闇の本質とは?
ーゲルガー視点ー
闇の妖精と言われて生きてきた。
でも、正直向いてない。そう思ってた。
人が好きで。
光が好きな自分が闇の妖精である事を恨んだ日もある。
でも、闇の精霊王の魂が身体に入り込んだあの時…。
闇の本当の意味を知った。
だから、雪菜が突然気を失っても慌てなかった。単に影の世界へ魂が飛んだだけだと分かっていたから。
しかもそれを手助けしてのは…。
ならば俺の出来る事を。
ー雪菜視点ー
「分かったのよ。
精霊樹が元気のない理由。
根腐れとかじゃない!!本当の理由。
それはね。
精霊樹の大きさにあるわ。
あまりの巨大さは、大きな影を生んで。
それは、やがて砂漠化を進めた。
まさに荒野となったの。
その広大な荒野は、やがて精霊樹をかえって蝕んだのよ…」
あの時理解した事を勢い込んで喋る。
ね?
影は、光があってこそ。
その光が、自分の影で差さない。
その上、生き物の居場所が砂漠化する矛盾。
「雪菜。
では、どうすれば良いと思う?
精霊樹の枝を切り落とすのか?」
茫然とする2人とは違って、ゲルガーが冷静に私に問いかけた。
知ってたのね…。
そう。
恐らく妖精や精霊は、分かっていた。
でも、この世界の中心的な存在の精霊樹を切る。
それが出来ないから…精霊樹は自らを閉じる事にした。
そう言う事ね…。
「でも!!
それは納得出来ない。
精霊樹は、確かに村を潰して人々の田畑を潰した。
アレは人間に対する怒りだと我々は…」
アーノルドが突然大声を上げた。
あー。びっくりした…。
そうよね。
確かに『大森林』とルスタ国の対立もあったし…。
ん?
靄鬼…。
アレは何処から…何故急に現れたの?
『雪菜。
覚えておくんだよ。
森はね。いや、自然というのはバランスで出来上がっているんだ。
この世界に無用な存在は無い。
だが、それでも自然が壊れる時がある。
バランスが崩れた時だ。
その時、お前に教えた力を使いなさい…。
それまでは、忘れると良い…………』
頭の中にお婆ちゃんの声がした。
いつもと違う。まるで側にいるかのような声。
バランス…靄鬼…影と光。
「雪菜。
目覚めたのかい?
その力こそが、雪菜がお婆さんから受け継いだ力だよ」
聞こえる…。
アレは、近くの虫たちの声?
それにアレは…鳥たちの声もするし。
そう。
精霊樹はそう言いたかったの。
「ゲルガー!力を貸して。
精霊樹が望んだ事が分かったから!!」
ゲルガーが静かに頷いた。
『世界を統べる精霊樹よ。
闇の中へその身を委ねよ。
今こそ、新たな存在となるべき時!!』
闇は眠りを齎す。
それは、再生を意味する力。
だからこそゲルガーが、精霊樹を新たに生まれ変わらせる。
頼んだわよ!!
私達を闇が包んだ…。
それは、私達とこの世界を包む。
夜が無ければ、朝は来ない。
私は、安心して闇に身を委ねた…。




