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森に囲まれた!  作者: ちかず
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一人だけ…。


ーある男の視点ー


「で、どうしたんだ!!」


計画は入念に練った。


ベラの図書館への道。

それは、あの『大森林』へ入る事と同義語。


それこそ、最大の障害だ。


そこへあの情報だ。


『オゼルの大刀』が本人の手を離れた。


何と言う幸運が舞い込んだのだ。

しかも、だ!!


あの鍛冶屋のバンブルのオヤジが持っていたとは…。


目的の為には一石二鳥だ。


あの大刀は、魔刀。

良くも悪くも、破壊的な力を出す。


しかし。

コレはどうした?!


『大森林』が閉じた…とは?


森は、暗く触れる事すら出来ぬ何かに覆われていた。


何度魔刀を振るってみても、ガチッ!!!

と、刀のダメージが溜まるのみ。


それどころか、側にいる者達が順々に倒れてゆく有様。


撤退か…。


幾つもの魔石を犠牲にして、その場から離脱するも、去り際に振り返った。


アレは…。



見間違えだろうか?


真っ暗闇に見える森の奥にキラッと何か光った気がしたが。

気のせいだな…。


オゼルの大刀から寄せてくる恐ろしい程の拒絶の力に、身体中がバラバラになる痛みに耐えたままアジトへと飛んだ。




ーバズール視点ー


床に何度拳を叩きつけても、気など晴れない。晴れるわけもない…。


雪菜殿…。



予測不能の事態など幾度も体験した。

敵に囲まれ倒れた部下を庇いながら、退路を切り拓いたあの日。

たった二人で陛下を逃し囮となった日。


もう、これまでか!!

と、幾度思っただろう。

その時より、激しい絶望感が胸を覆う。


俺が付いていながら…。

いや、俺が一刻も離れる事をしなければ。


跪いたまま、項垂れていた俺に陛下のお言葉が下る。

どんな裁可も受け入れるつもりだ。


信頼を裏切ったのだから。


「バズール。

そんなに思い詰めるな。

雪菜殿だ。我々の意図などあっさり超えて行かれる。

今回も恐らく彼女が飛んだのだ。


まぁ、エイダムが一緒なのが少し気掛かりだが。それも、彼女であれば…な。 

アレが変わったのは、噂で聞いていた。

奴が本物ならば、命懸けで彼女を守るだろう」


陛下の有り難いお言葉に顔を上げれば。

暖かいお言葉とは裏腹に、窶れた表情からは心配の深さが伝わって来る。


彼女が行方不明だった月日の心配が再び、蘇っているのかもしれない。


雪菜殿…。


どうぞご無事でと思っていた、その時だった。


『ギャビン!!』


雪菜殿のお声に思わず見上げてあんぐりとなる。


何も無い空中に浮かぶ雪菜殿とその背景。


コレは…いったい。



必死な陛下とは別に、俺はこの事態を探ってみるも、魔法の痕跡は無い。


は!!


短い時間で、雪菜殿は消えた。


騒然となる俺に、少し元気が戻った陛下が鋭く命令を下す。


「よいか!!

敵は恐らく既に国外にいる。

目的地の『大森林』が閉じた経緯と状況の把握も含め命を下す。


警護団 隊長バズール。

魔力の強い部下数名を選んで、現地へ飛べ。

状況把握こそが、命令だ。

決して、無理をするな。


精霊すらも受け付けない今の『大森林』に叶う者などいない。

いや、一人だけいるか…。」


「承りました!!」


俺は立ち上がり急ぎ団へと戻る。

道すがら、最後に小さな声で呟いた陛下の言葉を思い返す。


一人だけ…。


希望の光を取り戻す。

いや、駆けつけるが、正しいか。


持てる力の全てを持って任務をあたると自らに誓いながら廊下を駆け足で駆け抜けた。


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