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森に囲まれた!  作者: ちかず
133/233

ブルーノ…誘拐される!!


ーサイラス視点ー


進むべき道は見えた。


ルーベント精霊強国とドルタ帝国の境にある高山。

その山こそ、リュカ様の領域。

我ら人には越えられぬ場所。


だからこそ、その麓も選ばし人間のみが村を作る。



盲点だ。

まさか敵方がその村を利用するとは。

不可侵の決まりを破って…。



『ゼサリンの花』

そして、顔に斑らの模様を持つゼルフ殿。


毒を盛られた。

更に解毒剤は、無いと言われる。


だが、カリフ殿はまさかの一手を打った。

マティの『緑葉の光』に一縷の望みを繋いだのだ。

そして…利用された。


とにかく、敵のアジトは掴んだ。


ん?


ブルーノ??


「俺…一緒に行くの辞める。

雪菜のところへ帰る…よ」


何故?

その顔は…怒りなのか?


「俺、親方に叱られる。

こんな奴らと仲間になったって…」


リカルドが笑う。

「やっぱり餓鬼は餓鬼だな。

阿呆は放っておいて、アジトへ突っ込むぞ!

マティの手がかりを掴むんだろ?」


おや?

リカルドには理由が見えてるのか。

真っ赤になったブルーノが地団駄を踏む。


あ!

そうか…彼は妖精は見えても刀の方は恐らく。。。


「すまない。

説明不足だった。あの刀は特別で詳しくは話せないがあの男に怪我をさせてない。

解放してつもりだ。」


ダメだ。

キョトンとしたブルーノの顔に、意味不明と書いてある。


うーん。

チラリとリカルドを見ると苦笑して話してくれた。


「あのな。

アイツは自分の主人を助けようと『服従の誓い』をさせられていたんだ。

アレをかけられると二度と逃げられない。

それを解いたんだよ、サイラスは。

ほら?血も出なかったろ?

敵を欺く為に捨て置いて去ったんだ。

恐らく…今頃は反撃に出てるだろう」


リカルド…嫌いなのか、カリル殿を。


「彼の王が『ゼサリンの花』を盛られたらしい。解毒剤が無いのを知った彼がマティの持つ『緑葉の光』を盗もうと奴らの一味となったのだ。だが、アレは雪菜殿へ…だろ?だから彼は自滅を選んだ、という訳だ」


首を傾げた彼に不安を覚えていると、突然走り出した。


やっぱり、無理か。

ブルーノは、雪菜殿へ託された一人。

彼は特別だと雪菜殿はよく話していた。


「あの子は愛されてるのよ。

薬草に…いえ、毒草にかな?

深い知識はあの年では天才の一言。

その上、ピテレでしょ?きっとここへ来たのは理由が…」


薬草園を手伝うブルーノを目にした雪菜殿のセリフが思い出される。

彼一人では心許ない。

今は先を急ぐが、探すしか。


「リカルド。

右手方向を頼む。

俺は左手方向を探しにゆくから。

彼は土の妖精の加護持ちだから本気の移動は距離を出すぞ!!」


リカルドが珍しく大きな声で笑う?

何故?


「ほら、見てみろよ。

こっち来るよ…坊やがさ」


笑顔で走ってくるのは、確かにブルーノ?

手に何か草を握って走ってくる。


「言ってくれよ。

この分野じゃ俺が一番だ!!

ほら!!」


差し出されたのは、何処にでも生えてる雑草で。

何?何の分野?

今夜のご飯かな?


あ、また膨れた…。


「だ・か・ら!!

『ゼサリンの花』の解毒剤だよ。

これで大丈夫。俺なら一晩で作れるから」


!!!!!!


油断したのだ。

こんな道端で理由を話せなくても良かったのに。


敵方の目を侮っていたのだ。


だから…。


「そいつは困るな。せっかくの作戦が台無しだろ?なるほど…トトラルの秘密兵器は凄い威力だ。

さあ、こっちへ渡して貰おう!!」


何という卑怯な。

近くを歩いていたのだろう。

街の女性を人質に取った敵は、ブルーノへこちらへ来るようにと。


ゆっくり話して時間を取りつつ、間合いを詰める。リカルドならば…あ!!!


走り込むブルーノが女性を突き飛ばす。

「逃げろ!!早く!!!!」


待って欲しかった。

彼の真っ直ぐな性格を読みきれなかった痛恨のミスだ。


一瞬でブルーノを奪った敵方にガブゼを刀から千切って投げる。


ピタッと付いた瞬間…その場から敵方と共にブルーノの姿も消えた。


リカルド?

近くにいたはずのリカルドも消えていた。


もしかして、跡を付けて…と思ったら。

まさかのカリル殿?!


刀を首に突きつけて「聞いてたんだろ?付けてきたんだから。お前ならやると思ったさ。

で。今の奴…知ってるな?」


「まずはサイラス殿に礼を申し上げる。

この御恩はいずれ…。それにあの少年を攫った奴は顔を知ってるに過ぎん。

以前は俺のお目付だった。

俺がくたばったと思い、お前の跡を付けたのだろ?ゼロ…腕が落ちたんじゃないのか?」


同族嫌悪なのか?

とにかく、ここまで回復する彼の意地に驚く。


恐らくは、身体を動かすのさえ激痛だろう。

リカルドもそれを知っていて、あれだからな。


ブルーノは、ピテレの加護持ちだ。

今すぐに危機的状況には、ならない。

今度こそ。


今度こそ…場所を変えて作戦を練るしかない。

彼だけがゼルフ王の命綱なのだから…。


それは、恐らくマティの命綱でもあるだろう…。



ー雪菜視点ー


ゆ、揺れる…。


前は良かったわ。

馬車はちゃんと席があったもの。


でも、急ぎたいと言ったのは…私。

まさかの馬とは。


ゲランさんに抱き抱えられて怖くはないけど…お尻がね。


乙女のお尻の危機は誰にも言えないし…

(とにかく痛いのよ。乙女の定義は…ともかく…ね)


それにしても、課長とゲランさん達の仲の悪さは一級品ね。


誰が私を乗せるかで、あれほど揉めなくても…(ちょっと浮かれたとか、ないから!!本当だから…)


結局、レジーの一言で決まり。


「雪菜が決めれば?」


もう!!

レジーめ。


全員の熱い視線に耐えるのって、干し女にはかなりの難業だから!!


「じゃ、ジャンケンで…」


あれが精一杯です!!



勝ったのは…ゲランって訳。


馬上で揺れながら、懐の熱い石に心の中で囁く。

『待っていて…ね。サイラス!』と。



この後…ジャンケンが『聖騎士の勝負(デーア)』なんて名前が付いて流行るなんて知るはずもない。


ましてや…勝負の意味がまさかの女神なんて。。。


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