小さいドア?!
『大森林』の精霊は予感していた。
『オゼルの大刀』は、この世界を壊す可能性を…。
だからこそ、かの刀は己で主人を選んできた。長く、長く。
サイラスの手にかの刀が渡った時も、刀の目利きに精霊たちは納得していた。
しかし。
予想外の事態となる。
彼女がそして仲間たちが努力して溜めてきたエネルギーを使う以外無い。
あらん限りの力で、森を閉じた…。
最後の希望を人間たちに委ねながら。
ー雪菜視点ー
「で!!
どうするの?何をすれば良いの?」
私は危機感でいっぱいになる。
だって…。
図書館への道も塞がれた。
他の場所へ逃れる術も無い。
出口は無いが、此処で生き延びる事は出来る。
そんな説明…。
絶対受け入れられない!!
そんな私たちとは違って、閉じ込められたに近い避難場所でのんびりしているは…
ゲルガーのみで。
アーノルドやエイダムさんは、ブルーレルと話し合いをしている。
結論は…無理をせず、静観して様子を見ようとの意見みたい。
そんなの…ダメ。
理由は幾つもあるわ。
繭に閉じ篭っている碧とか…。
心配している皆んなの事も。
でも、本当馬単なる予感。
胸の奥がざわめくの。
呼ばれている。ううん、違うわね。
待っている。
そんな感じがするわ。
私がそんな事を考えていたら、ゲルガーと目が合った。
自信に満ちた今のゲルガーが、一瞬…
昔のゲルガーに見えたわ。
やっぱり、急がなきゃ。
確信に似た感情に、焦る私が身体中を探ってみた。
もしかして、何か役に立つモノとか持ってるカモと。
ハンカチ。
あ、コレはお腹空いた時の飴たち…。
それと、コレもお腹空いた時の干し柿もどき。
まだ、あるわ!!
。。食べ物だけ??
全てのポケットから飛び出すのは、オヤツ…のみで…。
ち、違うわよ!!
決して、意地汚い大食いとかじゃないから!!
ほら、OL時代の名残よ。
残業時の必須アイテムだったから。
。。、?
あら?
コレ何かしら?
木の板?
。。。
違うわ。
小さいけれど、たぶん『木のドア』かな?
んん?
『小さいドア』と書いてあるわ。
そうか!!
あの時、精霊に貰った奴かも。
コレならもしかして…。
「ブルーレル。
脱出方法が見つかったわ!!
コレなら脱出可能じゃない?!」
ブルーレルにそのドアを差し出し瞬間!!
目の前の景色が消えた。
また?
まさかの転移?!
しかも、今度は私一人??
薄ぼんやりと灯りのある場所と言う以外、周りを確認も出来ない程の暗さ。
足下の凸凹が不安定さを与えて、一歩も動けない。
どうすりゃ良いの??
精霊ってば、単なるOLの私に期待が大きすぎない?
不安に苛まれながらも、必死に目を凝らす。
少しでも、目が慣れて見えてこないかな?と。
無理。
無理でした…。
迷子は動かないが原則よね。
じゃ、取り敢えずココにいるしか…?
『ゆきなーー!!
あ、やっと聞こえた。
大丈夫だよ。僕が道案内をするから!!』
ぼっ。
そんな音がするように、浮かびあがったのは私の肩。
えーーー!!
肩が燃えた?!
ん?
もしかして、碧の羽化なの??
目を凝らした私に見えてきたのは、肩に止まった一羽の蝶。
金色に光る…まさに眩しい光の粉を撒き散らしながら止まる蝶。
『雪菜。僕の後に続いてね』
金色の蝶になった碧の飛び立った先には…。
。。。
私は覚悟を決めて一歩を踏み出した。




