キラキラ光る空気の正体は?!
ー雪菜視点ー
困った…。
これでは先に進めない。
不思議な小さな羽のある人達が私の周りを回っているの。
『いい匂いがする〜』『美味しい気がする』
とか、言ってるのだけど。
どうやら、アーノルドやエイダムさん達には見えないらしいの。
いや、そりゃゲルガーには見えてるわよ。
だから、あの態度。
『ウルセェよ。ほら、散れ散れ!!』
喧嘩しないでね。
でも…砂漠の精霊はどこに行ったのかしら?
姿が見えない。
ん?
『雪菜。
不味いぞ、時が狂い出している…』
時?狂い出すとは??
小さな妖精達は相変わらずで全く変化がないけど?
『馬鹿だな。コイツにとって数万年など一瞬よ。それより、アイツだ。生意気なあの砂漠の…』
め、珍しい。ゲルガーの絶句??
強気に変わってから見た事ない姿に振り返れば…。
そこに立っていたのは、小さな虫?!
羽の生えたカナブンみたいな…。
『嘘のようだ。
昔の姿に戻れるなんて…』
聞いた事のある声よね?
もしかして…砂漠の精霊なの??
私の問いかけを無視したカナブンは、森の中をジグザグに進んでるわ。
「雪菜。我々には、何も見えません。
単なる真っ直ぐな道に思えるのですが危険はありますか?」
アーノルドの問いかけにゲルガーが急に怒気を強めた。
『馬鹿やろう!!
これだから、人間は…、
これこそ、本来の世界の姿なんだ。
太古の昔のこの世界は、妖精や精霊がのどかに生きる世だ。
人間などに悪さをするなど…ん?』
『怒鳴らないで!!
人間は良い人ばかりで可愛いわ。
一生懸命生きてる姿が好き。
私達みたいに気を吸収出来ないから、頑張るのよ。貴方誰?
こんなに怒る精霊知らないわ!!』
腕組みをして私の肩で怒っているのは、ピンクの羽を持つ可愛い妖精。
なんの妖精かしら?
それにしても、さっきまで幾ら話しかけても通じなかったのに。どうして急に?
『おい。ユキナ。本格的に不味いぞ。
さっきから見えてた妖精はこの世界に存在しない影のようなモノだったんだ。
そりゃそうだろ?
太古の昔に存在したモノたちだ。
どうして交わったのか…』
ええーー!
そんなの、太古の昔に私達が来ちゃったって事?!
『この子、ものすご〜くいい匂いよ。
連れて行こうよ。もうすぐ、始まるから!!』
どの妖精の掛け声だったのか分かないけど、その声を合図に一斉に私が引っ張られるし!!
助けを求めて、振り返れば…。
アーノルドもエイダムさんも銅像のように固まってる?!
どうして…
『時の流れの中に人間が入れば、命はない。
だから俺が空間を固めたのだ。
ま、お前は別の存在だから関係ない。だから安心しろ!!』
引き摺られる私に、ゲルガーの声が聞こえるけど、最後なんて言ったの?!
私ってば、どうなるの〜!!
ーアーノルド視点ー
もはや、何も追いつかない。
考えも、認識も…為すべき事も思いつかないまま雪菜の近くへ向かうとするも。
なんだろう…
空気に押し返されるような不思議な感覚は?
「アーノルド殿。
私の目の錯覚でしょうか?
何故か、空気がキラキラして見えるのですが…」
エイダム殿の言葉にハッとする。
キラキラする空間とは…太古の昔の妖精では?
我が精霊強国に残る文献にそう記されている。
ま、門外不出だがな。
この場所は、もしや太古の…
『人間の癖になかなか鋭いな。
だが、ここからはお前たちの出番ではない。そのまま眠るが良い…』
あの声は…、
ぼんやりする感覚に叱咤するも、遠くなる意識は全く言う事を聞かず…。
雪菜…ど……の。
振り絞る気力の切れる寸前にみたのは、羽の生えた雪菜殿だった気がするが…




