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森に囲まれた!  作者: ちかず
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野菜の山積みは…?

 沢山の足音が迫って来る。

 間に合わない…直感から最後の一芝居を打つことにした。


「陛下。貴方には本当に失望しました。

 このように、敵に付け込まれる甘さ。


 ですが、これまでお仕えしてきたご縁です。

 このまま、むざむざと敵に討たれるのはこの帝国の恥!

 さあ、何処かで野垂れ死ぬが良い!」


 転移魔法は、私の得意技。

 この世界に於いて僅かな人間にしか出来ない究極魔法。

 まぁ。

 だからこそ、私のような庶民が陛下の側仕えとなれたのだが…。


 血だらけの陛下を一人行かせる事に一か八かの賭けだ…後始末がある私はそのまま行く訳にはいかない。


 消えゆく陛下の姿を見る事なく、そのまま敵と対峙する。

 毒を盛り弱った陛下を闇討ちにする輩…。


 では。

 私の最後の奥義をお見舞いしよう。

 例え…相打ちになろうとも…。






 ー大森林の前ー



「おい。またあったぞ。

 コレ…野菜がやたらとデカくなってないか?」


 野菜の山積みの前でサイは唸る。

 大森林の前にあるバーラドは王都から見捨てられた村だ。


 もうすぐ大森林に飲み込まれるだろうと王都の貴族達は予測していた。


 それでも。

 この飢饉の中にある《ルスタ国》には村人を助けるどころか、逃す場所など無い。


 本音は、貴族や王族達にとり小さな村など気にもとめてない。と言うべきだろう…。


 その村の村長こそサイだ。

 飢饉に苦しむ村人の一人が、ある日サイのところへ飛び込んで来たのだ。


「村長!!

 大森林の前に。とにかく早く!!」


 全く要を得ない村人に引き摺られサイは大森林の前に来て固まった。


 コレは…。


 美味しそうな野菜の山。

 もう何日も満足に食べてない村人にとり、それはご馳走の山。



 だが。

 大森林は、我々の敵。



 その日はとにかく、そのまま帰る事にした。

 見つけた村人は、名残惜しそうに何度も振り返っていたが。


 だが、それは翌日も。翌々日も続いた。



 。。。


 まぁ。

 結論から言えば、まるっと頂いたのだ。


 背に腹はかえられぬと。

 その美味い事!!


 今まで食べていた野菜は、なんだったんだ?となるほどの濃厚な甘みや旨味。


 更に、野菜の種類も量もどんどん増えて行く。

 今日などは、なんと巨大化とは。


 コレで味は大丈夫なのか?

「美味いです。コレ。今までよりも甘みがある。

 あー。こんなにお腹いっぱいになる毎日が来るなんて」


 噛り付いていた連れであるバーナは涙脆い。

 もう、泣いてる。


 まぁ。バーナは親を飢餓で失くしてるから。

 無理もない。


 実はこの野菜。

 バーナと二人で秘密にしていた。


 村人には、村はずれの畑が珍しく豊作だと嘘をついていた。


 だが、段々増える野菜や果物は二人で運ぶのもやっとに。

 二人が必死に両手に抱えていたら、ガサッと音が!!



 不味いぞ。

 大森林の近くだから、魔物など出ないと高を括っていたのに。



 真っ青になりながら、二人が振り向いたら…。



 なんと。



「村長!

 やっぱり、こんな事だったんですね。


 おーい。お前たち手伝ってくれー!」


 村人達が、笑顔で集まっていた。


 嘘を見破られ、無言のサイに。


「村長。嘘が下手ですね。

 俺たちの畑如きで、こんな美味い野菜を大量に作るなんて無理ですって。


 皆んなと話し合ってたぶん大森林の事だろうって。俺たちは、王都の奴らとは違いますよ。

 大森林の事だって。


 恨むのは、違うと分かってます。

 ただ、森を怖いと思う気持ちは、まだあります。

 でも!!

 この美味い野菜は、俺たちの命の恩人です!!

 本当に」


 笑顔だった村人の目に涙が。


 命の恩人…その言葉に嘘はない。


 暫くして「さあ!俺たちも手伝うぞー!」と掛け声が上がり皆んなで野菜を運ぶ。


 だが。

 そんな平和なの毎日に、再び危機が訪れた。


 村人が次々と高熱に倒れたのだ。

 その伝染力の強いこと。


 高熱は中々下がらない。

 この辺りに、治癒を出来る魔法使いはいない。

(魔法使いを頼むのは、高価な対価が必要だ。だからまず無理なのだ…)



 サイは隣町や王都へ助けを求めてた。


 返ってきた答えは。。


「隔離」「村外へ出る事を禁ず」


 あまりの酷さに言葉を失う。


 絶望に苛まれるサイは頭を抱えてた。

 ふと。


 あの野菜が目に入る。



 そうだ…

 大森林の野菜をくれる魔女に頼めば…。



 大森林の前にひとり跪きひたすら祈った。


「お願いです。我ら村人をお助け下さい。虫のいい話だと思います。

 罰は私が受けますから、どうか村人だけは。

 せめて村の子供たちだけは、お助け下さい」


 彼の真剣な祈りは、ずっと続いた…。



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