サイラス達が捕らえた者は?
ーサイラス視点ー
満身創痍ながら、一人残した敵方はまさかの人物で…。
「何故だ。
何故アンタが敵方に回るんだ?」
そこに居たのは、ルーベント精霊強国の第一王子ゼルフ殿の側近カリル殿か?
いや、ゼルフ殿は今や王であったか…。
「驚くのはソレか?
私が今ここに居る事ではないのかな?」
人を食ったような笑顔は確かにカリル殿だろうが…。
「それより答えられよ。
何故我等を狙われた?回答によっては容赦はせぬ」
急いでいるのだ。
マティを助け雪菜殿の元へ馳せ参じる為にも情けはかけられぬ。
カチリ。
刀の刃を喉元に当てながら、声をかければせっかく捕らえた敵方がグラリとよろけた。
危ない!!!
「ふぅ。所詮我が身ではお役に立てぬか。
頼む…同じく忠誠を誓う者同士。情けでどうかこのまま…」
やはり…自害を試みたのか。
では、やはりゼルフ殿に関わる…ん?
「やめなよ。
俺の前で三文芝居は通用しないよ。
ほら、これで分かるかい?」
「まさか其方はゼローー!!!!」
リカルドの問いかけに先程までの殊勝な雰囲気は消え去り、烈火の如く怒りに震える様子にまた、騙されたかと少し落ち込む。
どうも、雪菜殿が絡むと冷静さを失う。
これではマティも助けられない。
「ねえ、リカルド。
この人にコレ渡して」と、ブルーノが差し出したのは雪菜殿の薬草。
拒絶するかと思いきや、一気に飲み干した。
そして、更に怒りの表情になる。
何故だ?
「ふふふ。俺が渡したから毒だと思ったな?」リカルドが人の悪そうな笑顔でそう言えば。
「騙すとは…やはりゼロ!!!
しかし、私から情報が取れると思うなよ」
俺は刀を今一度彼に向ける。
「脅そうとしても、無駄な…な!!!!
え?
血が、血が一滴も出ない?」
精神統一して彼の胸めがけて刀を一差しする。
スッと刀は彼の胸へ。
驚きの声もそのままに…更に目を閉じて。
『応えよ。彼の身を通して真実を見せよ!!』
声は出さない。
敵方に知られる訳にはいかない『王者の刀』の真なる本質。
私の力に呼応し、更に限界値まで高める。
なるほど…。
彼がここまで三文芝居をするはずだ。
絶句中のブルーノと、ニヤけ顔のリカルド。
「此奴はもう役に立たぬ。
先へ進もう」
刀を引き抜いたその足で、再び馬に乗り駆け出す。
マティの居場所は分からずともゼルフ殿の居場所は分かったのだ。
ー雪菜視点ー
久しぶりの料理は気持ちの整理にはちょうど良かったわ。
閉じてしまった図書館。
まだ、不安定な『大森林』
あの扉へ出かけて行ったギャビン。
『オゼルの大刀』に神鳥課長。
。。。
考え事をしながら食べてたら、アーノルドが。
「雪菜。俺はここに残るよ。
もし、『大森林』に何かあれば話花で連絡するよ。だから、安心して前へ進んでくれ」
アーノルド…。
心強い言葉に笑顔で答えようとして。
「あちっ!!!!」
何?
胸の中に焼き栗が入ったみたいに超熱い!!
驚く皆んなの前でソレを取り出せば…石?
コレって何の石??
「あーーーーー!!!!
分かったわ。コレってレジーが持って来てくれた石!!
確か…サイラスがくれたのよ」
分かってホッとしたのは一瞬で。
もしかして…
『石の声も聞けるだろ?
辿れ、奴の道を…その先に望みのモノがあるだろう』
カンプフ?
「我も共に参ろう。進が良い」
突然、後ろからの声に振り向いて絶句した。
誰?
ううん…何??
神鳥課長改めて、蓮の横にいたのは真っ黒な獣??で…。
こうして…せっかく料理で落ち着いた私の心臓は、またもやバクバクし出す事になるのよ…ね。。。
ふぅ。




