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森に囲まれた!  作者: ちかず
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拓かれた道は?!


ー雪菜視点ー


若葉が光って見える。

森の中は、伸び盛りの樹々のエネルギーに満ち溢れていた。


先頭を進む砂漠の精霊の身体からは、歩くたびに砂が流れ出していた。


大丈夫かしら?


私の心配を余所に迷いなくかなりのハイペースで進んでいる砂漠の精霊。

そして、後尾にはゲルガーもついて来た。


暫く歩くと、影が濃くなり出した。

真昼間なの?


そう、思ったが違ったみたい。


樹々の造る影が、ゆらゆらとして我々に手を伸ばして来る。


何か嫌な気持ちがして避けていたら…。


『ククク。

さすがは奴に選ばれただけはあるな。

ソイツに触れたら、木の中に取り込まれる。

ま、二度と陽の目をお目にかかれまい。ほら、言ってる先にお仲間がヤバイぞ?!』


え?

振り返れば、影に腕を掴まれたエイダムさんがもがいているのが見えた!!


「くぅっ!!

不覚を取りました…私の事はお気になさらず先へお進み下さい…」


途切れ途切れの言葉に力を振り絞っているのが理解できた。

でも、それ以上に怒りが沸いてきて。


「馬鹿!!

諦めるのは、最後よ!!!

ほら、私の手を掴んで!!!」


私が伸ばした手は、彼にちゃんと届く距離なのに…なんで掴まないの!!


「雪菜。掴めば我々も同じ定めです。

ここは、彼の誠意を汲んで…」

「馬鹿ーーー!!!!」


アーノルドの言葉を遮って、私は無理矢理手を掴んで思いっきり引っ張った。


びくともしない?!


諦めるもんか!!


それでも必死にひたすら引っ張る。


エイダムさんの「おやめ下さい。」「アーノルド殿、お止め下さい!!」と言う戯言なんて聞こえないから!!


びくともしない処か、少しずつ引き寄せられる。


どうすれば…。


自分の持ち物の中に何か手はないかと必死に頭を巡らす。


アレ?


急に手が軽く感じる。


アーノルド…。


「私は雪菜が居てこそ、今の生があります。

貴方の諦めの悪さに一緒に掛けてみる事にします!!

ほら、持ち物を探るのなら手を離して。

私が今度は踏ん張ります!!」


アーノルドの久しぶりの晴れ晴れとした笑顔に感謝しつつ少し手を離してポケットに手を入れた…あ!!!!



木が!!

物凄い勢いで二人を飲み込もうと…エイダムさんはもう身体半分持ってかれている?!


どうしよう…。


「迷わないで!!

やれる事をするんでしょ!!

貴方がやらずにどうするんです!!」


アーノルドも右腕が飲まれて苦しそうに脂汗を流している。

それでも、何時もより大きな力強い声で叱咤してくれた。


パンパン!!

顔を叩くと、必死に探る。


とにかく、何でも木に放ってみる事にする。


飴。

干し柿。

それに、お握り。


んん??

あーー。

これってば…もしかすると。。。



ポイっと。



影が急にぐにゃりと溶けたように崩れ落ちた。


効いたのかしら?

唐菓子入りお煎餅。

かなりキツめだから…。



二人は黒い泥の様なものに塗れていた。

私は懐から種を出して二人に掛けた。


ほら、あの種。

『水守り草』


パカっと割ると中から、溢れ出る水、水、水!!!!


あれ?

少し多すぎかな?


ゴホッ、ゴホッ!!!

うーん。

もしかして…二人とも溺れてる?!


真っ赤な顔から、真っ青になった二人が這いつくばって水の中から出てきた。


あぁ、良かった。

もしかして、助けようとして溺れちゃったかと思ったわ。


「ありがとうございます。雪菜殿。

これで命を助けて戴くのは二度目です。

返しきれない恩を受けましたな。私は…」


伏せたままで表情はわからないけど、エイダムさんは少し元気がない。


「雪菜の強さを改めて見せて貰いました。

ありがとうございます」

アーノルドってば、会心の笑み。


やめてよ…。

ちょっと顔が赤らむじゃない。

イケメンの免疫とか無いのに、これってばキツイわ…ん?


砂漠の精霊がニヤついてるわ。

なんだろう??



『ほう、やるじゃん。

もし、その種の水を掛けなきゃ例え救い出しても無駄だったんだけどな。


でも、どうするの?

精霊樹に掛ける水じゃなかったの?』


ええー!!!

種持ってて良かったわ。


二人を助けられたもの。

え?

精霊樹の方が重要だろうって?


種は無いけど、3人力よ!!

一人よりずっと、強いもの。


私がそう応えると、エイダムさんが「やっぱり私が足枷に…」とか呟いてる。


もう!!

まだ、分かってない!!!


「あ・の・ね!!

ここからエイダムさんの力が必要なのよ。

知恵って、一人じゃたかが知れてるもの。

この危険な森はから精霊樹の場所へ行くのに全力を尽くしましょう!!」


エイダムさんが俯いていた顔を上げて頷いた。


勢い込んで出発した我々の目の前には、やはり樹々の影が付き纏う。


避けながらの道中は、かなりの神経を使う。

本当に少しずつしか進めない。

その上…。


森の奥深くだと言うのに…。


目の前に、石段が現れたわ。



何故?

こんな場所に??


『雪菜。

時の流れの中に消えたモノたちだ。

昔は、大森林の中には大勢の人間が住んでいたんだよ』


石畳の広場もある。


門のような石も組まれていた。

かなりしっかりしたモノ。

文明は高度なモノの可能性が高い。



必死に進む私は、アーノルドとエイダムさんの会話は聞こえてなかった。


「後ろを見てくれ。通り過ぎた後の石段は時が一気に流れたようだな…」

「なるほど。

後方の様子は、エイダム殿にこのままお願いしたい。私はこのまま雪菜を守る…」

「了解した。万全を尽くそう」


古びてゆく石畳を警戒するエイダムと雪菜の周りを見張るアーノルド。


二人の細心の注意に笑う者が一人。



『本気になった人間の怖さを砂漠のは知ってるかな?

まあそのうちに、奴らを本気にしたのは失策だと気づくだろうが…』


最後尾のゲルガーの呟きを聞く者は誰もがいない…。

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