声なのに、何故か耳も痛くない不思議に懐かしい鳴き声。
『待っていたよ。雪菜、よく来た。
ガーハレ、慶鳥よ。
今こそ道を開け!!!』
地の底から響く声はやっぱり聞き覚えはある。
思い出せないけど…うーん。。
「春川!!
今は考え事をやめて前を向くんだ。
開くぞ。
『幻影園』の扉が今こそ…」
顔を上げた私の目に映ったモノの景色を私はきっと生涯忘れない。
だってそれは、あまりに壮大な風景で…。
まずは…
空まで届く大木が一斉に花をつけた。
花からは、沢山の妖精が生まれては飛び回る。
地面が盛り上がって、根っこがクネクネと飛び出すとあっという間に扉のカタチに変化する。
まるで精巧な木彫りの芸術品の様な扉。
あ!!
慶ちゃんが飛び立つと、大量の羽を降らせる。
それは、七色に変化しては光を放ち消えてゆく。花火と言うには違う…うーん。
そうだ!!
まるで蛍の様にぼんやりと光って消えてゆく幻想的な風景にガーハレも飛び立つ。
大木の上をクルクルと回る。
それは一列に並んだと思うと、輪になる。
羽の風だろうか?
ガーハレからの風は、扉を揺らす。
ぎぎぎぎ…。
根っこで出来たはずの扉が、二つに分かれて。
眩しい過ぎる光が開いた扉の隙間から目を焼く。思うわず瞑った目蓋まで痛いほどの光。
『雪菜。
さあ、目を開けて。
ようこそ幻影園へ…』
私は、別世界に立っていた。
そう、言いたい。
大木も。
根っこの扉も。
ガーハレも慶ちゃんも。
誰もいない草原。
風が草をたなびかせ、七色以上の色取り取りな花々が咲き誇る。
それ以外何も無い場所。
360度地平線の草原に、今私と仲間たちが立っていた。
まさかここが『幻影園』…?
『そうだよ。
ようこそ、雪菜。』
出たーーーーー!!!
目の潰れそうな美形!!!
エルフ??
背中に羽が!!!
ん?
見た事ある羽のような…
『やだな、雪菜。
名前つけてくれたジャン。
碧って名前』
金髪金目のスーパー美形。
まさかの碧???
次々と色々な事が起こり、驚く私は気づかなかった。
リカルドが何かを抱きしめて涙目だった事に。
羽が段々と消え始めていた事に…。




