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森に囲まれた!  作者: ちかず
135/233

アンタが言うな!!


ー雪菜視点ー


空はぴーかん。

気持ちの良い晴れよねぇ…って言うにはこの状況は不味いわ。


かなり暴走気味で突き進んでお陰なのか(代償は高いけど…え?お尻??いえいえ。もう顔も…ねぇ)ルーベントにかなり近づいた。


それで理解出来た。

『雪星の雫 』が無くなった意味を。

水不足の恐ろしさを。


チビチビ飲んでいた飲み物ももう後僅かと周りを見れば護衛の皆んなは全く水分補給をしてない。


あれ?

いつから…あーー!!


もしかして、私だけが…。


「また、おかしな事を考えてるな?

お前が、特別脆弱なんだ。この扱いは当然だろう」

課長の声は呆れ混じりだけど、それが課長特有の慰めだと言うことは知ってる。

でも…。


そんな想いにふけっていた私に小さな声が届いた。


『雪菜さん。雪菜さん。ココです。

ココですよ!!』


可愛い声は、微かで場所が特定出来ない。

でも、確かに下の方からで。


馬から下を見た瞬間!!!



お、落ちた。。。



けど…ありがとう!!ゲラン!!!!

何という運動神経だろ。

何気ない風情で、落下する私を抱えてすっくと降りるとか。人間技か!!

と、ツッコミたいけどまずは声の主を…おぉ知り合いだった。


ちっちゃなハリネズミ君。

確か…『土の精』だったよね?


『良かった。ピテレ様の言われる様に鈍感だから気づかれないかもって』


ん?

ピテレ…何というか、まぁ的確なアドバイスですけどねぇ。

そりゃ、違うとは言いにくいと言うか…。


『ですからーー!!

ちゃんと聞いてください!!

大ピンチなんです。とにかく急いで…』


「きゃあ!!ミニハリネズミちゃん!!」


叫んだかと思えば急にパタリと倒れた土の精、ミニハリネズミを慌てて抱き上げる。

えーと、えーと。

どうすれば…


は!!


そうよ。

確か元気づけには祭りだったような?


音楽しかない!!

万国共通だものね。


フンフンフン♪♪♪〜

あ!!!!!


更にミニハリネズミが苦しがり出した!!!!


「ギァーーーーー!!!!!」

思わず悲鳴を出て、思い出したわ。


わ、忘れてたのよ。

私ってば音痴なの、すっかり忘れてました。

ごめんなさい!!


「ほら、春川の特技は立ち直りの早さだろ?

これが必要だな?」


笛ーー!!

課長ってば、気が効くゥ。


苦しむミニハリネズミを胸元に入れて笛を奏でる。

祭りではなく、童謡にした。

元気になります様にとの願いを込めて。

お婆ちゃんに習った通りに。


ボンッ!!!!


胸元から零れ落ちる様に登場したのは…


まさかのピテレ??


『雪菜。歌はヤバかったよ。

そうだね、この姿はある意味僕の分身かな?

土の精は、僕と近しい存在でね。分身して身体を貸してくれる…そんな気質があるんだ。

ちょっとヤバい事になって、慌てて彼らに頼んだんだ。まぁ、能力自体を分身させたと言うのが正解かな?』


ええーー!!

ミニハリネズミ君ってば、やるわね。

それにしても

やっぱり、サイラスやブルーノ達にピンチが?!


『うん。詳しくはこの人達にも説明しなきゃね。すっごく驚いてるよ?』

ピテレ分身の声に振り向けば確かにゲランさん達のびっくり顔が目に入る。

見えてるの??


『隠れる程の力はないからね』と。


「春川。とにかくココは目立つ。宿屋へ」

課長が珍しく慌てた物言いだったけど、遅かったみたい。

近くの街の人達がいつの間にか周りに集まってたし。


何で?


「雪菜殿。貴方の笛の音です。アレを聞けば誰しも家から飛び出しますよ。」

落ち着いたバレンの言葉にホッとした。

まさかの、音痴のせいかと。。。


「お願いです。

巫女様ですよね?水乞いの祈祷を頼みます!!!」

え?ミコ??


