予想外の出来事…(アレロア視点)
ーアレロア視点ー
囮作戦…。
もちろん、聖騎士になった時から気持ちは定まっていた。『雪星の雫』の行方をマティに伝えるまでは。
結果は、相打ちに近かった。
辛うじて双方、命があったのは類稀なるバズール隊長の腕前と凄まじいまでの気迫の賜物だった。
ボロボロの我々の前に見えたのは、光そのもの。
他の者には見えまい。
雪菜殿の身体から放たれる光を。
アレは恐らく祝卵の加護。
雪菜自身も気づかないが雰囲気が変わっている。
そのお陰だろう。薬の威力が増していた。
安堵の私の元に、団員から突然の報告があった。
不審者がいると言うのだ。
敵方が異世界人と聞いた時も唖然としたが、まさかその中に不審者がいるとは。
アーノルド殿では、心許ないと同席した。
アレは、不味い。
分かってやってるだけにタチが悪い。
己を悪者にして、親玉への視線を逸らす。
狙いは理解した。
だが、雪菜殿をその為に使うのはやはり異世界人。
いや、アレも雪菜殿の性質を知る故か。
はぁ、何とタチの悪い賢さだ。
しかも、あの目。
雪菜殿が気づいていないが、アーノルド殿がいきり立っているし。
その場を収拾すべく、全身の痛みを堪えて立ち上がり睨みを効かせれば.なんと!!!
バンブル殿か?
なるほど…雪菜殿に『オゼルの大刀』が渡った訳が理解出来た。
「手が熱い!!」
雪菜殿の叫びに反応したのも、バンブル殿。
小さな鍵を手のひらにつければ、手のひらの小さな箱が開いた。
箱の中には、小さな玉が。
「あーーー!!!」
雪菜殿の叫びは、当然だ。
玉は、『オゼルの大刀』の中に吸い込まれたのだから。
アレこそが恐らく…。
「説明せんと不味い雰囲気だな。
魔剣と言われた『オゼルの大刀』を打ち直すのはワシと言えど命賭けよ。
そこで鍛冶屋に伝わる秘伝でその中ある魂を箱の中に移し替えた。
ん?
もちろん、魔剣自体の了承の下。
それを誘拐の時、店に転がした。
万が一、悪用されるのを防ごうとな」
拾った主が雪菜殿でなくば、結果は全く違うモノになっただろう。
「ええーー!!!
でも、あの剣ってば色々凄い技を出してたって聞いたけど?」
「いや、アレで済んで良かったと言うところです。もし、完全体であったならば「大森林』の半分は消しとんだかもしれません」
俺のセリフに最も驚いているのは、バンブル殿か。我々の情報網を侮らないで貰いたい。
それに、私は魔法使いとしての聖騎士。
「あ、待って。
そんなの…困るわ。あっ!!!!」
魔剣?
雪菜殿??
いったい何が?
突然、雪菜殿の身体の中へ魔剣が吸い込まれて…雪菜殿が変化した??
『我が名はオゼル。
其方は、異界のモノか?
なるほど…いよいよ扉が開かれる時が迫ったのだな。
まずは、幻影園へ向かえ。
そこで、其方たちの探し物も願いも叶うだろう』
何と…。
本当に雪菜殿の周りは予想外の出来事ばかりが起こる。
話終わった雪菜殿の掌には、また小さなナイフとなった『オゼルの大刀』があった。
「もう!!!
借りるならちゃんと話してから…ま、分かるけど。
神鳥課長。
どうします?
『雪星の雫』の交渉は挫折しましたよ?」
笑ってる?
まさか…
「神鳥課長ーーー!!!!なんで?
なんでーーー!!!!」
彼女の叫びと同時に異世界人はその場に倒れた。
「春川…その魔剣を保持するのに生命力そのものが必要でな…。
一つの賭だったのだ。
俺は…負けたのかも…しれ…ん」
雪菜殿の腕の中に気を失う異世界人の頬を雪菜殿が叩いた。
「課長ーー!!!
そうやって勝ち逃げ風なのばかり。
ズルイです!!
絶対助かる…ん?そうなの?
分かった!!!」
半泣きの雪菜殿が必死の途中で『オゼルの大刀』が手のひらから光を放ち出した。
雪菜殿と魔剣の声が混ざり合う。
『「我、この者に分け与える。
魔剣の従者となり、生き延びよ!!!』」
光はやがて、二人を包んで眩しさで誰もが目を開けていられない。
光が収まって、現れたそのモノは…。
予想外の出来事。
またもや。。。




