アーノルドの覚悟!!
ー雪菜視点ー
石畳の道は、やがて見た事もない大きな丸い石により行き止まりとなる。
そう。
巨大な石は、まん丸で高さは5m以上はあるかしら?
昔の人達は、こんな巨大な石を何の目的で作ったのかしら?
そんな事を考えていた私は、ふと二人を振り向いで驚いたわ。
驚愕の表情だったから。
何故?
行き止まりだから?
「雪菜。こんな物体は今も我々では作れない。と、なればこの場所で生活していたのは人間ではない。そう、精霊か妖精か。
とにかく、我々でない生き物の住処だと思う。
そして、恐らくコレは門。
前に進むには、鍵のようなモノがいるかもな…」
時折、アーノルドの知識と観察の鋭さを舌を巻く。この一緒で、この解析。
でも、砂漠の精霊はこの先に精霊樹があると言うし。
どうしよう…。
「雪菜殿!ここを見てください。何か見た事のない文字が書かれております」
大きな岩を見つめていたエイダムさんの言葉に近寄れば…。
え?
まさかの日本語?!
「雪中送炭」
。。。
ごめんなさい、読めないわ。
えーと。
雪の中に炭を送れって事?!
うーん。
こんな場所に雪とか無いし。
炭も持ってないし。
「雪菜。もしかして読めるのですか?」
アーノルドの問いかけに私が分かる範囲を伝えると、二人が暫く黙った。
「もしかして、困ってる時には助けようと言う意味では?」
なるほど!!
そうね。
と、なると困ってるのは…誰?
私達が困ってるけど、何か助けになる事があるのかしら?
「雪菜殿。この石は本来の場所に居ないのかもしれません。
その証拠に、左右の樹々に負担が掛かり枯れかけております」
エイダムさんの言葉にハッとした。
左右には、見事な大木がある。
それこそ、屋久杉すらビックリする程の見た事もない大木。
でも、枝の先には枯れている場所が多い。
これは…私でも力になれるかも…。
樹木医では無いけど…お婆ちゃんがしてた事。
それをやってみれば…。
まずは、樹の観察から。
木の根っこは、長く伸びているからその周辺と。枝の伸び方・葉の状態確認。
ウロの中も…。
「雪菜、突然どうしたのですか?」
アーノルドの問いかけに私が事情説明しながらも観察を続ける。
ん?
二人も観察をしてくれてるの??
「確かに無理が掛かってるけど、樹の真を脅かすモノでも無いわね。
助けを求めるのは、別の物体かしら?」
周辺を隈なく探索してくれていたエイダムが声を上げた!
「雪菜殿!この辺りを見てください」
指し示す先には、根っこなのにウロのある不思議な場所があった。
ウロの中に指をそっと入れるとボロって崩れたわ。
不味いわね。
ウロの中が、樹液を出さず腐り始めてるのかも。
助けるにも、この岩を退ける力なんて無いし。
アーノルドのどうですか?と言う問いかけに現状を話して困ってる事を伝えたわ。
「樹に生命力を注げれば、根っこの力で岩を動かす事もあるのよ。
それほど、樹は強いの。樹は生命の源。
それはこの世界でも、一緒だと思うんたけど」
私のセリフにアーノルドが顔を上げて話を見た。
何?
すっごい明るい顔になったけど…。
「雪菜。私には秘密の力があります。
もしかして、ここで使えば樹を元気にして岩を動かせるかもしれません」
え?
秘密の力?!
凄い!!
そんな力を持ってたなんて。
ワクワクする私を他所に、アーノルドはエイダムさんに耳打ちしてたわ。
男の話ってやつね。
私がワクワクしているとアーノルドが指の先に光を灯し出した。
光は手のひら全体を包み、そのまま彼は樹に光を当てて「伝われ!!我が命の光!!!」
と、叫んだ。
??
命の光???
ピカッ!!!!!
疑問を持つ間もなく、アーノルドから眩しい光が溢れ出し目も開けていられなくなった。
そして…彼はその場に倒れていた。
私は、暫し固まったのち、慌てて駆け寄る。
「アーノルド!!!!!!」
必死の叫びもアーノルドには届かない。
アーノルド!
アーノルド!!!
そんな…。
もしかしてあの光は、彼の命そのもの??
ショックを受けてる私の身体を抱き抱えてエイダムさんが飛び退く。
ゴロ。
ゴロゴロゴロ…。
岩は動き出したわ。
私の狙い通りに、更に進化を遂げた樹の力に押されて。
転がった先には、石畳の道が遥か遠くまで見えていた。
でも。
そんの関係ない!!!
アーノルド!!!!
アーノルドの側に座り込んだ私は必死に人工呼吸を施す。
心臓のマッサージをエイダムさんに頼んで。。。
アーノルド!!!
心の中で呼び続けながら…。
ーアーノルド視点ー
もしや…。
目の前の状態を動かせるかもしれない。
そんな直感が走った。
俺の秘密の力。
光の刃。
刃でなく、エネルギーとして樹に渡せるかもしれない。
初めて懐く力への期待感に高揚するも。
雪菜を一人きりに…、
!!!
エイダム殿!!
「秘密の力を使えば私も力尽きます。後を頼めますか?」
耳打ちした俺の言葉に…。
力強く頷く顔色は、若干青ざめていた。
光を指の先に集めながらも、この力を破壊でなく創造の力として使える事を感謝した。
だが。
雪菜…。
君をずっと守りたかった…。
次話に続きがあります。
雪菜の底力を信じてお待ち下さい。
アーノルドの覚悟に応えます。