「皆さん。この笛は特別なのは認めます。

しかし、この方は水乞いは出来ません」バレンの言葉は、聖騎士団の団員の言葉。

納得して、皆んな帰って…ん?

スカート引っ張るの、誰?


「お姉ちゃん、お願い。

水頼んで。皆んな困ってるの。

このままじゃ枯れちゃうから…」


枯れる??

この女の子ってば、何故??


「春川。お前目が見えてるか?

彼女が人間の訳ないだろ?ほら…」


頭が黄色から?

えー?この世界ってば髪色自由じゃない??


「はぁ。あのなぁ…もう少しちゃんと、あ!!」

課長の言葉に振り向けば…黄色の髪の毛が茶色に変化し始めて。


『雪菜。花の精は水不足で枯れそうなんだよ』ピテレ分身の言葉に納得がゆく。

確かにお花だわ。。。



足元が根っこだもの。

根っこは、パサパサだけど。


何とかしてあげたい。

でも…。


「雪菜殿。これを…」

ゲランの差し出す水筒は何??

さっきのが最後じゃないの??


「いえ。緊急事態用です」

と、言いながら差し出された水筒をその子にかけようとして躊躇う。


根本的解決ではない。

いずれ…。


雨が欲しい。

井戸が欲しい。


「低気圧とまでいかなくても、雲の塊があればなぁ」課長が呟く。


でも、無情にも空は綺麗なぴーかん。。。

雲はずっと遠いし…あ!!!


「慶ちゃんーーー!!!!」

呼んでみる。

他に手がないもの。


慶ちゃんがいれば、私の作戦も…。

ぶつぶつと考え事をする私にゲランの叫び声がして顔を上げれば。


慶ちゃん!!!!!


ありがとうーー!!

もう。本当に有難いの一言。


一言だけど…あのぉ。

数がね。ちょっとやり過ぎ感満載だよ?

空はぴーかんどころか、隙間なく慶ちゃんだもの。


「凄い。噂には聞いていたが本当に慶鳥を」

ぶつぶつ言ってる課長は放っておいて。


「慶ちゃん、頼める??」

リーダーの慶ちゃんが頷くと。

一斉に慶鳥全員が、空高く舞い上がると、

一定方向に、羽ばたきを始める。


「春川ぁ。お前まさか雲を自分たちで動かすなんて無謀な事、考えてないよな?

まさか、その為に慶鳥をこんなに召喚した訳じゃないよな??」


やだわ、課長ったら。

自分たちなんて無理。

だから、慶ちゃん呼んだのよ


それに、慶ちゃんはやる気だもの。

目がキラキラしてるし!!


ほら!!

ちゃんと雲を…「失礼します、雪菜殿」

空を真っ黒な雲が覆い尽くしたその時、また姫抱きでゲランが走り始める。


いや。もう悟りました。

この人達は、人助けには『姫抱き』しかないー!と思ってるな。


大雨になり嵐になりそうな雲に、慶ちゃんのほどを知らないさを思いしった私は思わずため息。



え?、何??

ピテレと課長が何で喧嘩腰なの?


『だから、僕の言った通りだろ?

これこそ、雪菜なんだと』


後ろの激論は、ミニハリネズミと課長のやり取りで。

雪菜について語るとか…普段なら慌てるけど、

でも今の私にはそんな余裕は無い。


だって。。

慶ちゃん…。

これじゃ、もう嵐。

止めるスイッチがわかんない。

張り切る目のキラキラが止まらないし。


あ、

凄い早さで宿屋に辿り着いたその頃、ようやくやる気スイッチが止まったらしく。


良かったぁ。


『では、また呼んでくれ。力はいつでも貸そう。その時もまた、笛を頼むぞ!!』

ええーー!!


笛??

まさかのこの雨ってば、私の笛のせいなのーー??


満足そうに、豪雨の中を問題なく突き進める慶ちゃん達を見送りながらまたもや、ため息ひとつ。



「やり過ぎだって…」

ふぅ。





その時…。

護衛一同が「いや、アンタが言うな!!」の言葉で一つになったとか。。。。



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